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02家庭を顧みたいが世界がそれを許さない

「クロウさん、なんでそんな詳しいんですか? なんかやってるんですか……?」


 回復したジャンポール君が慄きながら、僕に問いかける。


「ああ、ダウンのタヌー上王と組んで【ワンスモア】狩りをしていた。帝国内の拠点はかなり潰しておいたが、やはり魔物モドキは宇宙から跳ばしてきてるみたいだな」


 あっけらかんと僕はジャンポール君に返す。


「た、他国と……っ⁉ なんで俺たちに相談しないんですか!」


「おまえら僕に軍入れって言い出すだろ、ダウンは魔法族じゃないと軍務には付けないからね。時間に融通も効くし何の責任も負わなくていい」


 ジャンポール君の予想通りの反応に、用意していた回答を返す。


 利害関係もあるし、スキル再現とかその辺の話はビリーバーのタヌー氏の方が話は早いし法律とか倫理観をあまり気にしないからやりやすい。


「で? なんで今すぐ動かねえんだクロウ」


 ジャンポール君と話す僕に、バリィは苛つきながら問う。


「宇宙拠点にはこの星を回る周期があるんだ。今の時間だと拠点は星の裏側だからね、今グリオン君が帝国領内で『魔動ロケット』の発射準備を進めている。僕はそれに乗り込んで疑似加速付与で第一宇宙速度まで加速させて宇宙に飛び出す」


 僕ば淡々と答える。


 この準備に時間が掛かった。まあかなり突貫で急ピッチで進めてはいたし、ダウンの技術力は帝国に引けを取らないどころか局所的には帝国を超える。基礎的な技術力のモデルが異世界の知識だからね、魔力を科学的に使う研究は昔から行われてきている。


「定員は?」


「連れてかないぞバリィ、単純な戦闘だとおまえは弱すぎる」


 バリィの問いかけに、先回りして回答する。


 辛辣だが事実だ。

 バリィは単純な戦闘技量は低くはないが、全然高くもない。

 昔よりむしろ今の方が魔法使いとしては強いんだろうけど、それでも真正面から一対一でやり合ったらシロウにも劣る。

 まあそんな事態にさせないように策を弄するのがバリィの強さなんだが今回は足でまといだ。


「それに乗るんなら疑似加速を使える者に限られる。擬似加速付与に耐えられる必要があるからね。あ、ジャンポール君も連れてかないぞ。おまえはここからも起こる魔物モドキの氾濫を抑えろ、今魔物モドキに対抗できるのは魔物討伐経験値のあるおっさんとお姉さんだけだ」


 僕はバリィとジャンポール君に告げる。


 今回の魔物モドキの氾濫は小手調べだ。

 第二波、第三波と続くし苛烈になってくることは、捕らえた【ワンスモア】の輩から記憶読取の魔法で把握できている。

 どうにも人造魔物はかなりの種類を製造しており、『複製』のスキルや『増殖』のスキルでかなりの数を増やしているらしい。総数だけでいうなら【西の大討伐】を超える規模となるだろう。


「とりあえずバリィたちに協力してもらえ、それとキャミィに聞いて【西の大討伐】経験者を集めろ。帝国は優秀な人材が軍に集まっていたが、旧セブン公国はむしろ冒険者の中に優秀な人材が残っていたりするからな」


 そのまま僕はジャンポール君へと助言をしておく。


 旧公国はスキル至上主義だったため、実戦経験よりスキルの優劣を重視していたので野良の超絶技量を持つ人間がいたりする。まあトーンの町の冒険者がその最たる例だ。


「こっちは特殊任務攻略隊から何人か連れていく、あいつらはもれなく疑似加速が使えるからな」


 僕は勝手に軍の精鋭を利用することを宣言する。


 特殊任務攻略部隊は音楽隊のデュアル・ディアール率いる第三騎兵団の精鋭部隊だ。

 一応全員、疑似加速を習得している。二十年前の公国落としでディアールに疑似加速を教えたのをディアールが部下たちへと継承した。律儀に僕の家まで菓子折り持って継承しても良いか確認しに来たから知っていた。

 そんなディアールとの話の流れで何回か訓練を見たことがあるが、かなりの手練揃いである。


 そしてディアール以外は魔物討伐の経験はないので、このまま魔物モドキと戦わせるより連れて行った方が確実に活躍する。


「あ、シロウ君はどうでしょうか」


「連れてくわきゃあねえだろ、殺すぞジャンポール。シロウはクリアとパンドラちゃんの護衛に付けておけ、これ以上『無効化』で悲劇を起こさせるな」


 ジャンポールの馬鹿みてえな提案を却下する。


 我が子を宇宙空間にあるテロ組織の基地に連れてこうなんて親がいるか馬鹿、軍属はこれだから……僕は基本的な思想はかなり左というか国家なんか全然顧みない人間ってこと知ってるだろ。


 確かにシロウはここ二年でかなり使うようになった。『加速』の有無という違いはあれど、僕が二十歳の頃より基本スペックは上かもしれないが。


 例え僕より技量が上だったとしても自分の子を連れていく理由にはならない。そんなやつはいない。


 シロウはどうにもパンドラちゃんと良い感じらしいし、パンドラちゃんを守らせた方がいい。その時自分が居なかったなんてゴミみたいな後悔させる必要ない。


 しっかしパンドラちゃんか……いや超いい子でクリアにもよく似ている。

 だが、僕はパンドラちゃんの父であるクライス氏にとんでもなく嫌われている……いやまあ当然といえば当然なんだけども。二十年前に畳んだり半身を消し飛ばしたりしたし。


 彼はメリッサの仲間、なら僕は敵だ。

 うーん……謝って許されるなら全然謝るんだけど、かなり複雑なんだよな。

 メリッサとの和解か……、難しいよな。

 僕は悪で敵で、勝利者だ。僕が謝れるのは誤りを正された時だけ。


 まあ当人同士の話なわけだから親の云々は関係ないことだと少なくとも僕は思うんだけど……僕もセツナも親を殺してるし、そういうの関係なかったから正直その辺の重要性がわかってないんだよなぁ。


 シロウもパンドラちゃんも両親健在ってなると多少なりと付き合いとか大事にしたいよなぁ……。


 なんて息子の将来に対して思いを巡らせていると。


「だったらクロウさん、チャコを連れて行ってやってくれないか?」


 僕の思考を完全否定するようにブラキスはそう言った。


 いたんだけど。我が子を宇宙空間にあるテロ組織の基地に連れてこうなんて親が。


「ブラキス……本気で言ってんのか?」


 僕は慄きながら問い返す。


「チャコはライラちゃんと恋仲でさ、多分これを知ったらあいつは爆発する。しかも助けに行けないとなれば何をしでかすかわからない、ここは連れてってやった方がむしろ安全だ。クロウさんもいるしね」


 ブラキスは僕の問いにつらつらと答える。


 チャコールか……、いや確かに強いっぽいんだよな。

 そもそもブラキスの斧が振れて、あの賢者から魔法を学んでいるってだけでかなり使えるんだろうけど実戦経験に乏しい。


 競技選手としての優劣なんてものは実戦には何の役にも立たない。

 筋骨隆々の大男でも五歳の少女に頸動脈を斬られたら死ぬように、実戦における正義は狂気だ。


 健全に身体を鍛えただけでは、意味がない。


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