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第6話 消化してからは反則だ!

 狙い通り罠に掛かった獲物をボコボコと、何度も殴り仕留めると声が聞こえた。


 ▶ゴブ子のレベルが2になりました。

 HPが70に上がりました。

 MPが35に上がりました。

 物攻が4に上がりました。

 物防が4に上がりました。

 魔攻が5に上がりました。

 魔防が5に上がりました。

 敏捷が10に上がりました。

 知恵が105に上がりました。

 器用が55に上がりました。

 スキル【野性LV.1】習得しました。

 スキル【罠師LV.1】習得しました。

 スキル【言語LV.1】習得しました。

 スキルポイントを5獲得しました。


 スキル確認から数時間、狩りを続けてレベルが上がりました!


 ただ一つ言いたい! RPGかよ!! 何このゲームみたいな仕様、あの駄女神共どんだけ気合い入れてふざけた世界作ったの!?


 〈お怒りの理由は解らないでもないですが。取り敢えず習得したスキルの説明に入りたいと思います〉


 流された!? くっ、流石クールビューティー風、宜しくお願いします!!


 〈分かりました。それでは先ず【野性】ですが。これは、動物やモンスターを狩る事で熟練度を上げられます。効果は気配や罠の有無などに気が付くようになります〉


 おっ、便利! レベルが上がればよりはっきりと分かるような感じだね!


 〈その通りです。次の【罠師】は、罠を仕掛ける事で熟練度を上げられるようです。効果は罠を仕掛ける際の効率上昇、不発確率低下、罠の隠蔽率上昇の確率系スキルです〉


 これも地味に便利だな。穴掘ったりするの結構時間掛かるし不発しなくなるのも嬉しい。それに隠蔽率上昇って事は獲物がかかりやすいって事でもあるしね。


 〈そうですね。【言語】は魔物専用スキルですね。元々喋れない生物が喋れるようになった時発現するようです〉


 へぇー、じゃあ他のゴブリンもレベルが上がれば喋れるようになったりするのかな?


 〈いえ、習得には知恵のパラメータが必要なのであの巣の中ではゴブゑくらいしか今のところ可能性は無さそうです〉


 そうか、別に良いけどね。でもゴブゑとは話してみたいかも? よし、せっかくだから喋ってみよう!


「──あ……い……うぅ…………え、お」


 なんか凄く疲れるんだけど何これ?


 〈レベルが低いからですね。レベルが上がってくれば普通に喋れるようになります〉


 まあ、別に私喋るの苦手だから良いんだけどね。


 レベルが上がって予想外にスキルが増えたのに喜びつつ。今日捕れた獲物を持って巣へと帰る。


 途中、昨日の夜に食事として出てきた木の実を発見した。意外に美味しかったし大量に実っているので、お腹が空いていたのもあり摘んで食べる。


 ゴブゑは食べないのかな?


「ギギ」


 食べないの? と、言うニュアンスを込めて木の実を差し出すが首を振っている。どうやら要らないようだ。


 結構美味しいのに? まぁいいか。うん、この舌にピリッと来るのがいい感じ。そう思いながらパクついていると──。


 ▶スキル【マヒ耐性LV.1】習得しました。


 はぁっ?


 〈どうやらその木の実、弱いですが食べるとマヒするようですね。調べてみたところ苦い筈なのですが苦くなかったですか?〉


 いや、むしろ少し甘いくらいでしたから!? ハッ! まさかこれが【喰吸】のなんでも美味しく食べる効果?


 〈恐らくそうでしょう〉


 ウゥ、確かに耐性が増えるのは嬉しいけど! まさか、初日から毒食わされていたとは!! ゴブリン怖い!!


 〈因みに果物の方には弱毒が入っていたようです〉


 本当に毒しか食べていなかった!


 などという事実を知り私はブルーになりながら巣へと帰るのであった。


「ギギ! ギー!」


 巣へ帰り私とゴブゑの寝床に帰ると。またゴブゑが抱き付いてきた。いきなりだとやっぱりちょっと恐い。


 〈いい加減慣れてください。見ているこちらが少し可哀想になってきます〉


 また怒られてしまった。まあ、自業自得だけど──。


 けど、私自身もそうだけどメスのゴブリンは普通のゴブリンと違って人間みたいに髪が生えてるのに、顔だけ物語とかで醜悪とか言われてるゴブリン顔だから普通より違和感が半端無いんだよな。


 〈言っていることは分かりますが。慣れるように努力してあげて下さい。マスターと同じで進化出来なければ寿命で死んでしまうんですから〉


 そう、ゴブゑって私と同じ状況でしかも少し早く産まれてるんだよね。


 あれ? そういえばゴブリンのメスって皆私達と似た境遇なんだよね?


 〈はい、そうですがそれがどうかしましたか?〉


 いや? 狩りしてわかったけど、たとえ状況が少し変わっても進化なんてほとんど絶望的なんじゃない? 他のメスゴブリンってどれくらいの確率で進化出来るの?


 〈…………〉


 あれ? ヘルさん? もしもーし?


 〈……マスターそれを聞いてしまいますか?〉


 えっ、何この返しなんか怖いんですけど!? でも、今後の為には聞いておかないとなんだよね。


 〈分かりました。マスターがそこまでおっしゃるなら答えましょう。メスゴブリンが進化出来るのは全体の1%です〉


 うわ、思った以上に低い!


 〈しかも、何故か進化したメスゴブリンは同じ巣にいるゴブリンに殺されてしまうので、今のアースガルドに進化した個体は居ません〉


 なんですと? なんで進化したら同じ巣のゴブリンに殺されるの!?


 〈それが分からないのです。こればかりは女神様ですら理由が分かりません〉


 それじゃぁ、ヘルさんが分からないのも無理ないね。何せ自称神である駄女神ですら分からないんだから。


 〈お役に立てず申し訳ありません〉


 ううん、充分役に立ったよ。やっぱり私は早い段階で、このゴブリンの巣から逃げ出さないといけないって、事がわかっただけでも収穫だ。


 〈私もそれには賛成です。でも、その為には色々準備をしないと多勢に無勢で直ぐに捕まってしまいます〉


 まあ、その時の為に普段から少しずつ用意をしないとね?


 〈ええ、微力ながら協力します〉


 ヘルさんとそんな話をしていると食事係の奴隷が私達のご飯を運んでくる。


「ギギ? ギー♪」


 ゴブゑが肉の入ったスープを見て喜んでる。


 流石に十五匹も捕まえてきただけあって私達にもお肉が回って来たようだ。因みにヘルさん、これ兎の肉だよね?


 〈ここまで細かいと流石に【鑑定士】のスキルでも分からないようですね〉


 うーん。嫌な予感がしたけどまぁいいか、他に肉なんて無いしね。どうせここで生きる為には例えモンスターの肉でも食べなきゃなんだし。いただきまーす。


 こうして私達は産まれて初めての肉に舌鼓をうった。


 ──そしてニ時間程たった頃……。


 ▶【喰吸】のスキルが発動しました。

【弓のコツLV.1】を習得しました。

【風魔法のコツLV.1】を習得しました。


 ──はぁっ!? どうしてこんなスキルが上がるの? 心当たりなんてさっきの肉しか?


 そこまで思って私は肉の正体に気が付いた。それと同時に意識が遠退き目の前が暗くなる中私は消化してからは反則だっ!! と、心の中で叫びながら前世も含めて産まれて初めて食事で気を失ったのだった。

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


 あれから7日。


 産まれてから10日経ち、今のところ人生の三分の一の時間が過ぎ去った。


 物質的なお袋の味を味わった事で食事に対する忌避感は大分薄まり、今では最初に出されたマヒの実も毒の果物も、耐性を上げるついでにおやつ代わりとして食べている。


 ……ええ、もう怖い物なんてありませんとも。


 〈7日間食べていましたから大分耐性が上がりましたね〉


 そう、この7日で私のスキルは大分上がったんだけどどれくらい上がったんだっけ?


 〈今上がったスキルを表示します〉


【喰吸LV.1→LV.2】【鑑定士LV.1→LV.2】

【魔物調教LV.1→LV.3】【野生LV.1→LV.2】

【罠師LV.1→LV.3】【マヒ耐性LV.1→LV.3】

【毒耐性LV.1→LV.2】【言語LV.1→LV.2】


 う~ん、自分でやったとはいえ本当に結構上がってるな。


 因みに新しいスキルの【弓のコツ】【風魔法のコツ】は、レベルに応じて命中率と威力に補正がかかるスキルらしい。


 〈レベルも3になった事でステータスが少し上がりましたね〉


  名前:白亜改めゴブ子

 レベル:2→3

  性別:女

  年齢:10日

  種族:ミニゴブリン

  HP:70→90

  MP:35→45

  物攻:4→6

  物防:4→6

  魔攻:5→8

  魔防:5→8

  敏捷:10→13

  知恵:105→110

  器用:55→65

  運 :20→20


  名前:ゴブゑ

 レベル:2→3

  性別:女

  年齢:11日

  種族:ミニゴブリン

  HP:60→70

  MP:80→100

  物攻:2 →3

  物防:1 →2

  魔攻:10→15

  魔防:10→15

  敏捷:5 →8

  知恵:50→60

  器用:30→40

  運 :10→15

 スキル:【風魔法LV.1】【言語理解LV.1(新)】


 うん、私もだけどゴブゑもかなり上がったね。でも、もうこれ魔法一択のステータスだよね絶対!! しかも、スキルも増えてるし!


 〈この【言語理解】は恐らくマスターの【言語】の熟練度上げを聞いていた、お陰でしょう〉


 ああ、なるほど。でも、このままのペースだとやっぱり寿命までに間に合いそうにないね。


 〈合間を見て準備を進めていますが、相手の規模とこちらの戦力を考えると、実行に移すまで最低でも後10日は欲しいところですね〉


 うん、そんな所だね。何せ実行の時にはゴブゑにも手伝ってもらう予定だけど準備は私一人だからやっぱり時間が掛かるよ。


 でも、ゴブリン達の動きによってはこっちも行動に移さなくちゃだからなるべく静かに素早くやろう。


 〈了解です。こちらも少しずつ調べておきます〉


 この一週間で大分色々な事も分かった。


 まず、私達のいるゴブリンの巣にはリーダー格のホブゴブリンが一体、ゴブリンソルジャーが三体、普通のゴブリンが六体いるらしい。他にはコボルトという犬のような種族の奴隷が一体いるらしいのだが。


 ヘルさん曰くこれはいざとなれば逃げ出すから心配は要らないらしい。


 〈私のスキルが役立って良かったです〉


 そう、この情報は全てヘルさんのスキル【俯瞰LV.1】のお蔭だった。実は私がレベル3になった時、ヘルさんのこの【俯瞰】スキルが増えたらしい。


 これは私を中心に上から覗き込むように全体を見る事ができるスキルなんだそうだ。


 〈それでも油断は出来ません〉


 そうなんだよね。


 数でも圧倒的に負けているのにその上一回進化したのが三匹、二回進化したのが一匹いる。


 これは相当策を練らなければ、ワンサイドゲームになるよね? なにか状況を変える要素があれば良いんだすけど、そんなものそんな簡単に出てこないしな~。


 ゴブ子寿命まで後20日

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