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第20話 研究するよ!

 勇者パーティの訓練は、男子は格闘場のおかげでメイリに任せっきりで大丈夫になった。メイリと戦わせて実力差を見せつけ、逆らえないようにしたよ。

 その後は単純レベル上げ訓練。とは言っても実戦で体の動きを覚えたり筋力をつけたり、覚悟の強さを鍛えたりだけどね。ゲームみたいに経験値とかないからね。


 やることは簡単。闘技場に魔物を入れて、そこで戦わせるだけ。一角ウサギから始まって、ワイルドキャット、クレイジードック、どんどん強い魔物に変えていったよ。

 たまに見に行くと、血だらけの王子たちが、闘技場から出されるときれいな体に戻り、また強制的に闘技場に戻されている。システムいじった甲斐があったね。私天才だよ。


 女子には人体構造を学んでもらうよ。愛だの恋だのも大切だけど、医療として考えたほうが治すには効率いいからね。


「集まったみたいだし、始めましょう。今日は人体の構造、特に内蔵の役割と場所、色や形を勉強しましょう。魔法で治療するために、知っていないとイメージできませんから。皆さんの大切なお方を守り、治療するために、頑張って勉強しましょうね」


 優しく話したら、女生徒みんなは安心したのか緊張を解いた。


「まともな授業みたいですわね」

「キール様の治療のためです。私頑張る」

「リリアのことよ。きっとなにかあるに違いないわ!」


 おしゃべり始めたね。おや? あああああああちゃん、何か考えている?


「どうしました? あああ……」

「アンリです!」


 おおっと! アンリね。そうだよね。


「アンリさん、どうしました?」


「魔法って呪文唱えたらいいのではないのですか?」


 そう思うよね。違うのよ、私の日本語本の知識ではね。


「一般的にはそう言われています。しかし、もっと重要な事があるのです。なぜ、愛情が効果と結びつくのか、考えた人はいますか?」


 誰も考えてねーな。


「そこには、『大切な相手をなんとしてでも良くしたい』という思いが加わるからです。正しく言えば、『元の通りに戻したい』、というイメージがはっきりするからです。好きな相手の肌、顔、手足、その観察とイメージが明確であればあるほど、修復に役立つのです」


「「「なるほど」」」


「しかし、それは肌レベルの事。内臓がやられたら? 血管がやられたら? 愛の情報では足りないと思いませんか?」


「「「そうですね」」」


「だから人体の事を知らなければいけないのです。ここまではいいでしょうか?」


「「「はい」」」


 素直でよろしい。じゃあ大丈夫ね。


「では、今日はゴブリンの解剖をいたします。私の分も含めて五体あります。ゴブリンの体は、ほぼ人間と同じです。ナイフは私が研いでおきましたのでよく切れるようになっています。お気をつけ下さい」


「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」」」


 机に乗せられ運ばれてきたゴブリンの死体。さあ、楽しい解剖の始まりだよ〜!



 そんな感じで鍛えています。まあ、最初にあれだけ教えれば、あとはメイリとか騎士とか神父に任せていいよね。


 私は学園長から頂いた研究室で魔道具の研究を始めた。日本語魔導書シリーズの魔道具の巻。最高よね。お義父に引き取られてからは、魔道具を製作する場所がなくて読み込むことしかできなかった魔導書。自室で作ろうとしたら、メイド長にこっぴどく怒られたのよ。確かにあの部屋で魔物素材広げるのはダメよね。


 素材は金で買いあさった! 手に入らないものは自分で狩ってきた!

 様々な魔道具があるが、私が今一番欲しいのはコンロ。火力調整できるコンロだよ。


 薪のかまどは火加減が難しいのよ。特に弱火! 私の農高時代の腕前を発揮させるには、火加減自在なコンロが必要!やっと作れるチャンスが来たんだ。誰にも邪魔されずに研究するよ〜!



 夏休み前までかかったが、コンロは魔力を充填して熱に変える、IHクッキングヒーターみたいなものができた。


 さ、次は何作ろうかな? と、その前にクッキングヒーター作る時に、実験で試作したライターみたいなやつ。簡単に作れたけど、これを作っていたことにして提出するか。何も成果無しではダメだよね。

 とりあえず、学園長に持って行こっと。



「なんですか、これは! マッチとも違う火つけ棒は!」


 ライター、思いっきり驚かれているよ!


「これは、魔力を火に変える魔道具ですね。魔力なので、雨の中でもマッチみたいに湿気たりはしません。一度の魔力充填じゅうてんで200回ほど使用できます。付かなくなったらまた魔力を補給すればいいのです。便利ですよ」


「待て、何を言っているんだ? 魔力を充填? 魔力を火に変える? そんなこと出来るのか?」


 ここにあるじゃん! 魔法ってそういう事でしょ!


「ですから、こうして指先から火を出せますよね」


 指先位の火を出したら、学園長驚いたよ。こんなので驚くの⁈ あれ?


「なぜ火が出てるんだ? なんだそれは!」


 えっと、出来なかったっけ? 白魔法だけの設定って火も出せないの? 冒険者じゃ、私の火力有名なんだけど。ああ、騎士にはばれてないや。情報止まっているのね。


「え~とですね。研究の結果、魔力を火と水に変えることに成功しました。このくらいの小さなものですけど」


 やる気になればダンジョンの酸素燃やし尽くすこともできるけどね!


「いや、これは重大な新発見だ! しかもそれを道具として活用できるとは! 教授たちを呼べ! 集めろ! リリア、原理をまとめて提出しなさい! その前に教授たちに説明を!」


 あれ? ヤバい? どこまで説明しようかな? もしかしてやらかしたのか? この国の魔法ってどこまで遅れているの~!


 その後、ライター作りに翻弄されるとは思わなかったわ。高く売れたけどね。クッキングヒーター出さなくてよかったよ、ほんとに。


 いつの間にかライター充填係になってるよ。みんなできるようになろうよ!


 他の研究したいから、ライターはもう作らないっていったら微妙な顔されたよ。でもランプを作ったら納得してもらえた。ランプは50個しか作らないからね! なんで自分で作ろうとしないの、先生たち! レシピ高く売るって言っているのに! なんで読んでも分からないのよ!


 私は忙しいんだよ! 勇者たちの面倒見るのやめさせて~! それは無理ですか。そうですか。


 じゃあ、勇者たちを次のイベントに連れて行くから、魔道具作りはお休みねって言ったら残念そうな顔をされたよ。引き留めたってムダ! 体は一つしかないんだからね。


 本当は温度調節付きのオーブン作りたいのに! 野望は沢山あるんだよ!

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