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第28話 (SS)25.5話 文化祭

 なにか勘違いされているかもしれんが、私はもともと「LOVEパワー~愛の力で魔王を倒せ~」の大ファンなんだよ。それこそ二次小説書くくらいにな。

 だからさ、彼らの事は嫌いじゃないんだ。ひどいことしているように見えるが、ざまぁかましてるんじゃないんだよ。強くするためにだな、手っ取り早く出来る事をやらせているだけだ。


 だからな、私に関するフラグは徹底的に無視するようにしているんだが、ヤツらの楽しい恋愛イベントは出来得る限り見ることが出来るように、日々気を使っているんだ。

 幸い、カップリングは一番ノーマルな組み合わせだったからな。あああああああちゃんには悪いと思っているが、あれは私のせいじゃないんだからな。


 いいぞ、2.5次元の舞台観ている様だぞ。皆さま本当に美男美女だからな。ウーリとケールの脳筋同士だって、あれはあれで眺めているだけなら「いいものを見た」って感じで拝めるんだ。


 そんな中で、三年生になった彼らは生徒会の重鎮として学園を仕切ることになったんだよ。私が鍛えたからな。仕事もできるようになっているぞ。もともと、イリーナ様とクール様は頭脳明晰キャラだから仕事はできる。カール王子の俺様も、見方によれば指導力があるということになるんだ。さすがゲーム補正。


 そんなキラキラした指導者たちが起こすイベント。それを見ない訳にはいかないではないか! 次のイベントは学園祭での男女逆転メイド・執事喫茶。もうよだれが……。一番端の席をリリア専用席として確保させよう。断られる? 断ったらどうなるかよく分かってるよ、彼らは。さ、今頃学園祭の出し物について会議しているころだ。ここもいいシーンあるのよね。平民のヒロインちゃんがメイド喫茶を提案するの。この世界にはないからね、メイド喫茶。だって、普通にメイドがいるし。


 プライドの高いイリーナ様が、「メイドなどわたくしができるはずないでしょう」と怒るんだけど、ヒロインのパートナー、今回はクール様か。

 クール様からたしなめられて、「でしたら執事でしたらやってもよろしくてよ。メイドは殿方が行ってくださいませ」って無茶振りしたのを、設定上売られた喧嘩を断れないカール王子とケール騎士団長子息が「「やってやるよ」」って男気見せてやることになるの。こんな名シーン見逃してられないわよね。



 ん? 静かだね。今から始まるところかな? 司会はクール様か。適材だね。


「では、今年の生徒会の出し物だが何か意見のある者は?」

「はい」


「はい、アンリさん」

「生徒会は、出し物などせず、なにかトラブルが起きた時に対処できるように生徒会室に待機していればいいと思います。ええ。何もしないのが一番です」


 あ、転生者だった。ちくしょう! カール王子とのイベント潰すつもりね。気持ちは分かるがそれは許さん!


「待て、あああああああ! 生徒会の出し物は伝統として行わなければならない!」


 頑張れ、カール王子。


「アンリですっ! 学園祭と浮かれていて、また入学式の時のようなことが起こったらどうするんですか!」


「その時は私に任せてもらおう!」


 私はドアを音が出るように思いっきり開けた。


「「「リリア!」」」


「私だってきちんとお前らを見ているんだ。いつも頑張っていることは知っている。勇者としての訓練、生徒会としての活躍。貴重な青春のきらめきを、他人のために働いているお前たちだ。学園祭くらいは学生らしく過ごしてもいいのではないか? 生徒会の出し物、全ての生徒が期待しているんだ。思いっきりやるがいいさ!」


 なんか驚かれているよ。何この空気。


「リリア様は反対するのかと思っていました」


 ん? エリーヌ様? まあそう見えるか。


「リリアのくせにいいこと言うわね」


 ウーリ、覚えとけ。


「そこまで期待されているのでしたら、行なわない訳にはいけませんわね」


 イリーナ様、やる気になっている。

 アンリさん、そんな目で睨んでも無駄だよ。


「だったらボアの丸焼きでもしましょう。学園の中央広場で、ボアを解体して、かまどを作って、くるくる回して焼き上げたら、そのまま販売するんです。この間、リリア様がやってくれましたよね。あれをやりましょう」


 なつかしいなあ。農高の学校祭では恒例だったんだよ。豚の丸焼き。盛り上がるよね、って、それこの平和な学園じゃダメ! 一般生徒引くから! こいつ、わざとだね。恋愛イベント潰す気満々じゃん!


「いいな、それ!」


 脳筋ケールが食いついた~!


「私達でしたらできますが、それはちょっとないのではないでしょうか。ねえ、イリーナ様」

「そうですわねえ、エリーヌ様。生徒会、いえ学園の品位に関わりますわね」


「俺達は冒険者としてこんなに頑張ってるとアピールできるな。よく言ったあああああああ!」


 カール王子! なんてことを!


「僕はちょっと嫌だな」

「私もキール王子と同じですね」


 キールとクールは反対。当たり前だね。


 まあ、アンリさんの気持ちも分からなくはない。しかし、私はイリーナ様の執事姿が見たい! キール王子のメイド服も! そうだ!


「それでしたら、執事&メイド喫茶などはいかがでしょうか。キール様とエリーヌ様。クール様とイリーナ様のパートナーで喫茶部、カール様とアンリさん、ケール様とウーリのパートナーで丸焼き。喫茶では、焼きボア肉のバーガーセットを出すのはいかがでしょうか?」


「私も喫茶部がいいわ!」

「ダメです。ウーリさん。パートナーは大切です! あなたはアンリさんと内蔵処理するように! アンリさん、これではどうですか?」


 アンリさんにこそっと耳打ちをした。


『王子とは離れられるでしょ。終わったら好きなもの食べさせてあげるから。魚醤で肉野菜炒めとか、そうそう天つゆっぽいのできたから、天ぷらも美味しいよ〜』


『天ぷら~?!』


 和食の力はすごいね。受け入れてもらえたよ!


「メイドなどわたくしができるはずないでしょう」


 あっ、フラグ立った。


「それでしたら、女性が執事、男性がメイドの格好で接客なさるのはいかがでしょうか?」


 アンリは言わなさそうだから、私が言ったよ。


「執事? それでしたらまだ……。ですが、キール様とケール様がメイド……? (素敵かもしれませんわね!)」

「キール様のメイド姿? (ステキ……)」


 あっ、腐ってる……。小声だから男子に聞こえて……ないよね。


「僕がメイド? いやだ」

「この私が? なぜだ」


「やれ! 根性入れ直そうか? 闘技場で話し合おうか。やると言うまでな」


「「やります」」


 そこでお嬢様二人が私に圧をかけているんだよ。逃れられるか? 私には無理だ! さあ、ちゃんとやるんだよ。楽しみ増えたな!



 当日。


 広場では、勇者の訓練を見られると大勢の人が集まった。グロテスクな解体も、見栄えの良い女性二人がやることで、勇者の過酷さと勇気を見せつけることができたみたいだ。丸太に突き刺されたボアが、クルクルと男子の手によって回される。


 良い匂いが広がっていく。表面の焼けた所から、少しづつ切り落とすと、アンリさんがレタスと共にパンに挟んでいく。それをウーリが喫茶室まで運ぶ。


 喫茶ではメイド姿の男子たちが廊下に並んでいる。

 可愛らしいキール王子と美女としか表現できんな、美女のクール様を中心に、生徒会の男子がお出迎え。整理券を渡しているね。一人10分だよ! 人多すぎ!


 私は喫茶室に入り、イリーナ様とエリーヌ様最終確認。凛々しいイリーナ様とショタなエリーヌ様。もう最高!


 キール王子とクール様が入ってきた。お互いパートナーに近づくと「頑張ろう」と挨拶をしてるよ!


 最高! よくやった私! このカップルを見たかったのよ!


 ああ、素晴らしい世界。LOVEパワー最高です!

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