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第5話 ミニゴブちゃんゲットだぜ!

 人間、やろうと思えばどんな状況にも慣れるものである。


 今ゴブリンだけどな! 


 三日目にして動物を追いかけ回し捕まえるのにもなれた頃、私はそんな事を考える。


〈既に昨日の倍取れていますからね〉


 そう、昨日はたったの三匹しか取れなかったのに今はもう六匹目である。


 まあ、その理由はあそこで兎を前に喜んでいるゴブゑのお蔭でもあるけどね。


「ギッ、ギー、ギッ」


〈……昨日の狩りでは罠の意味が分かっていませんでしたからね〉


 そう、ゴブリンは知能が低い。


 そんなゴブリンでも成長すれば多少の罠や、自分達を討伐しに来た冒険者達を嵌めるくらいできる。


 でも、ゴブゑは産まれたばかりでそんな知能や、狩りに参加したことも無いので、その辺が全く分かっていなかった。


〈たった一日で動きがかなり効率的になりました。正直、昨日は自分から罠に突っ込んでいくばかりでしたなので〉


 確かに昨日は罠に嵌めるよりも嵌まる方が多かったのに。今日は見違える程動きが良くなっていた。


 私が見ている事に気が付いたのかゴブゑがまた抱き付き、嬉しそうに頭をグリグリと押し付けてくる。


 と、言うか本当になつかれたな。私。


 昨日から事ある毎に抱き付いてくる。


 まあ直視しなければ子犬みたいかな?


〈……酷いこと言ってる自覚ありますかマスター?〉


 なんの事やら。


 ヘルさんとそんなやり取りをしながら、そろそろ次の獲物を追い込む為ゴブゑを引き離そうとすると、いきなり頭の中でヘルさん以外の声が響いた。


 ▶スキル熟練度が一定に達しました。スキル【魔物調教LV.1】を獲得しました。


 ……えぇ~!? な、なんで? なんで何にもしてないのに、スキルゲットしてるの? まあ嬉しいから喜ぶけどさ! ヒャッホイ!!


〈混乱して変なテンションになっていますが、どうやらこのスキルはモンスターと友好的に過ごす事で得られるようです。似たスキルで【魔物支配】がありますがそちらは、モンスターを倒さずに屈服させ続ける事で得られます〉


 どう違うの?


〈前者がモンスターの意思を維持したまま共に戦ってくれるのに対し。後者はモンスターの意思を縛り、無理矢理命令する事が出来ます〉


 ほうほう、つまりは前者が自由意思の代わりにどう動くのか分からなくて、後者は命令以外の行動をしないのか。


 でも、なんでそんな事分かるのヘルさん?


〈その通りです。理解が早くて助かります。私にも【全種族言語理解】【スキル大全】と言うスキルがあります〉


 どうやら前者はそのままの意味で【スキル大全】は、獲得したスキルの効果と熟練度の上げ方が分かるらしい。


 ただし、獲得したスキル以外の熟練度の上げ方は分からず。


 どんなスキルが存在しているのかは分かるが、目覚めの奇蹟の影響で私が取得したスキル以外の取得方法は分からないらしい。


 また私が【鑑定士】のスキルで鑑定した相手のスキルについても、効果は分かるが取得方法は分からないとの事。


 ふむ、やっぱり色々制約があるみたいね?


 これは一度自分のスキルについても検証した方が良さそうかもしれない。


〈そう思います〉


 早速自分のスキルについても調べる為、未だに抱き付いていたゴブゑに休憩しようという意味を込めて話しかける。


「グッ、ギギ?」


 私の言葉を聞いてゴブゑは頷き、休憩をするため離れたようだ。伝わったのは良いけど、相変わらず何故こんなので伝わるのか分からない。


 謎だ?


〈そこはなんとなくのニュアンスで⋯⋯〉


 適当だなぁ。それでいいのか異世界よ……。


 ……まぁいいか。じゃあ早速スキルの検証をしよう、まずはやっぱりこの【喰吸LV.1】でしょ。


 と、言う訳でヘルさん宜しくお願いします。


〈分かりました。【喰吸】は読んで字の如く、食した物の能力の一部を吸収する能力です〉


 食べた物の能力が高いと取得出来る量も増える。ただし注意点がニつ、一つは能力とは言ってもステータスには影響せず、どんなに食べても上がるのはスキルの熟練度だけ。


 ニつ目は食べて直ぐに効果が出る訳ではなく、食べた物を消化し終わった段階で能力を取得する。


 熟練度の上げ方は食べる事で、普通の食事でも上がるが、やはりモンスター等の方が上がるらしい。


〈また、昨日のような木の実や果物では基本上がりません。後、どんな物でも一定以上の美味しさで食べられるようです〉


 うそん! 食べたら直ぐに強くなるんじゃないの!? しかもステータスには影響無いって、私のこの貧ステじゃどんなスキルがあっても生き残れる気がしないんですが。


 もしかして私のステじゃほぼ無意味のごみスキルになってないか? しかも一番最後の地味な効果が一番活躍してるっぽい!?


〈かもしれません〉


 ヘルさんの無情な一言に私はまたも膝から崩れ落ちる。


 なんてこったい!


〈元気を出して下さい。私もマスターと一蓮托生です。マスターが死ぬ時が私の死ぬ時ですので〉


 あっ、はい。頑張らせて頂きます。


 私はヘルさんからの励ましの言葉と、微妙なプレッシャーを感じながら続きを促す。


 次の【鑑定士】これは私が思っている通りの物。


 レベルが高くなれば相手のステータスやスキル、称号等が見え、生物以外に使えばそれがどういった物なのかが分かる。


〈こちらもレベルが高くなれば、より詳しく分かります。熟練度の上げ方は色々な物を鑑定すれば上がります〉


 これは概ね予想通りか。まあ、これで予想と全く違ったら駄女神にキレるけど、これ使えば自分のHPとかMPって常に見えないかな?


〈出来ますよ。これでどうでしょう〉


 オォ! 視界の左上にHPとMPが! なんかゲームみたい。でも、私今スキル使ってないよね?


〈はい、マスターの知識から一番馴染み深い形で表示しました。スキルの方も使い魔とは言え、私はマスターと一心同体なので私の方で使えるようです〉


 おお、便利。


〈戦闘になった時、相手のステータスが読み取れるようなら、私の方でゲームのように相手の頭上にHPとMPを表示させます〉


 ヘルさんスゲー。ぱないっす! 流石声の感じがクールビューティーな出来る女系。有能な感が半端無い。


〈意味は分かりませんがありがとうございます。続いては先ほど取得した【魔物調教】ですが。これにはまず、魔物をテイムする必要があります〉


 やり方は対象となる魔物にスキルを使い、相手のモンスターが私を認めれば完了。


 通常はスキル使用後に弱らせなければいけないが、極稀にモンスターの方から服従を望む者もいるんだとか。


〈ゴブゑなどは恐らく弱らせなくてもテイム出来るでしょう。当然ですが、相手が自分よりも格上の場合はスキルを弾かれ、逆に襲い掛かってくるので気を付けて下さい〉


 そっか、じゃあ後で試してみようかな? と、いうより弾かれた場合が恐すぎるのですが!


〈それが良いでしょう。マスターの現状を考えれば仲間は多いに越した事はありませんし。さらにテイムしたモンスターは、マスターに分かりやすく言うとエディットする事が出来ます〉


 なんかテンション上がるワードが出たね。何が出来るの?


〈出来る事はモンスターのステータス管理と進化管理です〉


 前者は配下にしたモンスターの未習得スキルの熟練度を含む全ステータスを閲覧する事が出来る。


 ただし習得するまでは、どんな行動が熟練度習得になるかは分からず、その代わりその熟練度を上げるように命じておけば、自力で熟練度を上げるようになる。


 後者は進化時に複数の進化先、又はレベルがMAXになる前に進化可能な時、進化をさせるかどうかを選択できるらしい。


 ふむ、思ったよりも自由度高いかも? 


 でも現状一番使えるのが取得スキルよりも習得スキルな件について!! ガッテム私!! まあ使えるのがあるだけ良いけどさ。今の所この三つだけだよね?


〈いえ、後ニつ【魔法の片鱗】と【魔法のコツ】があります〉


 なにそれ、私知らないんだけど!? アナウンス聴き逃した?


〈マスターが最初から持っていたスキルです〉


 いや、私スキルニつしか取らなかった筈だけど?


〈……正確に言えば、マスターの母に当たるエルフから受け継いでます〉


 オウ、マザー……この世界のゴブリンの特性からいってあまり考えないようにしてたけどここで来たか~。聞くの怖いけどちなみに今ってどうなってるの?


〈今日の朝マスターが狩りに出る前に亡くなったようです〉


 ウゥ、後味悪い。どうしようもなかったとは言えやっぱり少し堪えるな。


〈気に病む必要は無いかと。先ほどマスターが言った通り、どうしようもありませんでした。これ以上地獄が続くよりも良かったとも言えます。この世界ではよくある不幸の一つです〉


 確かにそうかも知れない。それに私はまだ誰かを気にしていられる余裕が無いんだから切り替えないとな。


〈それが良いでしょう〉


 ちなみに先程のスキル【魔法の片鱗】は、全ての魔法熟練度の取得にレベル×2の補正が付くらしい。


【魔法のコツ】は、魔法を使う際MPの消費にレベル×1%の補正、効力にレベル×2%の補正が付く。


 熟練度の上げ方は魔法を使う事なので今は上げられないらしい。チクショウ。


 わりと役に立つスキルだね。でも、魔法を何も持ってない今の段階だとやっぱりごみスキルだった!!


〈今後を考えればあっても損はありません〉


 ヘルさんの慰めが心に染みる。ヤバい惚れそう!!


 そんなバカな事を考えているとゴブゑが近づいてきた。


 そうだ、今のうちに試してみるかな。私は【魔物調教】のスキルを心の中で念じる。


 ▶【魔物調教】をミニゴブリンに使用しました。


 ▶ミニゴブリンのゴブゑが貴方をマスターと認めました。

 スキル成功です。


「ギッ、ギギ、ギー」


 な、なんか、予想外に喜んでる! まあ、とりあえずミニゴブちゃんゲットだぜ!!


〈なんですかそれは?〉


 素で聞かれると照れるけど強いて言うなら様式美です! さて、それではゴブゑのステータスでも見てみるかな?


  名前:ゴブゑ

 レベル:2

  性別:女

  年齢:4日

  種族:ミニゴブリン

  HP:60

  MP:80

  物攻:2

  物防:1

  魔攻:10

  魔防:10

  速度:5

  知恵:50

  器用:30

  運 :10

  武器:無し

  魔法:風魔法LV.1(新)

  称号:眷属

 スキル:【風魔法LV.1(新)】


 ……おやっ? ゴブゑさんもしかして私より強い?


〈えぇ、魔法さえ使えれば確実に強いです〉


 嘘~!? 魔法さえ使えればってどういう事? って、いうかレベルなんで上がってるの!?


〈ミニゴブリンは魔法を覚えていても使えません。進化してミニゴブリンメイジかミニゴブリンシャーマンになればすぐに使えます〉


 どうやらゴブゑの魔法力の高さは、親の特性がステータスに出て、私はスキルに出たようだ。


〈レベルが上がったのは、マスターが動物の止めをゴブゑにさせていたので少ない経験値とはいえ入ったのでしょう〉


 私の価値のストップ安が止まらない!! 動物でも経験値入るなら自分でやれば良かった。


〈モンスターに比べれば微々たるものなので譲っているのかと思いました〉


 そんな余裕無かったよ!?


 それを知った私は動物狩りに精を出し帰るまでになんとかレベルを一つ上げた。

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