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第32話美少女に左右から挟まれてドキドキする

 ユルグ村に着いた私達を待っていたのは沢山のドワーフと冒険者風の人間、それに───骨!? 


 つまり私達の目の前で繰り広げられていたのは、スケルトンのモンスターと村人の戦いだった。


「えぇ~、何これ?」


「わ~、スケルトン祭りだ!」


「アレがそうなんですか? もうそんな時期なんですね?」


 いやいやちょっと待とうよ御二人さん! なにそのとち狂った祭り!?


「……なんなのそれ?」


「そっか、ハクアは知らないんだよね?」


「これはスケルトン祭りと言って、昔不死の王ノーライフキングと呼ばれる魔王の一人が居たんですが、その魔王はアンデッド系のモンスターを従え、人間や自分に歯向かう者を殺しては自分の配下に加えていたんです」


 そしてこの地に居を構えた不死の王は、世界中の者を自分の配下に加えようとした。それを異世界から召喚された勇者に倒され、この鉱山の地下深くに封印されたらしい。


 ほうほう。流石異世界、魔王が結構身近だね。


 以来一年の今頃、封印の力が弱まり配下のスケルトンやアンデッドが町を襲いに来るようになった。


 その理由は封印を解く為に恐怖をばら蒔こうとしたからだ。


 しかし村人は暴れ回るのを逆に利用。


 冒険者向けの祭りとして宣伝して以来、村は封印を破られず、ここに来る冒険者に装備を売り、自分の作った武器の有能さを売り込みながら、ついでに村の資金にする。


 冒険者は経験値稼ぎと魔石を集めてお金稼ぎをするようになった。


「それがいつしかスケルトン祭りと呼ばれるギルドの大会になったんですよ」


 異世界の人間が想像以上に逞しい!


 と言うか、不死の王ノーライフキングなんて呼ばれてるのに金稼ぎの道具にされてる魔王が憐れすぎね?


「じゃあ特に危険は無いの?」


「うん。でも私達はお祭りに参加しない方が良いかも? スケルトンって初心者が相手するには、わりと強いらしいから危ないし。参加するなら無理の無い範囲でやらないと。それに、ギルドで受付してからじゃないと捕まっちゃうよ」


「捕まるの!?」


「うん、このお祭りはギルドが管轄してるからね」


 まさかティリスが煽ってお祭りに──。


『ティリス:違いますからねハクアさん!?』


 あっ、本人から否定来た。


 でもこれだけ色んな人間いたら誰が倒したのか分からないから、魔石の分配とかで揉めるんじゃない?


『ティリス:このお祭りはギルド主軸でやっていますから、ソウルテイカーを使えば自分のパーティーが倒した魔石を回収出来るんですよ』


 へ~、凄いね。


「とりあえず、なんの問題も無いなら宿屋を探そう」


「そうですね」


「はーい」


「ゴブ」


 とりあえず腰を落ち着ける為、私達はスケルトン祭りを眺めながら宿屋を探す──が。


「見付からない!」


「時期が悪かったかもね? ちょうどお祭りの時だし」


 宿屋を探しても見つけられなかった私達は、スケルトン祭りの出店に売られている串焼きを食べ、途方に暮れながら話していた。


 エレオノの言う通り、どの宿屋を訪れても外から来た冒険者で宿は一杯でどこにも空き部屋が無かった。


「どうしよっか?」


「私はご主人様と一緒ならどんな所でも大丈夫です!」


 いや、そうでなくてね?


「う~ん。一回ギルドに行って受付しながら心当たり無いか聞いてみる?」


 それが妥当かな?


「じゃあ、ギルド行ってみようか?」


 相談の結果結局ギルドに向かう事になった私達は、その足でギルドに向かう。


 その道すがらも屋台で食べ歩きをしまくっていたら流石にアリシアに怒られた。閑話休題。


「ここがユルグ村のギルド?」


「みたいですね……」


 なんか無駄にでかく感じるんですけど?!


「ここは、色々な産業で実入りが良いからね。ウチと違って大きいんだよ」


 微妙に自虐ネタ入ってません?


「おねちゃん入らないの?」


 アクアにそう言われ突っ立っているのもなんなので中に入ると「ねぇ、お願い誰か受けてくれないかな!」と、声が聞こえた。


 そんな声に興味を引かれ中を覗いてみると、ギルドの中にいる冒険者達に必死に話し掛ける女の子が居た。


 しかし何故か誰もその女の子には取り合わない。


「どうしたんでしょう?」


 すると横からニヤニヤとしながら近付いて来た冒険者が、アリシアの体をジロジロと不躾に見ながら説明してきた。


「あぁ、あの嬢ちゃんな? このスケルトン祭りの時期にわざわざ依頼なんて出しても誰もやらねえよ」


「なんで?」


「なんでってそりゃあな? この時期ここに居るのは、ほとんどが祭りの参加者なんだから無理に決まってるっての」


 なるほどね。


「なぁ、そんな事よりもネェちゃん達良かったら」


「良くない忙しい。じゃっ!」


 冒険者が言い終わる前に言葉を被せ私達は立ち去ろうとすると──。


「おい、待てよ! 人が親切にこれだけ教えてやったてのにその態度はねぇだろ」


「教えてくれとは言ってないけど?」


  【鑑定士】スキル成功

 名前:クウゲル

 レベル:10/50

 位階:2

 年齢:28

 種族:人間

 クラス:騎士

 HP:650

 MP:150

 物攻:250

 物防:200

 魔攻:50

 魔防:30

 敏捷:200

 知恵:120

 器用:115

  運 :55

 魔法:なし

 武技:三段突き、パワースイング、連撃

 称号:

 スキル【直感LV.1】【見切りLV.4】【剣のコツLV.3】【剣技攻撃力up】【魔闘技】【堅牢LV.5】


 やってやれない事は無いかな?


 ステータスを確認して私は魔法を主軸に戦えばなんとかなると予想を立てる。


 最悪全員でボコれば良いよね?


「おい、聞いてんのか!」


 私は周りを見てギルドの職員が我関せずを貫くのを確認する。


 そしてその態度に無視をされたと感じ激怒した男が【魔闘技】を発動するのを見て、私も同時に【魔闘技】を発動する。


 アレ? なんだろうこの靄みたいなの? 私と冒険者の男の体を覆ってる?


 〈マスターの【魔眼】スキルで見えている魔力です〉


 そっか、こんななんだ?


【魔闘技】を発動し、手を振り上げようとする男の右腕を左手で上から押さえ、そのまま引き込み男の体勢を崩し、【疫攻撃】を抜きにした【崩拳】を右手で放ち、同時に頭の中でウインドブラストを唱えそのまま打ち抜く。


 破裂するような音と共に冒険者はぶっ飛び失神する。それを確認して【魔闘技】を解除する。


「いいぞー」


「嬢ちゃんやるな」


「いい攻撃だったぜー」


 次々に称賛の声が響くが、何これ?


「元々こんなお祭りに参加しようと来てる人達だからね。この位の事ならお祭りの延長線上なのかも?」


 さもありなん。


 でも今ので分かったけど、私は物理も魔法もそれなりに行けるから、相手に合わせてやればザコならなんとかなるかも?


 〈今のは奇襲が上手く行ったので良かったですが、油断は禁物ですよ〉


 うん、分かってるありがとねヘルさん!


 〈いえ、マスターのフォローが私の役目なので〉


「それよりご主人様今のは?」


「後で話すよ」


 上手くいったしね。


 そのまま私達は受付カウンターに向う。


「いらっしゃいませ。ユルグ村冒険者ギルドにようこそ」


「今みたいなのはよくあるの?」


「はい、でもこの時期にここに居るのは、ほとんどが祭りの参加者なので、あの程度のいざこざは自分で対処して頂かないと、スケルトンを相手にするのは難しいかと」


 なるほどね。ある意味ふるい落としになってるのか? 何処に行っても舐められてるな最近。


 〈若い女性だけの見るからに駆け出しパーティーですからね〉


 ですよね~!


「それでご用件は?」


「祭りの登録と、後何処か泊まれそうな宿屋知らない?」


「スケルトン祭りの登録は出来ますが、この時期はギルドも宿屋の紹介までは出来ませんね。もうどこも一杯なのでは?」


「やっぱり無い?」


「はい、申し訳ありません」


「それならボクの家に泊まらないかな!?」


 私達が受付で話しているとそこに突然女の子が割り込んで来た。


 この子さっきの女の子?


「この時期に今から宿なんて見付からないしどうかな? ねっねっ」


 グイグイ来るな~。


 でもこの子可愛い! 背はアクアより少し高くて140位? セミロング位の茶パツを後ろで結んで、ノースリーブのTシャツに膝丈のオーバーオールと、膝下迄あるブーツを履いてる。


 目が大きくてまさに元気っ子って感じのアクアとは違うタイプの美少女だ! しかもまさかのボクっ子! これはポイント高いですぞ!?


 アクアは眠たげなミステリアス系だからね!


 〈彼女はドワーフですね〉


 そうなの? ドワーフってもっとゴツくて、ずんぐりむっくりってイメージなんだけど?


「それは男のドワーフだよ」


「ドワーフの女性はどちらかと言うと、少女のままの外見の方が多いです」


 と、エレオノとアリシアが左右から耳打ちでこっそり教えてくれる。


 正直美少女に左右から挟まれてドキドキする! ごちそうさまです! しかし成る程、合法ロリという訳か。


 〈マスター〉


 すいません!


「それでどうかな? 決めちゃいなよ!」


 チャラいな! 実は宿の営業じゃないよね?


「条件の依頼内容は?」


「あう、なんでその事を知ってるの……かな?」


「入り口であれだけ騒げばね」


「うぅ、はぁ、分かった依頼内容はボクの護衛をして欲しいかな」


「護衛?」


「うん、ボクがここの鉱山に入るのを助けて欲しいかな」


 こうして私達はドワーフ少女の依頼内容を聞き始めた。

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