「ここらへんでいいかな?」
エルム村を出発した私達は、休める場所を早急に探し出し早めに野営の準備をする事にした。
「ちょうど良い洞窟が有って良かったですね」
「うん、ここならちょうどよさそう」
そう、私達が早めに野営の準備を始めたのは、私とアクアの進化の為。
前回はアリシア一人しか居なくなってしまう為、私とアクアは別々に進化したけど、今回は新しく仲間になったエレオノが居るから二人同時に進化しようという事になった。
その方が時間短縮になるしね。
「私、モンスターの進化って初めて見る」
「私も前回初めて見ました」
二人がそんな話をしながら可視化したエディット画面を私の後ろから眺めてる。そんな二人を背後に置き私は改めてアクアの進化先を確めてみる。
▶アクアの進化先が複数ありますどのモンスターに進化するのか選んで下さい
ゴブリン(☆)
ゴブリンメイジ(☆☆)
ゴブリンシャーマン(☆☆)
ゴブリンプリースト(☆☆☆)
ホブゴブリン(☆☆☆☆)
エーリエル(☆☆☆☆☆)
なんかレア度っぽいのが増えてる?
〈【鑑定士】のレベルが上がったからですね〉
そっか、でも他のは分かるけどこのエーリエルって何?
〈エーリエルは希少進化ですね。ゴブリンプリーストや、妖精種が複数の種族を回復する事が条件のようです〉
あ~、確かにそれはモンスター単品だと難しいだろうな。
「なんでそれで希少進化の条件なんですか?」
「モンスターが、わざわざほかのしゅぞく、かいふくするとおもう?」
「あ~、確かに」
「どんな種族なんですか?」
〈エーリエルは風と回復を得意とする妖精ですね。主に風魔法と回復魔法でサポートする種族です〉
「じゃあ今の役割をそのまま強化出来る感じの種族だね」
しかし妖精かぁ? 確か日本とかだとゴブリンって小鬼種って感じで扱われてるけど、本来は妖精の扱いなんだよね? その流れかな? って考えてもしょうがないか。
「エーリエルいったくだね!」
「ですね」
「だね」
〈はい、私も賛成です〉
「ゴブ?」
一人だけよく分かってないみたいだけどまあ良いか。よし。それじゃ早速始めよう。
▶アクアの進化先が複数ありますどのモンスターに進化するのか選んで下さい
ゴブリン(☆)
ゴブリンメイジ(☆☆)
ゴブリンシャーマン(☆☆☆)
ゴブリンプリースト(☆☆☆)
ホブゴブリン(☆☆☆☆)
エーリエル(☆☆☆☆☆)⬅
▶一度進化すると元の個体には戻れませんが、アクアの進化先はエーリエルで良いですか?
はい←
いいえ
▶アクアがエーリエルに進化します。進化を開始します。暫くお待ち下さい
瞬間アクアの体が輝きだし、光の糸が体を包み繭を形成する。完全に繭状になると光が収まり繭だけが残る。
何度見ても不思議な光景だなぁ。
「うわぁ、モンスターの進化ってこうなるんだ……」
「……やっぱり。不思議な光景ですね」
皆もやっぱり私と同じ感想みたいだ。
「次はご主人様ですね!」
「ハクアの進化はどんな感じかな!」
うわ、なんか期待されてる。レ、レアとか無かったらどうしよう。いやいや、き、きっとあるさ。
▶ハクアが進化出来ます進化先先が複数ありますどのモンスターに進化するのか選んで下さい。
ゴブリン(☆)
ゴブリンソルジャー(☆☆)
ゴブリンナイト(☆☆)
ゴブリンメイジ(☆☆)
ゴブリンモンク(☆☆☆)
ゴブリンシャーマン(☆☆☆)
ゴブリンプリースト(☆☆☆)
ホブゴブリン(☆☆☆☆)
パラライズゴブリン(☆☆☆☆)
オーガ(☆☆☆☆☆)
疫鬼(☆☆☆☆☆☆)
「凄い!」
「凄いです!」
良かったレア度高いのあった。と言うか、鬼なんて進化先にあったんだ?
『女神様:モンスターがカタカナだけと思ったら大間違いです』
いや、そこまでは思ってないから。
〈オーガと疫鬼以外は説明しないでも大丈夫ですね〉
「そうだね」
〈ではまずはオーガについて説明したいと思います。オーガは強敵を倒したゴブリン系が進化出来る個体です〉
ほうほう。あの戦いもこんな副次効果があるなら無駄じゃなかったな。
〈ホブゴブリンよりも上のランクですが、どうやらマスターは今回の戦いでその資格を得たようですね。主に強い肉体と力により戦う近接戦闘のタイプで、パワーを生かした素手の武技を覚えます〉
オーガって大きいイメージがあるけど私も大きくなるの?
〈すみません。そこまでは〉
『女神様:なりませんよ。個人差がありますから、特に女性型の場合はそこまで大きいのは中々居ません。あなたの場合は普通の人と同じサイズです』
ふーん、そっか。
「良かったー」
「良かったです」
〈次は疫鬼ですが、これは状態異常に耐性がありながら強敵を倒した事の在る者のみがなれる超希少進化です。あらゆる状態異常を使い格闘、武器、魔法を使いこなす種族です〉
「うわぁ、強そう」
「……敵としては会いたくないですね」
私もそう思う。けど、やっぱり聞いた限りでもこれが良さそうだ。
〈はい〉
「じゃあわたしは、えききにする」
「そうですね」
「うん、良いと思うよ」
▶ハクアが進化出来ます進化先が複数ありますどのモンスターに進化するのか選んで下さい
ゴブリン(☆)
ゴブリンソルジャー(☆☆)
ゴブリンナイト(☆☆)
ゴブリンメイジ(☆☆)
ゴブリンモンク(☆☆☆)
ゴブリンシャーマン(☆☆☆)
ゴブリンプリースト(☆☆☆)
ホブゴブリン(☆☆☆☆)
パラライズゴブリン(☆☆☆☆)
オーガ(☆☆☆☆☆)
疫鬼(☆☆☆☆☆☆)⬅
▶一度進化すると元の個体には戻れませんがハクアの進化先は疫鬼で良いですか?
はい←
いいえ
▶ハクアが疫鬼に進化します。進化を開始します。暫くお待ち下さい
〈今回は12時間程で終わります〉
「じゃあ後はよろしく」
「はい、ご主人様」
「了解です」
そのアナウンスと共に私の体からアクアのように光が溢れ輝き出し、やがて光が糸のように私に巻き付く。そして私の意識は途切れた──。
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アクアの進化が始まり、その次にご主人様が進化先に疫鬼を選び進化が始まった。
私自身この光景を見るのは二度目ではあったけれど、何度見ても幻想的で不思議な光景だと感じる。
そんな中二人きりになり、時間を無為に過ごすのも勿体無いと思った私は、エレオノを誘って一緒に訓練する事にした。
私達は今洞窟内の一番奥に居る。横穴が無いのも確認済みなので、入り口に居れば侵入者には絶対気付ける筈です。
「エレオノ? 少し手伝って欲しい事があるんですが」
「えっと、何?」
「ご主人様達の進化の間に少し戦闘の訓練をしたいんです」
「うん。良いよ。私もお願いしようと思ってたし」
「そうなんですか?」
意外な言葉に思わず聞き返す。
するとエレオノは少し悔しそうにしながら喋り出した。
「うん、私も一応お父さんに訓練は受けてたんだけど、実戦はこの間が初めての事だったんだ。ゴブリンの巣に居た時も何も出来なかった」
悔しそうに語るエレオノに共感する。
私も、ゴブリンに捕まった時は同じ事を思いましたからね。
「この間のも……ただ剣を当てただけだから戦ったなんて言えるかどうか───だから皆の足引っ張りたくないし、少しでも訓練したかったんだ」
エレオノ、そこまで真剣に考えてたんですね。気付きませんでした。
「じゃあ入り口の所で模擬戦をしましょうか?」
「うん」
私はそう言って入り口に向かう前に、ご主人様達の前に土魔法で壁を作り上げ行き止まりを作る。
これで、もし万が一があっても大丈夫。
「わぁー、やっぱり魔法って便利だね」
エレオノがそう言って誉めてくれるのが少し照れ臭くて早く行こうと促し、私達は今度こそ入り口に向かい訓練を始める。
「どうやって訓練しようか?」
「お互いに怪我をさせないように、遠距離と近距離の対処を学びましょう」
「そうだね。じゃあとりあえず威力の高い攻撃は無しにして、先にクリーンヒットした方の勝ちって事でどう?」
「そうしましょう。ではお互いに10メートル程離れた所から始めましょうか?」
「OK」
私達はお互いに離れて準備を始める。
私は全ての魔法の威力を最低に設定して、それぞれの項目をチェックしていく、今までは色々とご主人様に考えて貰っていたけど、そろそろ自分でも弄って行くべきかも知れないですね。
「アリシア! 私の方は準備出来たよ」
「はい、私も大丈夫です」
私達はお互いに向き合う。
───エレオノが合図として木の枝を拾い上げ上に投げる。
それが地面に落ちると同時に私達は動き出す。
エレオノは早速前屈みになり突撃して来る。
思い切りが良い。それに───速い!
私は同時に後ろに飛びながらファイアアローを放つ。
「くっ!」
ファイアアローを撃たれたエレオノは、手にした剣で四本の矢を切り落とし、残りの三本を回避する。
そして避けると同時にナイフを投げて追撃を掛けてくる。
それを顔を傾けて避けるも、その隙にエレオノが間を詰めてくる。そこで私はご主人様の戦い方を参考にウインドブラストを放つ。
「えっ! きゃあ!?」
二人の中間地点に炸裂した魔法は、その衝撃でお互いの距離を強制的に引き離す。
こんな時だが、ご主人様の魔法の使い方が危ない反面、効果的だと心底理解する。
これでもう少し自分自身に気を使ってくれれば、心配が減るんですけどね。
「ハアアア!」
そんな事を思っているとエレオノが再び距離を詰めようと向かって来る。そんなエレオノの足元に向かって。
「アクアブラスト」
魔法により足元が悪くなりエレオノのスピードが目に見えて落ちる。そこに魔法を撃ち込もうとすると───。
「パワースイング!」
エレオノはパワースイングを地面に放ち、土を削りこちらに飛ばしてくる。
私はその予想外の行動に慌てて回避を選択する。
一撃で致命傷になりそうなそれをなんとか回避すると、いつの間にかエレオノが目の前まで迫っていた。
「ハッ!」
掛け声と共に放たれた一閃をナイフを使ってなんとか防ぐと、追撃を仕掛けて来ようとしているエレオノのお腹に手を当て、無詠唱のウインドブラストを放つ。
「きゃあぁ!」
無詠唱までは警戒していなかったのか、魔法をまともに食らったエレオノは空気の爆発で吹き飛ばされ、思い切り背中を木に打って仕舞った。
「すみません。大丈夫ですかエレオノ!?」
「いたた、大丈夫。そう言えばアリシア無詠唱出来たんだよね。始まる前は気を付けるつもりだったけど、ちゃんと詠唱してたから忘れちゃったよ」
私はエレオノに手を貸しながらやっぱりそうですよね。と、心の中で同意する。
「私もご主人様に言われていたんですよ。最初から無詠唱を使うと警戒されやすいから、いざという時を見極めて使うようにって、その方が戦略の幅も拡がるからと」
「そうなんだ? 本当にハクアって凄いね。転生者ってこの世界と違って戦いが無い所から来てるはずなのに」
それは私も考えてました。
ご主人様は戦い方には慣れていないようだけど、戦い自体には凄く慣れているような? もしかして実戦以外の訓練でも受けていたのでしょうか?
「まだ時間あるからリベンジして良いよね!」
「勿論良いですよ」
こうして私達は日が落ちるまで訓練して、二人してヘロヘロになりながら、ご主人様達の所まで戻り夕食を食べる。
その後も、二人で連携や互いの戦い方について夜通し話をしたのでした。