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第10話 あの日の答え

 「そんで??」


 「そんで、とは?」


 「分かってるでしょ? 今自分が何を聞かれているかはさぁ?」


 ポテトをつまみながら、答えてみぃとばかりにポテトの端でクイクイっと話すのを促してくる空。お前はドラマの悪役かなんかなのか?


 「……はて?」


 「は?喋らないつもり?ここのステーキもう一個頼むよ?」


 脅し方が財布へのアタックとはなんともひどい。

 ちなみにこの女既にパスタとハンバーグとポテトをぺろりと平らげていたりする。


 「おまっ、まだ食うの?」


 俺を破産させる気か?


 「こんなん余裕だよ……それで?」


 「……それでというのは、あの写真の事…………でしょうか?」


 「うん。あれってストーリーだしその場で撮ったやつだよね? あの日あんた私と直前までゲームしてたよね。 それがどうしてああなったのかな?かな?」


 どうしてああなったんやろうなぁ(...( = =) トオイメ目

 まぁ十中八九公園で話してるときに写真とったんだろう。

 普通なら取らないし載せないでっていうけど、でも俺あの時ハッピーな飲み物飲んで幸せになってたからなぁ。


 「…………それでこんなかわいい女を待たせて、他の女と浮気、とは? これいったい?」


 自分のことこんな可愛いって言ったぞこの幼馴染。確かに見てくれは可愛いけど中身がなぁ……。まぁ言わないけど。

 渋々と説明する。


 「コンビニにエナドリ買いに行くっていったやん? だからそもそもスマホ持ってってなかったんだよね。んでその途中であの人に会って軽く話さない?っていわれて気づいたら朝! 連絡できなかったよね。すまん!」


 本当はスマホもっててたけど!

 後正確には家のエレベーターで一ノ瀬さんと会ったんだけど。

 まぁそれは個人情報だし、家がお隣さんなことは言わない方がいいよなぁ流石に。

 なんかそんな気がする


 「連絡できなったのはまぁわかったよしょうがないね」


 幼馴染的にはひとまず満足した──


 「──でも私が連絡するまで連絡を返さなかった理由は?既読はしたよねぇぇ?」


 全然満足してなかった!!

 そうだよねぇ、気になるよね。


 「……えー、なんといいますか」


 素直に言ってもいいかな、って思った。

 なんと言ってもこの幼馴染はお互い同じ地方で一緒に上京してきた仲。

 というか、幼稚園、小中高、と全て一緒。

 なんなら大学まで一緒だからもう腐れ縁まである。

 四六時中一緒は言いすぎだけど、大学なんて仲良くなる人は限られる。


 話す時間は必然的に高校の時より多くなるしつるむ時間も増えてくる。

 そうなると、もうお互いの知らないところはほとんどない、みたいな感じなわけで。

 それに親同士もお互いのこと知っているからな。


 たまに両家族でご飯食べるときには、「お前らが結婚してくれたら、本当に家族になれるのになぁ」とか両親父がぼやいてたりもする。

 お互いの部屋も行き来するので、もう女友達、というより悪友くらいのノリだ。

 それつまりお互いに恋愛感情なんて持っていない、ということなんだけどね?。

 そんなのはもう言わずともわかる仲である。


だからお互いに恋愛感情を持っていないのは知ってるし恋愛事情も把握してる。

まぁ空は恋愛してなかったからあれだけど。

 空は俺の恋愛相談には親身になってきいてくれた。

 まぁ相談の甲斐なく結局別れたわけだけど。


 だからそんな空には一ノ瀬さんとの偽装彼氏のことも打ち明けてもいいなって思った。


 「実は、さ……」


 「うん」


 「俺あの人の……」


 「うん」



 偽装彼氏になったんだ……


 そう喉まで声が出かけた瞬間なぜか思い出した、数日前のことを。

 先日、一緒にゲームしてた時。そういえばこんなことを言われた。


 「実は……」



 ――【だから彼女出来ないんだぞ?】


 ――【でもわたしまぁまぁ可愛いし……控えめに言って。だから彼氏はいないけど告白はされてる。だから私は選択的ソロプレイ。んであんたは非選択的ソロプレイ。オナニスト。おーけー?】


 なんでこんなことを思いだしたんだろう。


 でもそれはそれとしてもノットオーケー!!!! 

 そういえば、こんなことを言われてたな!!

 選択的ソロプレイとか。オナニストだとか。


 ふむ、と一瞬考えて。


 ……うん。


 溜めて溜めて。



 「実は……」


 「はよいえ」


 ふっ焦れてるじれてる。

 待ちきれないようだねぇ?


 「実は……」


 「ためるねぇ、むかつくくらいに」


 ジト目の空。


 溜めて溜めて、開放!


 「俺一ノ瀬さんと付き合ってるんだよねぇあはは!」


 盛大にどやる。

 どやってやる!


 「……え」


 大して空は呆然とし、箸で持っていたポテトをぽとりと落とす。


 「驚きで物おとすのはテンプレだけど、あまりにもじゃない?」


 「え……本当に?」


 だが空は落としたポテトのことも気にならないほど動揺してくるのか、身を乗り出して聞いてくる。

 おっとあぶない、胸の谷間がお目見えしてるぞ?俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。


 「……ほ、ほんとだよ?」


 「あんな大学一綺麗な人が?あなんたなんかと? 頑張って平均よりもちょっと上位のあんたに?…………なぁぜなぁぜ??」


 最近若者に、はやりの動画風にあおりながら聞いてくる空。 かなりイラッとくるなこれ。


 「さぁ俺のあふれ出る魅力に、かな?」


 それに対して空は反応もせずぶつぶつと文句を言い始める。


 「…………え? またなの? また先を越されたの?」


 先を越された?ああそゆことね。

 ここはじゃあ……


 「ああすまん、非選択的オナリストではなくなったわ、あはは。選択的オナリストを気取っていたまえ!」


 煽りに煽っとく。

 まぁ偽装彼氏なんだけどね?


 そこで空はあっと、叫び頭を抱える。


 「っ!この間煽ったからかぁみすったぁっ!もういいや!一旦酒飲む!!」


 空は俺にまた先を越されたからか、呷るようにお酒を注文し始める。


 「っておい、お前まだ太陽出てるけど?」


 「はぁやってらんないときは飲むんだよ!あ、間違えた祝い酒祝い酒。あーやってらんな」


 こいつ、ここを居酒屋か何かと勘違いしてない?

 一応大学生にとっては高級店だぞ?


 あ本当にワイン頼みやがった。

 祝い酒じゃないじゃんやけ酒じゃんこれじゃ。


 「おいペース早くないか?」


 「はやくにゃーい」


 空の目がだんだんととろんとしてきてる。


 「祝い酒よ祝い酒、それでぇ??」


 ワインをくゆらせながら、指でツンツンしてくる。

 うわこれあれだ、絡み酒だ。

 昨日に引き続き今日もまた絡み酒かよ。

 祝い酒でやけ酒で絡み酒かぁ。



 「やったんか?おまえやったんか?おい」


 うわぁ空の眼が座ってるし。


 「おいこたえてみんしゃいこらぁ」


 声もだんだんと大きくなってきた。

 まずいなぁ。


 「やってないやってないから、まだそんな日にちたってないし」


 ……たぶん。


 「あ、なーんだ童貞は変わってないのかぁおけおけふんふーん♪」


 途端にうれしそうに笑い始める空。人の童貞でうれしそうにすなぁ!!

 空はワインをグングン飲み酒を空けていく。


 そのまま他愛もない雑談をし続ける。そういえば空とゆっくり話すのは久々な気がする。そんなひと時をすごし、ひと段落着いたところで


 「……払うよ?」


 「ありがとー、でも結構飲んだから3割くらいは払うわー」


 そのまま会計を払い千鳥足の彼女を家まで送る。

 気づけば日は完全に落ちていた。


 なんだかんだ結構いたんだな。


 「ほら着いたぞぉ」


 「うぃ、ありがとん」


 そうして、彼女を玄関まで送り、俺も帰ろうと背をむいた時──


 「ね、葵?」


 振り返ってみると、玄関のドアから顔をちょこんと出した空。


 「んー?」


 「どうせなら私で童貞、卒業しとく?」


 「……えっ」


 おもわず驚きに顔が固まる。


 「冗談だよバーカ」


 舌を軽く出し、小悪魔のような笑みをうかべドアを閉める空。


 「か、からかわれたっ!!」


 どうやら煽り過ぎたことのやり返しらしい。


 ったく。


 「かえるかぁ」



 ──────────────────────


 少し憤りながら帰る葵の後ろ姿。


 「ふふ最後の顔は面白かったなぁ……でもよかった私にもやっぱドキッとするんだねぇ」


 やけ酒のおかげで、彼に昔みたいに触ることが出来た。

 それに赤くなった顔もお酒のおかげでごまかせたし。


 …………やっぱ好きだなぁ。


 まぁあの鈍チンは全く気付いてないんだけど。


 「さーてこれからどうしよっかな」


 まだ希望はありそうだよね?


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