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第47話 このままだと負ける

「アリシア、そっちよろしく」


「はい、わかりました!」


「コロ、エレオノは向こうの一団お願い」


「了解」


「分かったかな!」


「アクア行くよ」


「ゴブ!」


 現在、私達はスケルトン祭り決勝戦の真っ最中である。


 なんと言うか……決勝戦だけあって派手なのは良いんだけど、作戦も何も無い位大量のスケルトンが出て来てるんですけど!? これで良いのか決勝戦! ちゃんとやれよ運営。


 〈派手なら良いんじゃないですか?〉


 え〜、そうですかね? 大会ならもっとドキハラ感が欲しいところでは?


「はぁ、はぁ、今……どんな感じ? ハクア」


「分かんない」


「だよね~」


「二人共、今は大体開始から二時間位経ちましたよ」


 あっ、そんなに経ってるんだ。


「スコアはボク達のパーティーが二位だけど、差はそんなに開いてないかな」


「良くわかるね?」


 把握してるとか凄いわー。


「ほんと、ほんと」


「「はぁ~」」


 私とエレオノの言葉にアリシアとコロが揃ってため息をつく。


 あれ? もしかしなくても呆れてますか?


「ご主人様、エレオノ上見て下さい」


「「うえ?」」


 アリシアの言葉の通り二人揃って上を見上げる。


 すると、何やら上の方に文字と数字らしき物が見える。


「何あれ?」


「……それぞれのパーティー名とスコアです」


「おぉ、そんな物が!?」


「開会式の時ちゃんと言ってたかな」


「開会式の挨拶とかって眠くなるよねー」


「あっ、わかる!」


 私の言葉にエレオノは揃って頷いてくれる。


「だよね~」


「ね~」


「二人共?」


「「ごめんなさい」」


 うん、聞いてなかった私達が悪いよね。


 〈マスター、次が出ました〉


「OK、皆散るよ」


「「「了解」」」


 ポップする場所が複数ある為それぞれで各個撃破に向かい、私は少し遠くにポップしたスケルトンに突撃する。


 私が目標にしたスケルトンは流石に距離があった為こちらに気が付き、本能に従い私に襲い掛かってくる。


 それを待ち構え剣による上段の斬撃をコロに貰った骸で受けると、派手な音を立てるがノーダメージで受け止める事に成功する。


 いやぁ~、これほんと凄いな。正にコロ様様って感じだね!


 コロ曰く、貰った装備の特殊効果が無い物は魔力を流すと一時的に防御力が上がるらしい。


 装備の付加能力って本当に便利だよね。


 スケルトンは斬撃を受けられた段階でそのまま蹴りを放つ。


 骨の癖に俊敏な奴め!


 私はそれを躱し蹴り上げて来た足を下から押し上げるようにハネ上げる。


 すると足をハネ上げられ、バランスを崩したスケルトンは想定通り仰向けで倒れ込んだ。


 私はその隙に【跳躍】スキル全開で跳び、スケルトンの頭蓋骨目掛け、真上から体重を掛けながら思いきり拳を降り下ろし叩き割る。


 私の攻撃でスケルトンの頭蓋骨が見事に砕けたのは良いが……。


 音がエグい、その上なんか後味悪い。人の形に似てる分、抵抗みたいのあるのかな? ……まぁいいか、ヘルさん向こうはどう?


 〈まだ、動いていません〉


 やっぱりかぁ。


 そう、祭りが始まり二時間程経っているにも関わらず、三位だったパーティーは未だにスタート地点から動いていない。


 しかも絶対見られてるよね。


 この決勝戦が始まってからというもの、私はずっと三位パーティーの三人組から見られている。と、思う。


 露骨に視線は感じるものの、確たる証拠は無いから質が悪い。


 でも、元半引きこもり&コミュ症の被害妄想持ちをなめるなよ! 他人からの視線には敏感なんだい!


 〈彼らの目的はなんでしょうか?〉


 まだ分からないけど警戒はしておきたいからよろしく。


 まあその為に私、魔法はあんまり使わずに取ってあるんだけどね。──最悪の場合も想定して……ね。


 〈了解しました。マスター〉


 さて、とりあえず動かない奴らを気にしていてもしょうがない!


 それよりも──。


「ハクア」


「どうしたのエレオノ?」


「あ、えと、このままで平気かなって」


 なるほど、差が少しずつ開いてるから心配になったのか。


「このままだと負ける」


「えっ?」


「元々の地力は向こうが上だからね」


「そっ、それじゃ──」


「大事なのは終盤だよ」


 エレオノの不安の声を遮るように言葉を被せる。


「今私達に出来るのは、終盤の封印が強まってモンスターが少なくなるまでの間、それまで引き離されない事だよ」


「……うん、分かった! ハクアを信じる」


 〈良い子ですね〉


 だね。だからこそ、勝たせてあげたいんだよね。


 〈同感です〉


 ヘルさんからの同意を得て私はまた集中する。


 なんとしても、終盤までにタイミングを見切ってやる!


 〈マスター、強化個体です〉


 ヘルさんに言われ私は駆け出す。


 因みに強化個体とは、モンスターのポップエリアを限定した事で一体のモンスターに力が集中して、レベルが上がった個体の事である。


 あれか! うわ、明らかに強そう。


【鑑定士】スキル成功

 ジェネラルスカル

 レベル:6

 HP:500/500

 MP:150/150

 物攻:280

 物防:180

 魔攻:90

 魔防:110

 敏捷:100

 知恵:45

 器用:80

 運 :5

 スキル:【斬りかかり】【連続切り】【受け流し】【叩き割り】【シールドバッシュ】


 おぅ、強いよ! 普通に私よりステータス上だよ!


「ご主人様!」


「アリシア援護よろしく。皆は、そのままで!」


「「「了解」」」


 クソ、なるべく手の内は明かしたくなかったけど、私じゃこれの相手は素のままじゃキツい!


「ご主人様どうしますか? 余り手の内を晒したくないなら私が主体で行きますか?」


「ダメ、うちで一番ダメージを出せるのはアリシアだ。だからアリシアは今まで通り、1段階目の魔法で援護よろしく。あれは……私がやる」


「わかりました。でも、危なくなったら本気で行きますからね!」


 アリシアのその言葉に思わず苦笑する。


「うん、よろしく」


 さて、どうするかな?


 相手は大きめの剣と盾を持っていて兜と甲冑も着てる。


 ジェネラルなんていうだけあって流石に良い装備着ているようだ。


 私は相手を観察しながら間合いを詰めていき、ジェネラルの間合いの中へと入る。


 ヒュバッ! そんな音を立てながらいきなり剣による一閃をなんとか避け、後ろに下がる。


 ──だが、ギリギリで躱した一閃はそれでも胸の辺りを薄く斬裂き血液が飛び散る。


「ご主人様大丈夫ですか!」


 私はアリシアに一瞬目配せをし、視線を戻す。


 くっ、剣速は今まで会った中で一番速いな。


 ジェネラルは後ろに下がる私を逃すまいと、そのままの勢いで前に出る。


 だが、そんなジェネラルの行動を遮るように、アリシアのアースクエイクが私達の間に土の壁を築き上げる。


 よし、これで体勢を立て直せる。


「なっ!?」


 体勢を立て直せると思った瞬間、ジェネラルは【シールドバッシュ】を放ち、私達の間に有った土壁を力業で壊す。


 マジかよ!?


 私はジェネラルの壊した土の塊が運悪く頭に当たり更に体勢を崩してしまう。


「ご主人様!」


 ジェネラルはそのまま水平に斬撃を放つ──だが、私は重力に逆らわず背中から倒れ込む事で、斬撃をギリギリで躱す。


 そして、そのままの勢いで足を振り上げ後転をして、距離を取ろうとする───が、ジェネラルはそのまま私を追い掛けてくる。


 しかし、それを見た私は即行動を変更し今度は距離を取らず足の裏で、ウインドブラストを放ち高速移動する技。風縮と名付けたものを発動して、一気にジェネラルとの間合いを詰める。


 流石にこの行動は予想外だったのかジェネラルは対応が遅れ、防御までに一瞬の空白の時間が生まれた。


「暁、宵闇!」


 叫び、二本の短剣を私の手の中に音も召喚する。


 更に私はその短剣に鎌鼬を纏わせ、ジェネラルの盾を持つ方の肩骨を砕くと、その一撃でジェネラルの肩はガラガラと砕け、盾を持っていた腕が地面に落ちる。


 さて、もう一踏ん張りだね。

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