今回の漫画賞に入選しなければ、親との約束で漫画家を諦めて家業を継がなければならない青年がいる。青年の名前は柘植内蔵(ツゲナイゾウ)という。
漫画賞の締め切りが近づいているので、分身の術が使える忍者に、原稿を仕上げる手伝いをさせようと内蔵は考えた。内蔵は忍者紹介所に電話をかけた。忍者紹介所のオペレーターによると、分身の術が使える忍者は出払っているが、分身の術と似たような術を使える忍者は派遣可能らしい。内蔵は分身の術と似たような術を使える忍者を派遣してもらった。
派遣された忍者の名前は増男(マスオ)という。増男は分裂の術を使い、2人になったがサイズが半分に縮んだ。
内蔵は指示を出した。
「増男Aにはベタ塗りを、増男Bには消しゴムかけをしてくれ」
その指示を聞いた2人の増男は不満そうな表情をしていた。内蔵は2人の増男に尋ねた。
「何か不満があるのか?」
2人の増男は同時に喋り始めた。
「オイラのことをAとかBとか呼ぶことが気に入らないよ。マスオ・デップとマスオ・スミスと呼び分けてほしいんだ」
内蔵は増男の言う通りにマスオ・デップとマスオ・スミスに呼び分けた。2人の増男は作業を終えたと報告した。
内蔵は増男が作業し終えた原稿を見た。そして内蔵はつい叫んでしまった。
「ふざけるなよ!」
増男は漫画内のセリフを「勇者様」から「増男様」に変えたり、漫画内の男性勇者に濃い化粧をさせたり、原稿を切り絵にしたり、やりたい放題していた。
増男は開き直った。
「分裂の術を使うとやる気が半分になるんだから、このくらい大目に見てよ」
内蔵は怒って忍者紹介所にまた電話をかけた。オペレータによると、分身の術が使える忍者が派遣できる状態になったらしい。内蔵は増男の代わりに分身の術が使える忍者を派遣してもらうことになった。
派遣された忍者の名前は、五郎(ゴロウ)という。五郎は5人に分身した。増男のときとは違い、五郎のサイズはそのままだ。
内蔵が指示した。
「ベタ塗りと消しゴム掛けをやってくれ」
「俺はプロ意識が高いから、やりたくない」
五郎は内蔵の指示を拒否した。内蔵が片眉を上げながら五郎に質問した。
「暗殺とか護衛の任務しかしたくないのか?」
五郎は言い放った。
「絵が下手なヤツのアシスタントにはなりたくない。あんたの就活の手伝いならできるよ」
内蔵の描いた絵はとんでもなく下手である。
内蔵は忍者紹介所にまたまた電話をかけた。今度は指示を確実に聞いてくれる忍者を派遣してくれるように内蔵はオペレーターに頼んだ。
派遣された忍者の名前は、正直(マサナオ)という。正直(マサナオ)は内蔵の指示通りに作業をこなした。 正直(マサナオ)は内蔵の描いた漫画に対して感想を述べた。
「あなたの漫画に賞を与える人間がいたら暗殺したいほど、残念な漫画だ」
その感想を聞いた内蔵は激怒した。内蔵は正直(マサナオ)を勢いよく殴った。
1ヶ月後に忍者紹介所から内蔵宛に請求書が来た。その請求書には、忍者派遣代3000円、漫画のアシスタント代1000円、サンドバッグ代100万円と書かれている。内蔵はサンドバッグ代が高額だったのでとても悔しがった。