私、リーシャ・ハッピーデイはチームセブンスバーナーに所属するいわゆるプロ戦闘競技者だ。
チームセブンスバーナーは【総合戦闘競技】のプロチームだ。一応、セブン地域では最大手で様々な企業からスポンサードも受けている。
所属人数も多く、訓練生も合わせればなかなかの大所帯なため選手層も厚い。
私はそのセブンスバーナーのナンバーツーだ。
もちろん本日行われる、セブン地域代表決定予選の出場権を獲得している。
出場枠は最大の五つ、つまり今日の予選にはセブンスバーナーの選手が私を含め五人は出場している。
二つのブロックにトーナメントを分けて、各ブロックの優勝者が本選に出場する。
理想としてはどちらのブロックの決勝戦を埋めてしまうことだが上手いこと各ブロックに二名三名で別れることが出来た。
以前は全帝本戦へのシード枠も持っていたが、一昨年と去年と立て続けにあのデカ乳女……鉄壁天使ライラ・バルーンにうちのエースであるバーニィと私が本戦一回戦で敗北を喫したことでシード枠を失った。
故にこの私や、うちのエースも予選に出場することになった。丁度よくブロックは別れたからそれは良いにしても。
ライラ・バルーンは本戦出場シード枠を持っているので予選には出場しない。何としても本戦に出向いて……。
恨みはらさでぶっ飛ばす。
ライラ・バルーンと私は同い年で学生時代からあらゆる大会でよく当たった。
戦績はわざわざ数えてない、それくらい大小様々な大会で戦ってきた。調べればわかるんだろうけど、いちいち覚えていられない。
でも、確実に言えるのは。
私がライラに負け越しているということだ。
ここ数年で完全に私は彼女に勝てなくなった。
身体が出来上がり、筋力や魔力量や色々な知識や魔力操作や身体操作が彼女の理想とするところに重なったんだろう。
巧みな盾捌きと狡猾な策略によって試合をコントロール出来るようになったライラは、止まらなかった。
そのまま彼女はあっという間にセブン地域で一番の選手となり、全帝大会でも快進撃を続け。
最高成績は全帝ベスト8。
しかも彼女は二度の全帝出場で二回とも優勝者にしか負けておらず、その二戦を事実上の決勝戦だったと評する声も多いほどだ。
何故そんなに伸びたのかを探るためにライラをこっそり尾行したこともあるけど、普通に平日を図書館司書として勤めて勤務終わりに少しトレーニングをして帰宅していた。
強いて気になることといえば、勤務中は伊達眼鏡をかけてお淑やかそうに猫かぶってたことくらいだけだ。
なんならトレーニング量だけでいうなら私の方が上だ。
才能……いや、そんなものは努力を努力と認識できてない抜けた奴か結果が出ないことに対する言い訳でしか使わない言葉だ。
だからこれは私の努力不足による差。
ああ腹ただしい……、ここまで差をつけられるなんて思わなかった。
私は彼女をライバルとして認めていた。
切磋琢磨し、確実に私たち二人はセブン地域における【総合戦闘競技】のレベルを引き上げた。
他にもうちのエースであるバーニィや、人形遣いのソフィアや、レイト流のショッテなど。
かなり優秀な選手が増えてきている中で、ライラは頭一つ抜き出てしまった。
単純に悔しい、そして情けない。
私は再び彼女のライバルにならなくてはならない。
立ち塞がるのはこの私でなければならない。
あのデカ乳盾女に、引導を渡すのはこの私だ。
必ず私は本戦に出場して、彼女をぶん殴ってぶっ飛ばす。
だが、しかし。
もう既に一回戦でセブンスバーナーのメンバーが一人敗退しているし、警戒していたショッテ・マーケンも敗退してしまっている。
かなり荒れ気味だ。なにかイレギュラーが紛れ込んでいる?
別のブロックの状況まではわからないけど、何やら一筋縄ではいかなそうな空気だ。
競技歴が長いと、なんとなくこういう空気は感じやすくなる。
まあでも、最終的には私とエースのバーニィが優勝することには変わらない。
誰であろうと、ぶっ飛ばすだけ。
私の異名は爆熱パンチャー、殴って燃やす。
「予選二回戦第二試合を開始しまーす。選手の方は第二格技場へお願いしまーす」
係員が私を呼ぶ。
二回戦の相手はチャコール・ポートマン……。
あの乳デカ天使が以前まで所属していたサウシス魔法学校戦闘部所属で初出場、異名はなし。
後輩たちに過去の戦績を調べさせたけど該当無し、今までどこの大会にも出たことがないということだ。
でも、一回戦であの鋼鉄プレッシャーのショッテ・マーケンを倒している。
試合を見ていた後輩から、戦いの様子を聞いたがショッテが煙幕を張ったために具体的な戦法は不明だが……どうやら瞬殺だったようだ。硬いことで有名なレイト流のエースを瞬殺……一体何をしたんだ?
サウシス魔法学校戦闘部は今のエースである絶対零度の異名を持つリカルド・トワイライトが事故で欠場することになり、出場するのは穴埋めの為の雑魚が出ると思っていたのでノーマークだったが……。
だが、ショッテは私でも倒せるであろう相手だ。むしろ近接格闘戦メインのレイト流と私ならかなり噛み合う。
何かはあるに決まっている。
何もない奴がこの大会に出てくるわけがないのだから。
「では西側、セブンスバーナー、リーシャ・ハッピーデイ選手」
係員に呼ばれ、私は入場すると。
「「「「ゴーゴーレッツゴー‼ レッツゴー‼ SBィ‼ ゴーゴーレッツゴー‼ レッツゴー‼ リーシャッ‼」」」」
会場中から応援コールが沸いて出る。
人気だけでいうなら私はセブンスバーナーで、いやセブン地域でナンバーワン。
可愛くて若くて強くて可愛いから当然なんだけど。ライラ・バルーンもなかなか人気だが、あれは巨乳好きの馬鹿共からの支持率があるだけだ。ちなみに私も胸は大きい方だ、ライラがデカすぎるだけで私も小さくはない。念の為。
「では東側、サウシス魔法学校戦闘部チャコール・ポートマン選手」
名前を呼ばれ、大男が会場を見渡すように恐る恐る入場してくる。
「わ……、すごい人気なんだな。僕も親父やおふくろに知らせておけばよかったかな……」
なんて呟いている。
大男とは聞いていたけど、思った以上の巨躯だ。二メーターくらいあるかもしれない。
恵まれた体格……近接火力特化か……? いや魔法学校の生徒に肉体派がいるわけがない、ああ見えて魔法使いのはずだ。あの学校は伝統的に体育会系が存在しない、ついに体育祭すら行われなくなり代わりに魔法祭なんて謎の行事にしてしまったくらいだ。
つまり私の