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第35話また新しい切り口で来ましたね!?

 食事を終えた私達は再びさっきの話しをしていた。


「それでハクア。さっき言ってたのどういう事なの?」


「皆はさ、私がギルドでやった事覚えてる?」


「「「ギルドでやった事」」」


「ゴブ?」


 私の言葉に考え込んだアリシアは何かに気が付いたような顔をした後で「それって【無詠唱】の事ですかご主人様?」と聞いてくる。


「あっ、そう言えば!」


「ハクアは【無詠唱】まで出来るのかな?」


「私のスキルに【無詠唱】は無いよ」


「そう……ですよね? だからあの時、私もおかしいと思ったんですよね」


「アリシアの疑問は正しいけど正しくない」


「「「正しいけど正しくない?」」」


 皆が疑問符を浮かべているのが分かる。さもありなん。


「うん。この世界のスキルってシステムは、例えば出来ない事や、出来るけど難しい事をやり易くするものなんだよ」


「え~と……」


 うーん。やっぱりこの説明じゃ足らないか。


「そうだな。例えば人間、矢を投げる事は出来るけど、弓を使えば威力も距離も上がるでしょ? それと同じ事なんだよ」


 だからスキルが無いと出来ない訳じゃなくて、スキルで補正が利かないから失敗しやすいだけで、私が【無詠唱】スキルが無いのに出来たみたいに皆も出来るはずなのだ。


「えーと、それって物凄い難しいスキルでも、練習すれば出来るようになるって事?」


 おおー、と感動したように目を輝かせながら聞いてくるエレオノに答え、今度はその方法について説明する。


「うん、多分ね。しかもスキルは熟練度でも取得出来るから、理論と方法さえ間違ってなければ、どんなスキルでも覚えられる可能性はある。私が【無詠唱】みたいに魔法使えたようにね」


「じゃ、じゃあ! 私もスキルが無くてもスキル名言わずに発動できるようになるの!?」


「さっき言った通り【言霧】は【無詠唱】の武技版だから、私が【無詠唱】やれたって事は出来るはずだよ。むしろ口では武技の連撃って言って、本当は四段突きを出したりとかも出来るはず」


「あ~、それ出来たら便利そう」


 何か思い当たる節があったのだろう。ウンウンと頷いたエレオノの言葉は何故か説得力があった。


「凄いですご主人様!」


「うん、そんな事考えた事も無かったかな……」


「それに魔法だって、ユニゾン魔法みたいにシステムの制御に頼らず自分で魔力コントロール出来れば、もっといろいろ出来るはず。例えば……今は一つしか出せないファイアブラストを十個位一気に出したりとか」


「ほ、本当にそんな事出来るようになるんですか?」


 今度は魔法について考えを喋るとアリシアの方が食い付いてきた。


「多分ね? その第一歩はアリシアが狼のモンスター相手に使ってたじゃん」


「確かに色々いじくりましたけど──」


「そっか、だから伝説の魔道師とか大賢者様なんかは、オリジナルの魔法とか多いし、既存の魔法も他の人とより強力なんだね」


『女神様:まさか独力でそこまでの考えに至るとは──ハクア恐ろしい子……』


『クラリス:フフッ、本当に大したものね』


『ティリス:凄いです! ハクアさん流石です!』


 なんかまた普通に混ざってきたな!


『女神様:しかしよく気が付きましたね。普通は魔道を極め、その先でこのシステムに気付き、そこから更なる研鑽が始まるというのに』


 まぁ、切っ掛けはユニゾン魔法と魔法のエディットだよね?


 あれがあったから魔法は使いやすくしてあるだけで、もっといろいろ出来るはず。って思ったんだよね。


『女神様:なるほど、確かに気付くには十分ですね』


 と、いうか他の転生者や召喚者は考えなかったのか?


『女神様:意外に剣と魔法のファンタジーに来ると舞い上がって、その辺の事に気が回らないみたいですよ。順応出来ても、かなりの時間経たないとその考えまでは出来ないですし、そもそもその考えに辿り着く人も大して居ません』


 さもありなん。


『ティリス:違います! きっとハクアさんが凄いだけです!』


 おっ、おう、さよか。


『クラリス:ティリス引いてるわよ……』


『ティリス:へっ? あわわ、引かないで下さいよ。ハクアさん』


『女神様:確か……前にもそれで逃げられてましたっけ?』


『ティリス:先輩それナイショ!!』


 と、とりあえず褒めてくれてありがとティリス。


『ティリス:ハクアさん……』


『クラリス:あれを受け入れるのね。大したものだわ……』


『女神様:ハクア恐ろしい子……』


 うるさい、駄女神。そのネタさっきもやったばっかだろ!?


『女神様:まぁ、冗談はさておき好きにやって下さい。貴女達のような転生者達がいろいろ作る度、この世界のシステムは新しくなり、より強固になっていきますから。それに貴女は今一番神々の注目になっているルーキーですからね』


 ちょっと待ったなんだそれ!?


『女神様:言った筈ですよ。ここは神々の箱庭。全ての者は神々に見られているんですよ。そう、ゴッドチューブによってね!』


 なんか新しい単語来た!? いや、まあ、見られてるとは聞いてたけど一番の注目ってどういう事よ!?


『女神様:それはまぁ、貴女は見ていて飽きないですからね? ゴブリンの身で魔族を倒したり、次々に新しい魔法を作ったりと、色々していますから』


 クソ~、客寄せパンダ状態か。


『女神様:パンダなんて可愛いものじゃないでしょうに』


 なんたる暴言!? さては喧嘩売ってんのか、この女神様(笑)は!


『女神様:なんですか(笑)って、また新しい切り口で来ましたね!?』


 はいはい、女神様(失笑)。


『女神様:パターン増やすな!!』


『『ティリス、クラリス:煽るな~』』


「ご主人様?」


「んっ? どうしたの?」


「ハクアが言ってたのどうすれば出来るかって話だよ」


 ちょっと駄女神達に構い過ぎたようだ。知らない間にそんな所まで話が進んでた。


「あぁ、とりあえずアリシアが【無詠唱】を使う時、頭の中で発動イメージして呪文を思い浮かべる。って、言ってたから武技はそれで出来ると思うよ」


「なるほど……ちょっと外でやって来る!」


「あっ、待ってそれより先にやりたい事が──」


「やりたい事ですか?」


「うん、とりあえず皆【魔闘技】発動してみてくれる?」


 私がそう言うとアリシア、アクア、エレオノが【魔闘技】を発動する。


 やっぱりか。


「うわ、皆凄いね。そんなの発動できる人なんて、ボクの周りにはいないかな!」


「多分これくらいならコロも練習すれば出来るようになるよ」


「本当?」


「多分ね」


「それで【魔闘技】発動させたけどこれがどうしたの?」


「私、スキルで【魔眼】って言う魔力を可視化出来るのゲットしたんだけど、それ使って見てみると【魔闘技】使ってる時、体の周りを靄みたいなのが覆ってて、それが湯気みたいに、こう……立ち昇って出てるんだよね」


「へ~、そうなんだ」


 そう言いながら皆がお互いの事を確認しあう。


「だからこれってもしかして【魔闘技】を上手く使えてないんじゃないかな?」


「ごめん意味が解らないかも?」


「つまり湯気みたいに出てるって事は、魔力を無駄に垂れ流してるって事だと思うんだよね。体の周りを靄みたいになってるのも、靄じゃなくて、もっとこう膜みたいに体の表面に纏うイメージでやれば、効率と威力が上がると思うんだよね」


「……確かにそうですね」


「だからそれが出来るようになれば、消費MPを少なくして魔力コントロールも上手くなるんじゃないかな?」


 そこまで言って私も【魔闘技】を発動する。そしてアリシア達と同じように靄と湯気が出ている事を確認する。


 え~と、湯気を出さないように靄も纏う感じで、そうだ前に漫画で見たな? 確かそれでは血液の循環のイメージでやってたっけ?


 私はそのイメージで魔力を循環させ更に集中する。


「ご主人様流石です」


「凄い」


「おねちゃんスゴイ、ゴブ!」


「ふぅ。大体こんな感じかな?」


 うん、今までよりもなんか力が入りやすいなMP消費もなんとなく少ない感じだし。


 〈実際MP消費が2分の1位に減っています〉


 おお、思った以上の削減になってる。


「これが出来ればかなりの戦力になると思うよ」


「どうやってやったの?」


「私は湯気を出さないように、靄も纏う感じで血液の循環のイメージでやったよ」


「血液の循環?」


「まぁ、それはむずかしいだろうから」


 そう言うとアリシアに近づき。


「えっ、あのご主人様?」


「ここから、こうやって、こっちに流れて行って、最後にここに戻る感じ」


 アリシアの体を直接触り撫でながら説明していく。


 正直ドキドキするし、なんか凄い柔らかい! と、言うかアリシアさん! やめてその顔! 変な感じになるから! 変な感じになるから! 私は多分そっち系じゃないはず……はず……なんだよ!


 〈自信無いんですか?〉


 正直最近分かりません!! だって皆可愛いんだもん!!


 〈はぁー〉


 ため息!?


「あのご主人様こんな感じですか?」


「ハクア私も?」


「ゴブ、おねちゃん?」


「待ってて、今一人ずつ見ていくから」


 こうして私達は夜中迄【魔闘技】をMPが尽きるまで練習して泥のように眠ったのだった。

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