レイド達と別れた私達は冒険者ギルドに向う。

「ここが冒険者ギルドですね」

「ゴブ～？」

　アクアはあんまり分かってないみたいだね。

　そんなアクアに癒されながら冒険者ギルドへ入って行く。

「いらっしゃいませ。エルム村冒険者ギルドへようこそ！　本日のご用件はなんでしょうか？」

　冒険者ギルドに入るなりいきなり出迎えられる。

　案内係さんかな？

「あの、冒険者登録をしたいんですけどどうすれば良いですか？」

　アリシアが案内係のお姉さん(仮)に話し掛けると、一瞬私達全員を眺め、また笑顔で案内してくれる。

　うん？

「あちらの受付で手続きが出来ます」

「ありがとうございます」

「……ありがと」

「ゴブッ」

　少し引っかかるものを感じながらも、お姉さんに案内された受け付けに行く。

「あのすいません。こちらで冒険者登録出来ると聞いたんですけど？」

「はい。冒険者登録ですね！　登録される方は貴女ですか？」

「はい。それと───」

「わたしたちふたりも」

「えっ！？　その、貴女だけではなく、……そちらのお二人もですか？」

「そう、なにかもんだいが？」

「いいえ、問題と言うか、その……お二人共かなり幼いようなので本当にお二人も冒険者登録を？」

「する」

「ゴブッ！」

「お願いします」

　上手く隠していたようだが、受け付けさんは仕方が無さそうにした後、手続きを始める。

「分かりました。では、こちらで試験を行いたいと思います。よろしいですか？」

　ナヌ！！　そんな話し聞いてないよ！

「あの、試験があるだなんて聞いていないんですが？」

「貴女は必要有りませんよ？　───ただこちらのお二人は、幼いようなので特別に試験を受けて頂く事になっています」

「ちいさいから？」

「はい、こちらも依頼者の方々からの、大切な依頼を斡旋しております。なのである程度の年齢の方は、登録料をお支払頂くだけですが、それよりも幼い方は、こちらで用意した試験を受けて頂く決まりになっております」

　なるほど、実力の無い子供はふるい落とすって訳か。

「それをうけずに、すむほうほうは？」

「ありません。ですが、もしモンスターを倒した事があるのなら、免除される可能性があります」

「かくにんほうほうは？」

「この交響珠こうきょうじゅと言うアイテムを使います」

　このアイテムは、この世界の一柱であるステータス神のティリスと交信し、ステータスを表記して貰えるアイテムらしい。

「また、ティリス様にはステータスだけでは無く、スキルや称号、そして討伐したモンスターの情報も教えて頂けます。それは公的な書類として絶対の信頼のあるものとなります」

　ふ～ん。なるほどね。それで倒したモンスターを表記して、書類にしてもらえば公的な書類として認めて貰えるのか。

「じゃあおねがい」

「では、この珠に触れて目を閉じて下さい」

　受付嬢さんに言われ私は珠に触れるすると頭の中に声が響く。

『初めましてハクアさん。私はステータス神のティリスです。よろしくお願いします』

　目を閉じた私の頭の中に茶髪ツインテの巨乳っ子が現れる。

　えっ！　なんかこの女神すごい腰低いんだけど！

『ちゃんと話しは通しておきましたby女神』

　うん、駄女神が初めて役立つ事したね。

『うわっ！？　凄い！　本当にあの先輩にそんな口訊けるだなんて。あの……先輩からお話は伺っています。えと、ハクアさんともう一人のアクアと言う子がゴブリンって、バレなきゃ良いんですよね？』

　うん。そうなんだけど、今はもう一つお願いあるんだ。

　そう言うと私は冒険者ギルドでの出来事をティリスに話す。

『分かりました！　今からカードに情報を書き込みますね！　　あっ、あと、この後やる予定のステータスの総合評価もついでにやっておきます。スキルは記載しますか？』

　この後の二人は記載して欲しいけど私のスキルはいいや、でもあの駄女神と違って仕事が早くて助かる。

『そんな事無いですよ。それに私、先輩にハクアさんの話を聞いてから、ずっと会って話をしたかったんですよ』

　私と？

『はい。先輩に話を聞いて私が見た所は、ちょうどホブゴブリンと戦う所で、腕を切られた状態から、少ない手札を有効に使って戦い、あの最後の攻撃なんて凄く格好良かったです！』

　なんかこんな手放しで褒められると照れる。

『私もすっかりハクアさんのファンになっちゃいました！　これからも頑張って下さい！　それと、私はステータス神なので、これからもちょくちょく会うでしょうから、これからもよろしくお願いします！　あっ、私の事はティリスって呼び捨てにして下さいね』

　そう言って頭を下げてくるティリスだが、取り敢えず女神を呼び捨てとか良いのかな？

『書き込み終わりましたよ。これでハクアさんがホブゴブリン達を倒したと証明出来ます。次のアクアも同じで良いんですよね？』

　うん、同じで良いよ。ありがと。またね。

『はい、また！』

　ティリスと挨拶を済ませ私は目を開ける。

「終わりましたか？」

　目を開けると受付嬢さんの横にハゲが増えていた───誰？

「初めましてお嬢さん。私はギルド長をやっている者だよ。済まないね。幼い子が二人も冒険者になりたいと言っているというので、珍しいなって来てしまったよ」

　ほう、このハゲがギルド長か。

「それでティリス様に書き込んで貰えたのかな？」

　私は頷きカードを渡す。カードを受け取った受付嬢さんは、鏡のような物にカードを差し込む。すると様々な文字と数字が出てくる。

何あの字？

　〈あれがこの世界の文字です〉

「これはそんな……ホブゴブリンを倒してる？　何かの間違いじゃ！？」

「いや、これはティリス様に書き込んで頂いたものだ、間違いはない。……だが信じられん」

　まぁ総合力の評価はGクラスだもんね、そりゃ信じられんわ。

　二人が信じられずに鏡を覗き込んでいると交響珠がいきなり輝き出す。

「これは、まさか」

「ど、どうなって？」

「なっなんですか？」

「ゴブッ！」

　皆が驚いているが私は逆に冷静になる。あぁ、確かにあれの後輩だ……。

『敬虔なる職員よ。私の名はステータス神ティリスです』

「「ティ、ティリス様‼︎」」

　ギルド職員が驚く、しかもなんか周りにも人だかりが出来てるし！

　て言うか、敬虔なる職員って言い方おかしくね？

　〈……気になるのはそこですか？　冒険者ギルドの職員は就職する時に、ステータス神であるティリス様に入信して信者になるんですよ〉

　なんで？

　〈交響珠を扱うにはティリス様の許可した者でないといけないので〉

　なるほど、だから信者＝職員な訳か。

『このハクアさんの戦歴は私が保証します！　この方達の冒険者登録をして差し上げなさい』

　なんて言うかこの世界の神って皆こんな感じなの？

『間違ってはないですby女神』

　〈大体合ってます〉

　本人＆一番冷静に物事判断できる人から嫌な肯定が！？

「ですがティリス様、年齢が一定に満たない者は原則試験を受ける決まりに……」

『それはなんの実績もない場合です。ハクアさん達は三人でとはいえホブゴブリンを倒し、実績も十分でしょう』

　笑顔で畳み掛けるティリス。職員は信じられない物を見るように私達を見る。アリシアも動揺しつつ私を見る。アクアは何も分からず私を見上げる。

　うん。皆してそんなに見んなや。

「はぁ～、ティリス？」

　その瞬間場が凍り付く。

「あっ、貴女！？　神ティリス様に向かって呼び捨てなんて───」

『なんですか？　ハクアさん？』

　あっ、ティリスが普通に対応してるから皆、滅茶苦茶驚いてる。

「とりあえずややこしくなるからハウス。ゴーホーム」

『流石に扱い酷くないですか！？』

「だいじょぶだから……ね？」

『うっ、分かりました。そうだハクアさんこれをあげます』

「なにこれ？」

「「それはっ！」」

　あれっ？　職員が驚いてる？

『このアクセサリはステイシアの腕輪と言って、装備する事で交響珠と同じ効果がある他、全属性に対して少しだけ耐性が上がります。ついでに物防も10上がるアイテムです』

　結構便利なアイテムだな。

『では、私は戻りますね。またお話ししましょうね』

　そう言って、最後まで名残り惜しそうに見てくる女神を見て、あれ？　この女神もしかして愛が重いタイプ？　と、何故か思った私。何故だろう。

「まぁきょうりょくしてくれてありがと。うでわもだいじにするよ」

　そう言うと何故か顔を赤らめて帰って行った。

　うん。何故だろう？

　〈……まぁ、そういう事と言っておきます〉

　いや、私、女なんだけどね！！　あ～、でも彼氏とかは興味無いや。ゲームのキャラも女の子の方が好きだし……あれ？　違うよ？　違う……よ……ね？

『冷たくしておいて最後に上げるとは恐ろしいby女神』

　本当にうるさいよ！！　つーかあんなに簡単に女神出てきて良いの！？

『良くないので後でシメておきますby女神』

　大変よろしくなかったらしい。そもそも女神がシメるってどうよ。私はティリスの無事を祈りつつ話を進める事にした。

「はなしつづけていい？」

「か、構わないが、ティリス様にあの態度。君は何者なんだ！？」

「とりあえずはなすきない」

「そうか、転生者はこの世界に来る前に女神様と謁見するらしいからな、恐らくその時の縁と言う所か」

「ノーコメント」

　まぁほとんど合ってるけどね。

「とりあえずこっちのふたりもそれ、やって」

　私がそう言うと受付嬢さんが、カクカクと頷きアイテムを用意する。

　あ～、スゲービビってる。まぁそうだよね？　女神が敬語使ってるのに私ため口だもんね。

　そんな事を考えていると二人共交信し終わったようだ。

「ふむ、ステータスは低いようだが……エルフのお嬢さんは魔法が得意だし、もう一人の子は回復魔法が使えるらしいから、これなら上手く立ち回れば、ホブゴブリンを倒す事も可能かもしれないな」

　まぁ、アクアが回復魔法使えるようになったのはこの間進化してからなんだけどね。言わないけど。

「ていあんがある」

「提案？」

「そう、ていあん、わたしたちがうけられるとうばつのしごとひとつちょうだい」

「何を言っているんだい？」

「しっぱいすればぼうけんしゃのしかくいらない、けど、せいこうしたら、ほうしゅうとしかくちょうだい」

「それが出来るとでも思うのかい？」

　ギルド長の試すような視線を受け、内心ドキドキしながら自分の推測を話す。

「おもうよ。あなたがきたってことは、あまりぜんれいがないルールってことでしょ？　めずらしいっていうくらいだから」

「そうだとしたら？」

「だとしたら、すぐにしけんをよういするのはムリなはず。それにこのへんは、さいきんゴブリンがすをつくってる、それをうけるにんげんはほしいでしょ？」

「どこでその情報を知ったんだい？」

「このうけつけにくるまえにみた」

　本当は、ヘルさんにあるか確かめて貰ったんだけどね。まぁそこまで言う義理はないしね？　さて！　畳み掛けよう。

「わたしたちがホブゴブリンをたおしたのは、ティリスのおすみつき。くわえてゴブリンたいじなんて、あんまりおカネにならなくて、しんじんがかえりうちにあうしごとは、あまりぎみでしょ」

　そう、ヘルさんに聞いたけど、この世界のゴブリンは弱いけど数が多く、皆ゴブリンごときと侮っているので、新人キラーと呼ばれるほどらしい。

新人が受けた場合の成功率は悪く、そこに女が混ざっていれば更に厄介な事になる。

　また中堅も昔に痛い目をみて、罠まで張ってくるゴブリンと好き好んで戦おうとは思わない、そのくせ繁殖力も高く依頼は尽きない。

　そんなゴブリン退治の依頼は何時でもあまっていて、放って置けば近くの村などの娘が拐われ、また、増えるので放置も出来ない、ギルドの悩みの種の依頼らしいんだよね。

「君達にゴブリン退治の依頼を任せろ……と？　失敗すればどうなるのか分かって言っているのかい？」

「わかってる。わたしたちがつかまれば、ゴブリンのかずがふえる。けど、ふえたらふえたで、いらいのランクもあがって、ぼうけんしゃがいらいをうけやすくもなるでしょ」

「分かった」

「ギルド長！？」

「ただし条件がある。君達は知らないだろうがはギルドには観測者と呼ばれる者がいる。彼らは依頼の正確さが定かではない時に調査するのが役目だ」

なるほど。

「その内の一人を君達の監視に付ける。そしてもし失敗した場合は、君達の救助を緊急依頼として発令し、その分の代金は利子を付けて君達に働いて返して貰う。それが条件だ」

　上手いな。私達が失敗しても緊急依頼として発令すれば金額が増えるから冒険者も受けやすくなる。

　しかも私達が成功してもギルドにとってはうれしいだけで、どっちに転んでもギルドに損は無いって事になる。

「それでいい」

「ゴブッ！」

「分かっているのかい？　もし働ける状態ですらなければ、救助に来た冒険者の所有になるか、奴隷として売られるしか無いんだぞ？」

　ギルド長のハゲが凄んで来るが、アリシアにとっては少し前に覚悟した事だし、私はそもそも負ける気が無いので関係ない。

　〈無駄に男らしいですね〉

　だから私、女なんだけどね！　ただ普通のゴブリンならアリシアの魔法で一発でしょ？

　〈まぁ、そうなんですが〉

「それでいい。すのばしょおしえて」

「ふう、分かった。それとまだ正式な冒険者ではないが、依頼を受けるなら……あそこの武器屋で初期支給品の武器を貰って来るといい」

　そんなのあるんだ？　私達受付で依頼を受け、武器屋のおじさんに話しかける。

「あの～」

「ああ、ギルド長から話しは聞いてるよ。随分無茶な提案をしたね」

「そうでもない」

「そうかい結構な自信だね。まぁ気を付けな。それで支給品の武器だったね。何が良いんだい？　一人一回しか貰えないからちゃんと考えな」

　おじさんは私達の事を心配しながら言ってくる。

　色々あるから試してみたいし、私のスキル的には前衛の格闘系だけど、ここは使いなれたナイフにしとこう、携帯しやすいから素手の格闘とも相性良いしね。

「ナイフで」

「私は何にしたら良いですか？」

　この世界、杖装備するとどうなるの？

　〈魔攻ステータスが上がります〉

「つえか、ゆみ……かな？」

だってエルフだしね。最近の作品では剣とかも使うけどやはりエルフと言ったらその二つ！

「では私は弓でお願いします。アクアも魔法タイプですし、私も通常の攻撃手段があれば。と、この間も思ったので」

　うん。実際今の所一番物攻強いからね。アリシアが魔法以外で攻撃に参加してくれるのはありがたい。ＭＰ節約にもなるしね。

　クイックイッと、アクアが袖口引っ張ってる。

　うん。ウチの子可愛い。マジ尊い。ではなくて。

「ゴブ～？」

　ああ、アクアも選んで欲しいのか。

「ゴブッゴブッ！」

「このこはつえで」

　アクアはこの中で一番物攻が低いけど、攻撃魔法使えるし、何より回復役として後衛ポジションだよね。

「ナイフと弓と杖で良いんだな」

　頷きそれぞれの武器をおじさんから手渡して貰う。

　さあ準備完了ゴブリン退治と行きますか！

　冒険者になるための第一歩がまたゴブリン、もしかして私、ゴブリンに呪われてる？　───そう思わずには居られなかった。