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超ブラックギルドのワンオペ職員が、ついに辞めた結果。Ⅱ
ラディ
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年10月19日
公開日
89,178文字
連載中
 ■毎週金/土/日/23時半更新(追加更新日有)


 世界に大きな変化が起きた【大変革】より二十年の後。
 それでも世界は続いたし、冒険者ギルドもあった。

 魔物と戦い人々を救うかつての冒険者に憧れた少年は田舎から飛び出した。

 しかし、小心者な少年は冒険者にはならず、ギルドの職員になってしまった。

 憧れて夢を見て焦がれた冒険者たちはおらず、現実に生きるのは怠惰な落伍者たちだった。

 それでも夢を捨てきれない少年は職員を続けて、やがて青年になった。

 しかし、青年の働くギルドはブラックどころか超ブラック。

 ワンオペで働き続けた青年は。
 ついに、辞めることにしたようだ。

 青年が辞めたことによる影響、辞めた青年の活躍による影響。
 影響は伝播し様々な影響を生む。

 その伝播して行く影響の果てにある、結果とは。


 本作は
 『超ブラックギルドのワンオペ職員が、ついに辞めた結果。』の続編となります!
 よろしければ前作も併せてお読みいただけると幸いです。

 ※閲覧モードは原稿モードを推奨、縦組み横組みは両対応しています。
 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

プロローグ

 この世界について少々聞いておくれ。


 とりあえず。

 まあ歴史の話というか、ちょっと前の話だ。


 この世界には、ほんの二十年前までスキルやらステータスウインドウやら人を襲う魔物とかいう怪物やら、わけのかわらない超常的なものがあったらしい。


 人々は魔物とやらと戦う為に神様だかなんだかに与えられた超人的な力を得られるスキルと、自身の色々な能力を根拠ゼロな謎の数値として把握して、そんなわけのわからんものを軸に生存して生活を行っていた。


 ……まあ、正直あまりピンとこない。


 僕の生まれるちょっと前に起こった【大変革】と呼ばれる原因不明の魔物やらスキルやらステータスウインドウの消失現象により、それらは完全に世界から失われた。


 つまり僕はその時代を知らない。


 親世代はがっつりスキルを用いて魔物とやらと激闘の日々を送っていたので、当時の話を聞くことはあったし授業でもわりと時間を使って【大変革】がもたらした混乱と、魔力との親和率が上がったことによる魔法革命やらは習ったけど。


 多分遠い未来では神話やおとぎ話として語り継がれることになる時代だった。


 まあ魔物は本当に脅威で、命の危機が今より身近だったしスキルやらステータスによる差別なども色濃くあった。魔物という脅威を理由に加虐性が容認されていた節があった。


 単純に世界は良くなったとする意見は多い。


 スキルという超人的な力やステータスウインドウという超常現象を失っても余りあるほど、魔物という脅威が消えたことは世界にとって有益なことだった。


 さらに当時は、魔物やらにこの星の魔力を吸われていて今より人々は魔法が上手く使えなかったけど星の魔力を取り戻したことで魔法学やら魔道具研究が飛躍的に伸びて生活水準は向上したし。


 まあそれでもスキル至上主義社会だったことを忘れられない大人たちもいたりして、なんかまだまだ二十余年程度では解決できない軋轢のようなものがあるけど。


 それでも世界は良くなった……と、


 いや、なんか含みのある言い方をしてしまっているけど僕は別に今の世の中に対して大きな不満はない。【大変革】の後に生まれ育った僕がスキル至上主義なわけもないし、両親も元々そういった思想を持っていなかった。


 でも…………、不謹慎なのはわかっているけど。


 僕は、そんなかつての世界。

 凶悪な魔物に超人的なスキルを用いて戦いの日々と冒険に明け暮れる生活に、憧れを持ってしまう。


 かつての世界を、面白そうなものだと思ってしまう。


 今の世界が酷く、つまらないものだと感じてしまうのだ。


 こんなものは相対的なものでしかなくて、実際昔は昔で文字通りの死活問題で必死だった現実を非現実のように憧れてしまうのは馬鹿なことだとわかっているけれども。


 それでも……。


 僕はこのつまらない世界で、最もつまらない仕事である冒険者ギルドの職員をしながら。


 そんなことを、考えてしまうのさ。

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