僕、クロウ・クロスは息子が軍に属する前にテロ組織【ワンスモア】を潰そうと奮闘しながら最近は若い女の子を鍛えていたりする主夫だ。
今日は全帝大会の準々決勝なので、シロウの試合以外も全部見たところで進捗確認のためにダウンへと跳んだ。
つまり、僕は試合後の準決勝進出選手インタビューを見ていなかった。その頃思いっきり外国でグリオン君と【ワンスモア】掃討作戦について話していた。
だから僕としては珍しく、遅れた。
帝国が【ワンスモア】による同時多発テロで大変なことになっていることに気付くこともなく、かなり出遅れた。
グリオン君の部下からの報告によって、事態を把握し自宅に戻ったら帝国軍から『画面付通信結晶』にとんでもない量のメッセージが届いていて。
バリィがリコーとブラキスと賢者を連れて、第三騎兵団本部を襲撃。
セツナとキャミィとエバー夫人を人質にとって暴れ散らかし、拉致されたライラ奪還の為に【ワンスモア】の情報を要求。
流石に血の気が引いた。
よりにもよってライラを……というかセツナも殺すだろ、バリィはやる。
しかも帝国軍は【ワンスモア】の全貌を把握しきれていない。
僕は着替える間もなく、そのまま第三騎兵団本部へと跳んで。
とりあえず完全降伏して、バリィを落ち着かせた。
本当に……本当にギリギリ間に合った。
第三騎兵団本部の待機人員の三分の一と、ジャンポール君がズタボロにされた程度の被害で抑えられた。
多分あと数分遅れていたらジャンポール君もちろんセツナたちも全員殺されて、僕がバリィたちを皆殺しにしなくてはならないところだった。
そしてもれなくそんな事態を引き起こした【ワンスモア】も帝国軍を殲滅して回ることになっただろう。
セツナを殺す世界を僕は許さない。
僕でこうならバリィはもっとだ、バリィの天秤の片側は家族で沈みきっている。何も載せても偏りは戻らない。
閑話休題……いやまあ閑話と言うほどズレてもないが。
落ち着きを見せたバリィに僕は語り出した。
「まず【ワンスモア】の目的はスキルや魔物やステータスウインドウの再現。そのために、スキルを持っていた人間を拉致して回っている」
僕は持ち合わせている情報をバリィたちと、キャミィに治療されているジャンポール君にも聞こえるように述べていく。
「スキルとはそもそも異世界転生者……ビリーバーたちが、自らの脳だけを回路として使ってこの星の魔力を用いて世界規模の魔法のようなかたちで実現していたサポートシステムだ」
語りを続ける。
この辺りの話はジャンポール君周りの兵やバリィはわかっていることだが、一応前提を語る。
まあでも端的にいかないとバリィが再燃する。
ちんたらもしてられない。
ここからは初出し情報だ。
「ビリーバーが造ったサポートシステムを【ワンスモア】は元々スキルを持っていた人間の脳を使って、再現を行っている」
僕の語りを続ける。
「しかしまだ不完全な再現で、一つのスキルを再現するのに一つの脳を使用し背中に装備して魔力を送り続けることによってスキルを使用している」
僕は【ワンスモア】の狂気を述べる。
昔、旧公国騎士団が『無効化』の少女の四肢を切り落として生存に必要な最低限の機能を残して箱に詰めて対人兵器として運用していたのに近い。
人間の脳を一つの回路として、スキルを発生させる装置にする狂気の技術だ。
「じゃあ……ライラは脳みそ抜かれる為に攫われたってのか……ッ」
話を聞いたバリィが怒りを滲ませて言う。
「その通りだが落ち着け、ライラが今すぐどうこうなることはない。『洗脳』や『催眠』を用いてスキル以外の記憶を溶かしてから『外科医』を用いて脳を摘出するので、最短でも数週間はかかる」
僕はバリィを落ち着かせるため、ダウンで【ワンスモア】から抜き取ったより具体的な情報を伝える。
「さらに脳を抜かれた死体は『死霊術師』だったりが魔物モドキの材料に使っているらしい。だから肉体的な性能の下がる拷問や、妊娠を伴うような性的な拷問も行われていないと考えられる」
追加してライラの無事に信憑性を持たせる情報を伝えるが。
「だから安心しろって言おうとしてんのかテメェ……っ」
「違う、だから僕が事情を話す程度の猶予があるってだけの話だ。僕より速く問題を解決出来るやつがこの世にいるのか? 落ち着け、目の前にいるのは僕だぞ」
話を聞いてバリィが目から黒い炎を揺らして言った言葉を即座に否定する。
そう猶予があるというだけの話だ。
でもこの猶予はライラ奪還のチャンスでもある。
しかし自分で言っといてなんだけど、正直僕は流石にこの問題を一人で解決出来るなんて思っちゃいない。
そもそもグリオン君やタヌー氏というか魔法国家ダウンに全面協力して貰って、結局【ワンスモア】の殲滅には至っていないのだから。
でも、バリィは僕を過剰に評価している。
疑似加速や消滅魔法や魔法融解を使えて、もっと若くて才能のあるやつだって多分いる。少なくともジャンポール君はもっとちゃんと鍛え続けていたら僕より優秀だっただろうし、弟子のリーシャ嬢もあと三年もすれば僕を超えてくるだろう。
僕が自信満々にしているだけで、バリィの溜飲が多少下がるのならそうするだけだ。
このまま話を続けよう。
「そして【ワンスモア】の本拠地は、
僕は【ワンスモア】の馬鹿げた場所にある拠点について述べる。
「ざっくり帝国の上を通るようにこの星をぐるりと秒速七キロメートル以上の速度で周回している。動き続けている為、長距離転移でも跳べない」
拠点の詳細について語る。
「これを知ってからセツナに頼んで宇宙空間でも活動可能な装備を開発して貰って、別口で拠点の軌道計算を行っていたからすぐには動けなかったんだ」
さらに僕が行ってきた準備についても語る。
セツナには【ワンスモア】絡みとは伝えてないが、かなりなんかあるとは思われつつも協力してくれた。魔動結社デイドリームが宇宙開発にも力を入れ始めたってのは中々に宣伝効果もあるしね。