「説明をする。と、言う事は君は知っているという事か?」
と、聞いてくるオークの言葉に私は「まあ……ね」と返す。
「そんなの出鱈目だ! 聞く意味なんて無い!」
「それはこちらで判断する」
おっ、良いこと言ったぞオーク。少しは役立つじゃないか。
「まぁ、言っちゃえば単純な事で、私が組み敷いてるこの男が前衛職じゃなくて後衛職の
「な、出鱈目だ!」
「わざわざこんな偽装までしてるが調べれば直ぐに分かることだよ」
なにせ私も最近教えて貰ったけど、この世界自分のクラスに合わない装備着けると、どんなに良い物でもあんまり効果が無いらしいからね。
例えば戦士がローブ着るとか、魔法使いがフルプレート着けるとか。
「く、こいつが死霊術師だったとしてなんだってんだ!」
「死霊術師はモンスターのスケルトンとかを自分の召喚獣のように呼び出せる。それはなんの死体かは関係なく、呼び出した者はモンスターとして扱われる」
まぁ例えそれを味方が倒しても、経験値にはならないし魔石も手に入らないけど、スケルトンを倒した記録。
つまり祭りにおいてのカウントは残す事が出来る。何せ実際に倒してはいるんだから。
「受付嬢さん? ここ最近コイツらのスケルトンを倒した量と魔石の売却は釣り合ってないんじゃない?」
オークは私の言葉を聞き受付嬢に本当か? と確認を取る。
「た、確かに前回までは魔石を全て買い取っていましたが、今回はスケルトンを倒した数と魔石の売却量が違います」
「今回俺達は魔石を売らずに取ってあるんだ」
「ならそれを見せて貰おうか」
「そんな義務は無い!」
「まぁ見せようが見せまいがどっちでも良いけどね」
「いや、そんな訳には──」
私の言葉に反論しようとしたオークを制して私は話を続ける。
「ねぇ、今回私達の倒したスケルトンの強さは大体平均だよね?」
祭りの終盤になると数が少なくなる代わりに、序盤のようにレベルの低いスケルトンは出なくなってくらしいからね。
「え、ええ、そうですね」
「ならこの結果はおかしいよね?」
そう言いながら現在の祭りのスコアを見せる。
私達が倒したスケルトンは大体平均的なレベルでその数五十五体、そしてこいつらが倒したスケルトンは八十体。
「これだけ離れてるのになんでスコアは離されるどころか、寧ろ差が縮まっているのかな? 偶然八十体全部が平均よりレベルが低いって事は無いよな?」
これはおかしな事だ。
スケルトン祭りのポイントは倒した数の他にもスケルトンの強さもポイントとして付くんだからね。
「うっ、それは……」
う~ん、この世界の人間嘘つくの下手くそ過ぎない?
「なんなら女神に確認でも取ってみるか? 女神なら私が言った方法をあんた達がやったかわかるでしょ」
『女神様:貴女はこういう時だけ人を利用しようとして、はぁ、まぁ私もこういう反則技は面白味に欠けるから良いですけど……』
なんだかんだ本当に良い性格だよね。
「ふ、ふん! 出来るもんならやってみやがれ!」
だってさ。
『女神様:仕方無いですね。では……』
駄女神がそう言うとゼーゲンの腕輪が輝き、光の中から見覚えのある人影が出てくる。するとこの場に居る全員が駄女神の姿を見ると共にいきなりひれ伏し始める。
なん……だと……!? まさかこんな駄女神に皆ひれ伏すだなんて……てっきり勿体ぶって出てきた挙げ句、なんだこいつかよ! みたいな空気になると思ったのに!?
『相変わらず失礼ですね』
あっ、こっちでも聞こえるんだ?
『はぁ、とりあえず良いでしょう。ここに居る皆さん。この者の言っている事は全て事実です』
「シルフィン様! 何故あなた様が!」
ん? いや、ちょっと待って。今このオーク何言いやがった!
「あぁ~!!」
「な、なんだ!? 急にどうしたんだ!?」
「この、クソオーク!」
私が叫んだ瞬間、駄女神が口を歪めニヤリと嗤う。
この野郎。わざわざ出張って来た理由はこれが狙いだったのか! 遂に……遂に名前明かしやがった!?
『コホンッ! 改めまして。私の名前はシルフィンです。今後ともよろしくハ・ク・ア♪』
私の思考を読んだように改めて自己紹介する駄女神。
しかも、スッゴい勝ち誇った顔で言い放ちやがった。
『ふっ、読みきれなかった貴女が悪いんですよ』
その言葉を聞いた瞬間、私の中でブチッと、音が鳴った気がした。
そして体は自動的に動き始め【魔闘技】を発動すると、同時に【鬼気】も発動し【疫崩拳】を全力でぶちこむ。
しかしその攻撃は駄女神の体に触れる前に見えない壁に阻まれる。
クソ、触れる事すら出来ないだと!? なんだこのバリアみたいの!
『ふふ、最初から持てる手札を全て使い、全力で攻撃してきたのは褒めてあげます。──が、私に触れたいならせめて実力を高め、冒険者のランクがもっと上がるくらい努力するんですね』
クソ、これが今の力の差か!
「って、どこのバトル漫画だよ!」
『良いツッコミです』
駄女神はこちらに向けて親指を立てながら言う。
クソ、主導権握られた感が凄い。そして腹立つ!
「君! 創世の女神シルフィン様になんて事を!」
こらオーク、何また要らん情報増やしてくれてんの!?
『良いのです。彼女は私の使徒なのですから』
「え〜。初耳なんですけど……」
『シルフィン:少しは話を合わせなさい』
まぁ確かに、その方が丸く収まる……のか?
『シルフィン:そうでしょ』
だが断る!
『シルフィン:なんと!?』
でも条件付きなら良いよ。
『シルフィン:はぁ、どの口が言うんですか? で、なんです。その条件というのは?』
それは──。
『シルフィン:貴女はそれで良いのですか?』
ま~、このまま行っても禍根が残りそうだしね? それにやましい部分を残すのは後々面倒だ。
『シルフィン:なるほど。そこが狙いですか』
「あのシルフィン様。彼女が使徒というのは?」
『そんな事より、彼らがこの祭りの意味を履き違え、不正に手を染めた事は事実です。が、それで失格にしては他の神々も納得しないでしょう』
『ティリス:ハクアさんに汚い手を使って勝とうとするなんて有罪確定ですよ?』
『シルフィン:少し黙ってなさい!』
『ほぼ全員:私達もほぼほぼ同意見なんだけど?』
『シルフィン:良いから黙ってなさい!』
女神からの好感度が凄いな私!?
『ですので、明日の最終日の決勝戦は上位三組のスコアを全て0とし、明日一日の成果で勝敗を決めなさい。双方良いですね?』
「……分かりました」
「私も構わない」
『シルフィン:まぁ自分で出した条件ですものね』
うるさい駄女神!
「分かりました。残りの一組には私の方から伝えておきます」
『頼みましたよ。では皆、明日の祭りを楽しみ全力で当たりなさい』
「「「はい」」」
皆素直だな。
『シルフィン:貴女もこれくらい素直なら可愛げあるものを……』
ははっ、無理。
それだけ言って駄女神ことシルフィンは去って行った。
「君達、詳しく話を聞きたいんだが」
と、私に言うオークだが「話す気無い。疲れた帰る」と言って、私はオークの話に取り合わずその場を後にした。