店ってやってると色んな人が来るんです。
特に多いのが営業です。ウォーターサーバーの営業とか、おしぼりの営業とか、結構たくさん来ます。どれも始めるつもりがないので、だいたいすぐ帰ってもらってたんですけど、先日ちょっと珍しい営業の人が来ました。
『スープ 外注しませんか』っていう営業だったんです。ご存じのように、スープに関しては、他店のどこよりもナーバスになってる私としては、ちょっと 興味が湧きました。(こだわっている訳ではない。単にナーバスになっているだけ)
世の中には、 ラーメンスープを 魂込めてに出してる店もあるわけなんですが、 チェーン展開をするにあたって、 そのスープを大量に作らなくちゃいけない時があるそうです。 そのタイミングでスープを外注するらしいんです。
今日来た会社は株式会社 暁食品というらしい。 ここの商売はちょっと興味深くて、ラーメンスープを渡すとそれを 味覚センサーで分析して、そのスープの味を再現するらしいんです。
いろんなこと考えるのは、やっぱり 私が自分の店のスープについて罪悪感があるからだと思います。 最近はまるみちゃんが来て、お店でインタビューして 行ったり、 彼女の YouTube 番組にうちの店が 何度も出てるし……。
なんか、まるみちゃんのファンとか まるみちゃんの動画を見て うちの店に来てみたいと思ってお客さんとか、インタビューされに来るお客さんとか増えてきたんですよね。
そのたびにスープの秘密がバレないか、ドキドキしてて、そして、まるみちゃんがうちのラーメンを褒めてくれるたびに、 私の罪悪感が ムクムクと 膨れ上がってきているんです。
私は罪悪感から 手作業でスープを作ることにしました。 今日はうちのスープと同じ味を、ちゃんとした材料を買ってきて 再現するというチャレンジです。 うまかっちゃんの袋には材料表に材料が書いてあるものから、 どんなものが使われているのか予想して 鶏ガラとか豚骨とか、 ネギとか玉ねぎとか色々なものを買ってきて 毎日毎日煮込んでみています。
まるみちゃんはそれを見て『まだ満足しないんすか!? 研究熱心スね! だから、こんなに美味しいラーメンができるんスね!」とか褒めてくれてますます。 罪悪感が跳ね上がってるんですけど……。
でも、その罪悪感から逃れるために 後付けで自分の店のスープを自分で再現しようとしています。 世のラーメン屋さんってスープ 作り大変ですね……。 自分でやってみて初めて実感しました。
私は毎日 粉 スープをお湯に溶くだけだったので、 全くこの苦労を経験したことがありませんでした。 いきなり店に出すわけじゃないから、そんなにたくさんのスープを煮出すわけじゃないけど、2~3杯分くらいののスープを作るっていうのは、 材料的に難しいので 10~ 20杯分ぐらいを煮だして、それでスープ お試しのスープを作ってみてる訳なんです。
全然 味が足りないです! 普通は何が入ってんのかなと思ってネットで調べたりして、豚骨スープの材料とか見てるんですけど、 自分でやっても全然 美味しいラーメンにならないです!
ちょっとお話は違うけど、 つい先日 千枚漬けを作ってみたんです。 ここに天然の味を付けようと思って昆布を買ってきたら、 かなり入れても 千枚漬け 美味しくならないんですよね。
そして、 その味に満足しなかった私は また同じ大根の残りを使って味の素を入れて 千枚漬けを作ってみたんです。 そしたら、 味の素 ちょっとしか入れてないのに昆布のやつより めちゃくちゃ美味しい! 何倍もうまいんですよね。
自分の舌が馬鹿になってるのかなって思ったけど、 そうじゃないんです。 やっぱり、味の素って旨味を凝縮したものなんです。 だから、ちょっと入れるだけでやっぱ美味しいんですよね。
そして、塩分とかもないんで本当に旨味だけを追加したい時に使うと効果的なんです。鶏がらスープ的な粉末を買ってくると、旨味も入ってるけど、塩も入っていて入れすぎると塩辛いんです。
塩分過多はどう考えても身体に悪いですよね。味の素はどうなのかって話はあるんですが、味の素は悪い物ではありません。少なくとも、自分が食べたいと思うものを店では出したいと思っています。
それと同じように、普通に材料買ってきて ラーメンスープ 作ろうと思ったら、すごい量の材料がいるし、 煮出すすのもすごく大変だし スープができたからと言って、美味しいとは限らないんです。
しかも、うちの場合 私のスープの味に ならないといけないんです。 要はうまかっちゃんのスープを個人で再現しないといけないんですよね。 ネットの情報なんか拾って試してみるけど、なかなか あの味は 出ないんです。
やっぱり、 食品メーカーの人ってすごいなと思いました。 それでも 1ヶ月もすれば 、そこそこのスープができたんです。 だけど、うまかっちゃんのスープには遠く及ばない。そこで、私の罪悪感は爆発してしまいました。
まるみちゃんと皇木さんにこのことを話そう。そして、もうラーメン屋をやめよう、って思ったのです。