「う~ん。なんか久しぶりに外に出た気がする」
「ハクアったら大袈裟だな~。たった一日しか潜ってなかったのに」
「そんなもん? なんか三話振り位かと……」
「なんですかその例え?」
はて?
「まぁいいか」
「えっと、これからどうするの?」
「とりあえずギルドに報告……かな?」
「でもさハクア。私達結局目的地までは行ってないけど良いのかな?」
「それは大丈夫かな。ボクが依頼を変更したんだし、その事を話せばクエストクリアにちゃんとなるよ」
「そっか。じゃあ次はギルドだね」
「そうだね。それから工房に行こうか」
私達はダンジョンから出た後そんな会話をしながらギルドに向かう。
「いやぁ、それにしても本当に凄いねスケルトン祭り。皆盛り上がってるし、私達もこの依頼終わったら参戦しよっか?」
「私は構いませんよ? レベルが上がればご主人様の役に立てますし」
「ブレないねアリシア」
「エレオノ……これは当たり前の事ですよ?」
アリシアさん笑顔怖いですよ?
「まぁいいか。じゃあ目指すは優勝! みたいな?」
なぬ!?
「待った! あの祭りに優勝なんて在るの?」
どうやって勝敗付けんのさ? 皆で参加して楽しもう的な祭りじゃねぇの?
「あれ? ハクア知らなかったのかな」
「スケルトン祭りでは、アンデット系モンスターのスケルトン達を撃破して、そのスコアを競ってパーティー毎に戦うんですよ」
「そうそう。それに優勝すれば凄く良い装備が貰えるみたいよ」
「何が貰えるかは分からないの?」
「それは毎年違うんだよ。最高の職人が作った武器だったり、伝説の勇者が使っていた装備のレプリカだったりって」
「へ~」
レプリカはしょぼくないか? いや、そのレベルのレプリカならそれでも良い物なのか。
「確か今年は片手剣が景品だった筈かな? ボクは興味無かったからあまり聞いてないけれど、なんでも伝説上の人が使っていた物だとか」
「何それ凄い欲しい! ね? ハクアお願い! ダメ元で参加しよ?」
「別に良いよエレオノがそこまで頼むならね」
「ハクアありがと!」
「良かったですね。エレオノ」
「よ~し! 皆で頑張ろう」
ニシシッ! と嬉しそうに八重歯を見せて笑うエレオノに、私も少し本気出して頑張ってみるかと思わなくもない。
「あの、ボクもそれ手伝っても良いかな?」
「大丈夫なんですか?」
「うん、参戦は武器を作ってからだけど、それでも良いなら皆と参加したいかな」
「こっちは歓迎」
「ありがとうかな」
「こっちこそだよ。ありがとコロ」
そんな話をしているとギルドの前にコロ父を見付ける。
「なんだお前達、もう帰ってきたのか?」
「お父さん! どうしてここに居るのかな?」
「ワシは依頼の納品をしにギルドに来たんだ」
「じゃあ一緒に行けば良い」
「ふむ、そうだな。なんだ……その……素材の鉱石はちゃんと採れたのか?」
「えっと、ちょっと事情があってそっちは採れなかったかな。でもその代わりに──」
コロはそう言ってコロ父にボスの事を話した。
「そうか、確かにボスのドロップアイテムなら13層の鉱石よりも良いだろうな」
おっ! プロのお墨付き。
「着いたゴブ」
あれ? もう?
アクアの言葉通りいつの間にかギルドに着いていた私達は、そのままギルドの扉を開ける。
「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件で?」
「依頼の達成報告と納品」
「承りました。それではこちらへどうぞ」
「先に良いよ?」
「そうか悪いな」
私はコロ父に先を譲り辺りを見回す。
「どうしたんですかご主人様?」
「結局優勝賞品ってなんなのかと思って」
「あぁ、それならこっちだよ。ほら、あそこのケースの中のがそうかな」
おっ、確かに片手剣だ。
「上の表示って何?」
「あれは今の祭りの順位かな」
なるほどね。
コロの言葉に納得していると、エレオノが何故かケースの中に入っている片手剣に目が釘付けになっている。
そんなに気に入ったのかな?
「どうしたのエレオノ?」
「これ」
「ん?」
「これお母さんの剣だ……」
「え!? そうなの?」
「うん、吸血鬼カーミラって書いてある。私のお母さんの名前がそういう名前だってお父さん言ってたし。それになんか……懐かしい感じがする……」
マジか!? 今回の賞品がエレオノの母親の武器だったとはなんというご都合主義な展開! まあ、メタな話はともかくとして、う~ん、出来れば優勝してあげたいな。
「ごめんハクア、気にしないでよ。祭りは楽しむものだよね!」
明らかに空元気、本当は欲しいんだろうな。
「おい、こっちは終わったぞ」
「うん。今行く」
「いらっしゃいませ! 依頼の報告でしたね」
「後モンスター撃破の賞金も」
「はい承りました。ではこちらにソウルテイカーを置いて下さい」
そう言われ、私は自分のソウルテイカーを台の上に置く。するといつもの如く文字と数字が次々に現れる。
〈その内文字の勉強をしましょう〉
…………はい。
「えっ!?」
「どうかしたの?」
「あっ、いえ、えっと魔石も換金しますか?」
どうしよっかな? あ~、でもそろそろあれも確かめたいかも。
「これ以外は換金して」
そう言って私はガシャドクロの魔石と幾つかの魔石を取り除き、余った魔石を受付嬢に渡しそう言った。
「分かりました。では……、少々お待ち下さい」
そう言って受付嬢さんは中に引っ込んでいく。
なんだろう? なんか変な事したっけ?
そんな風に一人考えていると受付嬢が奥から帰ってきた。
「これが今回の依頼の報酬と魔石の買取り金額で、合わせて銀貨30枚です。そしてこれがボス討伐報酬の金貨1枚です」
「あれ? ボス討伐も報酬貰えるの?」
「はい、ダンジョンボスは定期的に出て来ますからそれも報酬の対象になります」
なんか儲かった気分。後でコロにも分けないとな。
「では報酬をお支払い致します。タグをこちらに……はい、入金が完了致しました。ご確認をお願いします」
うん、分からん! アリシアを見ると頷いている事から恐らくあっているのだろう。
「大丈夫」
「はい、では続いて」
続いて? あれ? まだなにかあるか?
「こちらがスケルトン祭りのポイントになります」
受付嬢はそう言って新しいタグを渡してくる。
「……スケルトン祭りのポイント?」
「はい、スケルトン祭りの登録が済んでいたので今回の確認でポイントが入りました」
あれ? 私達別に祭りに参加してないよね?
「あっ、そっか、私達祭りに参加してるかもよ。ハクア」
なっ、なんだって~!?
「いや、だって鉱山の中でスケルトン沢山倒してたし。ボスもあれアンデット系モンスターだよ」
「「「あっ!」」」
なるほどね。言われてみれば参加してるし沢山倒してるや。
「はい、ボス撃破とアンデット系モンスターの撃破スコアで、貴女達は現在暫定二位です」
「「「え~!?」」」
マジか! マジでか! これはエレオノの為にも本気で目指すしか無いよね!?
こうして私たちのスケルトン祭り本格参戦が決定した。