「ふぅ、良い仕事した」
「言いたい事言って、やりたい事やって帰ってきましたからね」
「でも、女神様も失格にしてくれれば良かったのに!」
「あぁ、ごめん。あれは私が言った」
「そうなの?」
「そうなんですか?」
駄女神の提案が私の要求だと知った二人が不思議そうに聞いてきたので、私は何故あんな形にしたのかをちゃんと説明する。
「うん。景品が景品だからね。後になってケチつけられないようにしたいから、折角エレオノにあげるのに下手したら、全部終わった後に今回は異例続きだったから賞品は渡さないとか、後から返せとか言われる可能性があるしね」
「確かに、そうやって賞品を取り上げることも可能ですね」
「ハクア……ありがと!」
うむ。この笑顔が見たかった。尊みが凄いよ。
「でも勝機はあるんですか?」
「まぁ、今日と同じ作戦でも勝てる筈だけど……やるならより確実に……ね」
「なんか凄く悪い顔してる!?」
「何か作戦があるんですか?」
「一応考えはあるよ」
「それなら安心です!」
「アリシア作戦くらい聞かないの?」
「えっ? 何を言っているんですかエレオノ。ご主人様が考えた事なら大丈夫に決まってるじゃないですか」
「……だってさハクア。責任重大だね? 勿論私も期待してるね」
……信頼が重いの。
「ねぇハクア? ボク少し用事があるから出てきて良いかな?」
「別に良いけどどうしたの?」
「うん、ちょっとね」
そう言って出ていくコロを見送り、私達は明日の為に訓練を始める。
「そう言えばハクアが女神様に攻撃した時の【魔闘技】凄い滑らかに発動してたね」
「あっ、それは私も思いました」
「おねちゃん本気だった」
「あぁ、うん、マジで殺る気だった」
|命(タマ)取れなくて残念ですわー。
「女神様相手に無茶するねハクア」
「いや、全てあのオークが悪い」
そーだよ。あのオークさえ居なければ私が駄女神の名前を知る事は無かったし、あんな勝ち誇った顔される事も無かったんだよね。
あ~くそ、そう思ったらまたムカついてきた!
「それに今回は【鬼気】を発動しても気絶しませんでしたね?」
「少しは慣れたのかな?」
私達はダンジョンに行く前日から【魔闘技】の熟練度を上げるため、なるべく人の目が無い所では【魔闘技】を発動し、日常生活を送っている。
しかも私はダンジョンから帰ってからは【鬼気】を数回は発動してこちらも熟練度をあげようとしている。
因みに気絶しなかったのは今回が初めてだ。
私もそろそろ武技の一つも覚えたいけど、その兆しはまだ無い。
「ふぅ、ようやくただ発動して維持するだけなら三十分持つようになりましたね」
「これって結構凄いよね!」
「出来れば三時間位は楽に維持出来るようになりたいね」
転生前に読んだなんかの漫画で、こういうの戦闘中に維持出来るのは三分の一以下だって見たからね!
漫画の知識とはいえ実際やってみた結果、本当にそれくらいかそれよりももっと少なそうだしね。
「う~ん、じゃあまだまだだね」
「でも今までよりもスムーズに発動して、長く維持出来るようにはなったと思うよ」
「本当に?」
私が首肯くとエレオノ達は皆でハイタッチを交わし喜んでいる。
うん、はしゃぐ美少女達……良いね!
その後、私達は軽い連携の確認と組み手等をしてから就寝した。
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「皆おはようかな」
翌朝目覚めると既にコロが食事の用意をして待っていた。
「おはよコロ」
「おはようございますコロ」
「おふぁよ~」
「おは」
「あはは、皆おはよう! ご飯出来てるから食べようよ。今日は負けられないしね」
「うん、そうだよね! お母さんの剣を手に入れないと」
「うん、頑張ろう」
「それじゃ」
「「「いただきます」」」
私達はコロの作ってくれた朝食を食べ始め、話題はおのずと今日の祭りの話となる。
「えっと、確か開始時間は十一時からなんだよね?」
「えぇ、その筈ですよ?」
「なんでそんな時間?」
「最終日ともなると封印の力が大分元に戻っているから、朝早くはスケルトンも出てこないから、その時間から参加者を集めてルール説明して、十二時から十九時までの封印が完全に復活するまでの間スコアを競うかな」
「へ~」
うーむ。この段階で未だにルール知らんかった。しかしそうかぁ、祭りも後半になると重役出勤かガイコツ共。
「皆もご飯食べ終わったみたいかな」
「うん、美味しかったよコロ」
「ごちそうさまでした」
「ごちそーさま」
「ごちゴブ」
「うん、喜んで貰って良かった。それで皆に渡したい物があるんだけど良いかな」
「渡したい物?」
コロの言葉に首を傾げながら聞き返すと、コロは何やら大きなリュックを取り出し中を漁り始めた。
「うん、えっとまずはエレオノにこれ」
「これって、バックラー」
「うん。ガシャドクロのドロップアイテムで皆の装備を作ったんだ。エレオノはこの祭りの後には自分の剣が手に入るから、バックラーで名前は
「うわ~、ありがとコロ」
ガシャドクロの赤い骨を削り出した様な赤い盾は、確かに骨とは思えない程硬く、ほとんど重さを感じなかった。
「アリシアと、アクアにはそれぞれ短剣の
「ありがとうございますコロ。大切にしますね」
「コロありがと」
「そして最後にハクアにはこの二つ」
「二つも?」
ふむふむ。結構大きくて重いな。
「わぁ良いな」
「開けて良い?」
「うん、ハクアには二本で一組の短剣
暁は朱雀と同じ効果があり、宵闇は特殊な効果は無いが、魔力を込めると切れ味が上がるらしい。
手甲の骸は【魔拳】を使った戦いに耐えられるように、魔法耐性を付けて防具としても使える位の頑丈さも兼ね備えている。
「それとこの二つには秘密があって、こうやって手甲に短剣を近付けると──」
そう言ってコロが短剣を手甲に近付け、穴のような部分に差し入れると短剣と手甲が合体し一つになった。
フォルムは手甲の手首より少し上の部分の脈を測る部分位に、手の動きが邪魔にならないよう短剣の柄の部分が差し込んだように埋まっている。
「ハクア付けてみて」
私はコロに従い手甲を付ける。驚く事に手甲は心強い程にしっかりしているにもかかわらず、何も付けていないかのように軽く、手首を動かしても全く気にならない。
さっきまで重かったのにどうなってるのこれ?
「その骸には防具と同じように、使用者にぴったりになる魔法が掛かっているから全く気にならない筈だよ。それと、そのまま短剣の名前を呼んで欲しいかな」
「分かった。暁、宵闇」
私がそう言うと手甲が脈打ち、何時の間にか私の手に短剣が二本収まっていた。
「どうなってるの?」
「まず短剣の収納は、元の素材が同じだから魔法の付加で合体出来るように出来たかな。それに短剣の呼び出しは、ギルドのタグに掛かっている念じれば手元に戻って来る魔法の応用かな」
コロナさんマジすげ~。
「ありがとうコロ。大切に使わせてもらう」
「喜んで貰えてボクもうれしいかな」
こうして私達はコロから新しい装備を受取り、集合場所であるギルドへと向かった。