ギルド長改め魔族グートルードとの戦闘が始まった! ───が、私はそんな事お構い無しに、タイムちょっとしつもん。と、グートルードを制止する。
うわ、皆の視線が痛い!! そんなシラケるなよ照れちゃうだろ。
「ハァー……。なんだ?」
溜息!? でもちゃんと聞いてはくれるんだ?
「あんたたちのもくてきはなに? あんたほどのちからがあれば、もっとかんたんにこんなむら、おとせるでしょ?」
「なんだ、そんな事か? 簡単だそれは我が主に楽しんで貰う為だ」
「あるじをたのしませる?」
「そうだ。強者による一方的な虐殺ではなく、安心しきった依頼に赴き、こんな筈では。と恐怖や絶望と共に死んで行くそういうショーだ!」
「そんな事の為に」
ほう。少なくともコイツの主が指揮したものではなく、コイツが主の為に開催してる催しという事か……。
「貴様ら人間が、魔族の余興に使われるのだ光栄だろう?」
「……そう」
「なんだ? 抵抗する気力も無くなったか?」
いやいや、そんな事無いよ?
「いまだ!」
「何!? そこか!」
私の掛け声にグートルード───長いな、グルドで良いかは、私の視線から相手の位置を読み取り素早く反応する───が……。
勿論誰も居ないよ? 奇襲に指示なんて出す訳無いじゃん。
「ブラストマイン」
指を鳴らしながら、魔法名を唱え魔法を起動する。
すると、私の声と共に逃げる途中に仕掛けていた魔法がグルドの足下から炸裂して、無防備なグルドを爆発に巻き込む。
まぁ、この為にそこの位置で止まるように、ストップ掛けたんだけどね。正直止まるとも思わなかったけど……。
勿論この隙にエレオノも後ろに逃がし、安全の確保も忘れない。
「ファイアブラスト」
「ウインドブラスト」
私の先制攻撃に素早く反応してボルケーノを放つ二人。
爆風に耐え、風が収まると同時に走り出す。
迷わず土煙の中に突っ込み【直感】を頼りに、鎌鼬を最大出力にしてグルドへと斬り掛かる───だが、甲高い音と共に鎌鼬が崩れ去り、私は思いきり吹き飛ばされる。
「ご主人様!」
「おねいちゃ!」
私に駆け寄って来ようとする二人を片手を上げ制止。
二人に目線で大丈夫だと示し、相手に集中するよう促すと、私自身もグルドに集中する。
【鑑定士】スキル失敗
グートルード
レベル:30
HP:2500/3000
MP:1500/1500
物攻:500
物防:460
魔攻:350
魔防:480
道理で効かない訳だ。レベルが段違い。
「おい、大丈夫か?」
レイドが私に駆け寄ってダメージの具合いを聞いて来た。それに大丈夫だと答えて今度は私が質問する。
「ほかのぼうけんしゃは?」
「もうすぐ来る筈だが……。正直あのレベルはキツイだろうな」
「アレ、ステータスのへいきん、よんひゃくこえてるけど……いけそう?」
「Dランクに期待するなよ。今レベル20で一番高いのが300だ」
あらまぁ。一番高いステでも平均以下かぁ。
「因みにそれなに?」
「物防だよ!」
グルドを見て冷や汗を流しながらヤケクソ気味に答えるレイド。
まあ、気持ちは凄く分かるよ。
「なるほどムリだね」
「諦めが早いぞルーキー」
「ちなみにいまのこうげきでへったのは、ろくぶんのいちくらい」
「……逃げて良いか?」
残酷な真実を伝えてあげると、一気にテンションが下がりそんな事を言い出すレイドに、できるなら。と、良い笑顔で言って差し上げる。
だが、そんな私達の会話をボヒュッ! と言う音が遮る。
私達が恐怖を誤魔化すため軽口を叩いている所に、土煙の向こうから高速で石を投げ付けて来たようだ。
なんとか飛来する石を回避するが、そのスピードと威力に嫌な汗が止まらない。
アレ……一回で絶対死ねるよね?
「躱したか」
その言葉と共にグルドが土煙の中から出てくる。
「死ね」
いきなり真後ろに現れレイドを狙うが、レイドは持っていた盾でなんとか防ぐ。しかしそれでもレイドは衝撃に耐えられず吹き飛ばされてしまう。
「ぐあ!」
吹き飛ばされるレイドを見る余裕もなく、私は攻撃に移る。
「カマイタチ」
魔法を発動してグルドに斬り掛かるも、グルドの力任せの腕の一振りで鎌鼬が消え去る。そして攻撃体勢から魔法を砕かれ無防備になった私の腹が軽くトンと叩かれる。
その瞬間───全く力が込められたように見えなかった攻撃で、私は思いきり血を吐きながらアリシア達の方へ吹き飛ばされ、アリシア達にぶち当たる。
「「キァアア!」」
そんな私達を避けミランダは一人グルドに攻撃をする。
「はあ!」
しかし戦士である彼女の攻撃も、力を込めただけの腕を切り裂く事も出来ずに表面を削り、僅かなダメージしか与えられない。
「……効かんな」
グルドはミランダを横から蹴るが、それになんとか反応して剣の腹で攻撃を受ける。
しかし、バキッと言う音と共に剣が折れ、ミランダの横腹に容赦の無い一撃が突き刺さった。
「がぶぅっ!」
折れたろっ骨が何処かに刺さったのか、大量の血を吐きながら吹き飛ぶミランダ。
クソ! 予想以上だ。
「ウオオォォォ!」
レイドが叫びながらグルドの背に剣を突き刺そうとするも、グルドはいきなり真後ろに現れ。
「……邪魔だ」
その一言と共にレイドの背に拳を叩き付ける。
ドゴォと、およそ人から出てはいけない様な音を立てて、レイドの身体は地面に小さなクレーターを作りながら沈みこむ。
「ファイアアロー」
「シュー、ティングレイ」
レイドに気が向いた瞬間を狙い、シューティングレイを撃つアクアと威力を上げた魔法を撃つアリシア。
「ハァッ!」
だがその攻撃は、グルドの気合の声と共に片手を突き出した腕から黒い光が放たれる。それは二人の魔法を呑み込みそのまま二人に向かって突き進む。
「よけて!」
受けられる訳が無い。
直感と共にそう感じた私は、あまりの光景に固まる二人に向かって叫ぶと、二人はなんとかその声に反応して回避する。
だがその光の余波だけで二人は吹き飛ばされてしまった。
魔法でもなんでもない一撃。
ただ魔力を放出しただけであの威力なんて強すぎだってーの。
「きゃああ!」
「ゴブ~!」
吹き飛ばした二人の事などどうでも良いと言うように、グルドは私に向かって歩き出し私の目の前で立ち止まり、私をサッカーボールのように蹴り上げ顔を掴み、そのまま持ち上げた。
「ふん、確かに雑魚の中では一番楽しめたが、所詮はゴブリン。こんなものか……」
あぁ、やっぱりこいつ私の事に気が付いてたか。
それでも私は生き残る為に【麻痺毒】で、今出来る一番強力な物を精製してグルドに放つ。
「無駄だ。我が肉体は主の力で鋼鉄となる術を得た。貴様ら人間の脆弱な攻撃は刃も通さん。毒とてこの肉体はすべて弾く」
ミヂッ! その音が私の頭からした音だと脳が認識すると、途端に強烈な痛みが襲ってくる。
「ぐっ、ああぁぁあぁあ!」
「死なんように手加減するのも難しい程に弱いな」
───ヤバイ死にそうだ……。
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ハクアさんに助けて貰った私は一人物陰に隠れて戦いを見ていた。
「強すぎる……」
そんな言葉が私の口から自然に漏れ出る。
今日、私の目の前で冒険者に成れたばかりのハクアさん達は、あんな化け物相手に必死に抗っているけど、戦いの素人である私でさえ分かるほど圧倒的な力の差があった。
それでもハクアさん達の奮闘は続く。
「カマイタチ」
ハクアさんが造ったらしいオリジナルの魔法も、父に化けていたグートルードと名乗る魔族の腕の一振りで崩れ去ってしまう。
攻撃魔法が崩れ去ってしまった事で、無防備になってしまったハクアさんは思いきり殴られ、吹き飛ばされてしまう。
「ハクアさん!」
ハクアさんは一個の砲弾のようになり、アクアちゃんとアリシアさんに激突してしまい、皆が吹き飛ばされる。
そこから先はもう一方的な展開だった。
ミランダさん、レイドさん、アクアちゃんとアリシアさん、そして後に残されたのは、もう立つ力すら残っているように見えないハクアさんだけ───。
そんなハクアさんをグルドはそのまま蹴り上げ、片手で持ち上げる。
そして───
「ふん、確かに雑魚の中では一番楽しめたが、所詮元がミニゴブリンこんなものか……」
と、つまらなそうにハクアさんに向かって吐き捨てる。
えっ!? ハクアさんがゴブリン……そんな筈ない!
私はグルドの言葉を必死に否定する。その間もハクアさんの抵抗は続いていた。
「無駄だ。我が肉体は主の力で鋼鉄となる術を得た。貴様ら人間の脆弱な攻撃は刃も通さん。毒とてこの肉体はすべて弾く」
そう言ってグルドはハクアさんの顔を掴む手に力を込める。その瞬間、ミヂッ! と、離れている私にも聞こえる程の音が、ハクアさんの頭から鳴る。
「ぐっ、ああぁぁあぁあ!」
「死なんように手加減するのも難しい程に弱いな」
私の目には物陰に隠れている冒険者が見える。恐らくはレイドさんが言っていた応援を頼んだ冒険者だろう。
───けれど冒険者達は誰もあの化け物に挑み掛かれない。
お願い誰か皆を助けて!!
───そう言葉に出したくてもその言葉すら私は言えなかった。
カランッ……。
少しの物音に私は背すじが凍る。
しかしそれは私が落とした、ハクアさんから貰ったナイフだった。
───それを見た時、ハクアさんがゴブリンかどうかなんてどうでも良くなった。
「……そうだ。ハクアさんはハクアさんだ」
───何も考えず心の奥底から出た本当の気持ち。
それが自分の口からスっと出た事に驚きながらも、私の身体はその自分の言葉を証明する為に行動した。
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───ヤバイ死にそうだ……。
そう思っていると誰が近付く気配を感じた。
指の隙間から見えたそれは私が全く予想すらしていない人物。
「あああああああ!」
その叫びと共にエレオノがグルドの脇腹にナイフを突き立てる。
「……小娘が無駄だと言っているだろう!!」
嘲りの言葉と共にエレオノを攻撃しようとするその刹那、私の顔を掴む手の力が弛んだ。
瞬間、私はその隙を逃す事無く両手でグルドの腕を掴む。
熱っつい! ええい、ままよ!
そのまま全部の力を振り絞り顔を引き抜くと、グルドの腕を起点に顔面を蹴り飛ばす。
ガキン! と、いう音は私の蹴りが見事に決まった音。
しかし、自らが言っていたように鋼鉄の身体は、その程度の攻撃など痛みとして自分へと返って来た。
凄い痛い!!
しかし、その甲斐あって私の攻撃で体勢を崩したグルドを尻目に、エレオノの手を掴んで、足の裏から最小威力のウインドブラストを放つ。
その瞬間、私達は砲弾のような速度でグルドから離れ、アリシア達と合流する事に成功する。
そして私はたった今思い付いた奇策を使う為の準備を始めた。
▶スキル【念話】をスキルポイント150使用して取得しますか?
はい←
いいえ
▶スキルポイントを使い【念話】を取得しました
″ここに居る全員聞いて、作戦がある″
「これ、ご主人様の声?」
「作戦……なんてアイツ相手に意味がある……の?」
本当の所など私にも分からない。しかし私は頷きミランダに問い掛ける。
「ミランダたしか、みずけいのマホウ、つかえるよね?」
「でも、……私程度の魔力じゃ効かない……わよ」
「それでもいい」
″ここに居る全員聞いて! 今から私達で大型の火魔法を使う。それに合わせて火魔法が使える人間は、一番火力のある火魔法を、風魔法しか使えない人間は【爆】属性の風魔法を私達に合わせて撃ち込んでくれ”
返事など聞こえない一方通行の【念話】。それでも誰か一人でも応えてくれると信じ叫び続ける。
”水魔法を使える人間は水魔法優先で、私が合図したら撃ち込んで、魔法が得意じゃない人間は最後に全員で直接攻撃する。どのみちここで倒さなきゃ全員殺される。それなら最後に全員で抵抗してあいつを倒すぞ!″
「アリシア、アクア、アレやるよ」
「でもあれは、一度も成功していませんよ!? しかも周りの人が協力してくれるとも」
「それでもやらなきゃしぬだけ」
「わ、私にもお手伝いさせてください!」
「なっ!? 無理です。エレオノさん!」
アリシアの言う通り無茶にも程がある。しかし───それでも私はエレオノにブキは? と、問い掛ける。
「この……お父さんが昔使っていた剣が有ります!」
「わかった。最後の攻撃一緒に行こう」
「ご主人様!」
アリシアの責めるような声。
だが、私とて譲る気は無い。
確かに無茶だと思う。
でも、エレオノは冒険者すら足が竦むような状況で、力も無いのに立ち向かった。
私はエレオノのそんな勇気を信じる。
「エレオノがきめたならわたしはてつだうだけ、それにしょうじきすこしでもちからがほしい」
私はそう言ってアリシアを無理矢理納得させる。
「貴様ら、もう赦さん生きたまま引き裂いて殺してやる」
まずい!
「ウオオォォォ!」
傷薬を使い多少HPを回復させたレイドがグルドに斬り掛かる。
しかしグルドはその攻撃を腕で弾き、ふたたびレイドを弾き飛ばす。
ナイスだレイド!
私は心の中でレイドに喝采を送り、アリシアとアクアにアイコンタクトを送ると、阿吽の呼吸で魔法を放つ。
「「ウインドブラスト!」」
「ファイアブラスト!」
私達三人の声が重なり魔法が放たれる。
「何度も同じものが通じるかぁ!」
グルドはそう叫び、またも先程の黒い光を放つ───が、その時私達の放った三つの魔法は空中で重なり混じり合い、火から炎へ、炎から蒼炎へとなり、黒い光をも呑み込みグルドに襲い掛かる。
これが私達が三人で撃つ、今現在の最高ユニゾン魔法インフェルノだ!!
衝撃が起こり、爆炎が鳴り響き、少し遅れて私達の攻撃に続くように何人もの火魔法や、ウインドブラストがグルドに殺到し、何度も爆炎を上げる。
そして最後の魔法攻撃が当たる瞬間───。
″いまだ! 水魔法撃てぇぇぇ!″
私の【念話】が響いた瞬間、今度はありとあらゆる水魔法が放たれる。
熱された鉄の身体を持つグルドに水が掛けられ、小規模な水蒸気爆発が何度も起こり、グルドの身体が蒸気に飲み込まれていく。
【鑑定士】スキル失敗
グートルード
レベル:30
HP:1000/3000
MP:1000/1500
「ふん、この程度か?」
水蒸気の煙の中からほぼ無キズな状態で現れたグルドに、周囲から落胆と絶望の空気が流れる。
だが私は一人、そんな事に構わずグルドが水蒸気から現れる前、水蒸気が影を写した段階で走り寄り攻撃を仕掛ける。
「カマイタチ!!」
私はふたたび魔法を発動してグルドに斬り掛かる。
───だが、周囲の反応はまた同じ事の繰返し。先程までと何も変わらずにやられるという空気だ。
そしてグルドは再び私の攻撃を力を込めた腕で弾き返そうとする。
「同じ事を何度繰り返そうが変わらん!」
さて、それはどうかな!?
バキッッ!! と、音を立て私の発動した鎌鼬は消え去る。
───しかしそれは私の鎌鼬が消えた音ではなかった。
それは、私が攻撃を当てた部分から侵食するように、グルドの腕が攻撃を受けた部分を中心に崩壊して行く音。
「ぐあぁあぁぁぁぉ!」
″全員攻撃!!!″
想定外の結果に止まった時間の中、私が全員に【念話】で号令を出す。
「「「ウオオォォォ」」」
雄叫びとともに今まで隠れていた冒険者が全員で突撃を敢行する。
「ぐあぁあ!」
グルドは今まで効かなかった筈の攻撃が、急に自分に効果を表した事に戸惑い、その身に剣を、矢を、槍を食らい、どんどんHPを削られていく。
「くっ! 人間如きが舐めるなー!!」
だが、そこで終わる程簡単な相手ではない。
グルドは片腕を失い身体中に武器を刺されながらも、次々に冒険者を弾き飛ばしていく。
【鑑定士】スキル失敗
グートルード
レベル:30
HP:400/3000
MP:1000/1500
「ウオオォォォ!」
レイドがふたたびグルドを斬り付け、それに続き裂帛の声を上げ、エレオノもグルドの心臓目掛け剣を突き立てる。
「くあっ!? ……まだだ、貴様ら全員殺してやる!!」
そう叫んだグルドは身体中から黒い光を漏れ出させながら力を溜める。
「早く離れろ!?」
レイドは冒険者としての勘からそれが危険だと判断し素早く身を引く。
だがエレオノは一人。
「まだ! まだあぁぁ!」
誰もが素早く避難する中、一人グルドに突き刺した剣に更に力を込めていく。
「グファッ!」
グルドが呻き両手で剣を押し戻して行く。
「グファッ! 貴様らごときに負けるかぁ!」
「エレオノしっかりささえていて!」
ウインドブラストを最大出力で足に展開しながら飛び上がり、某ライダーの必殺キックの様に、エレオノが支える剣の柄を思いきり蹴り付ける。
その瞬間、私の足の先に絶大な風の爆発が起こり、飛び蹴りで蹴られた剣は大した抵抗もなくグルドの身体を貫いた。
「グギァァァァォオァアォオ!!」
すべての力を使いきりウインドブラストの爆風に吹き飛ばされる私達。
その私にグルドは貫かれた身体で近づいて来る。
「お、おま、えさえグファッ! いなければぁ、……こんな事にはぁ……貴様だけはぁぁここで……殺す!」
「ちがうな。私だけじゃない。あんたはいろんなにんげんたちを、じぶんよりしたのれっとうしゅとあなどった。それが、あんたがわたしにまけるりゆうだ」
「ゴブリンふぜいがぁぉあ!?」
最後の力を振り絞り私に攻撃を仕掛けるグルド。
しかし攻撃が私に達する瞬間───。
「エレオノォォ!」
私の声にようやくエレオノの存在に気がつくがもう遅い。
だから言ったろ。お前は私じゃ無くて私達に負けるんだ。
「ハアアアアア!」
私の叫びに呼応するように上がるエレオノの裂帛の声。
そう私は只の囮だよ!
エレオノだけは戦闘に参加していなかった為、皆よりまだ体力が残っている。
爆風からはアリシアが守り、アクアはストログをエレオノに掛けていた。
だから私はあんたの注意を引き付ける事にだけ集中してたんだ。
エレオノの渾身の一撃が鋼鉄を誇ったグルドの身体を両断する。
「がっ、ぐかぎぁ!」
その悲鳴を最後にグルドは倒れ動かなくなった。
【鑑定士】スキル失敗
グートルード
レベル:30
HP:0/3000
MP:1000/1500
〈マスター達の勝利です〉
「やった……やった……やった~!!」
「やた~! ゴブ!」
「……本当に私が」
喜ぶ二人に、自分の成し得た事に今更ながら驚くエレオノ。そんな仲間達の喜びの声を聞きながら私は目を閉じた。
▶ハクアのレベルが4に上がりました───。