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第18話 教育しましょう!

 私が指導者の最初の訓練日が来た。

 初日にシステム化してしまえば、楽になるよね。

 とりあえず、最初に上下関係はっきりさせよう。真っ赤な作業着を着て、私は彼らの前に立った。


「これから私の訓練を行う。いいか、男子と女子のバフやらなんやらは私は教えん。君たちも一から十まで私が教えるのでは息も付けないだろう。そこら辺は神父やら聖女らに教えてもらえ。適材適所と息抜きだ。それでいいか!」


 勇者パーティの皆さん、私に敵意むき出しだね。ま、あれだけやったらしゃーないや。義姉や王子が悪口吹き込んでいるだろうしね。


「私の事が嫌いか? いいぞ、嫌え嫌え! 最終的に私一人ぐらい全員で倒せなければ、魔族と戦っても討ち死にするだけだ。陰で言ってるんだろう? 黒目黒髪の悪魔だとかなんとか。知ってるぞ。なあ義姉のウーリ様」


 おやおや睨みつけられたよ。


「私を倒せるようになったら、訓練は終わりだ。どんな手を使っても、私に勝てたらいい。それまではお前らは私の生徒。しもべ扱いだ! 反抗しても良いが、やることはやってもらおう。体で分からせてやる!」


「な、なにをさせられますの? わたくし達に対して」


 イリーナ様が女子生徒代表で質問してきたよ。大丈夫。女子にはそこまで痛いことはさせないから。農高方式で意識変えればいいからね。


「戦闘訓練は主に男子。女子には自分の身を守るくらいは仕込もうと思っている。その代わり、女子には人体の仕組みを学んでもらおうと思う。いいかな?」


 ぽかんとしているよ。まあ、やってみればわかるからさ。


「まずは男子だな。ひたすら私とこの闘技場で戦うことも考えたのだが」


 のけ反って怖がっているよ。この間のが効いてるね。


「まあ、それは強くなってからだな。まずは魔物倒せるようになってもらおう。今回は簡単だから女子も参加な。カールとケール! ミニコカミニコカトリスくらい締めれるようになったのか? あの時はワーワーわめきながら逃げ回っていたよね。まさかしていないのか?」


 やってないな。ミニコカごとき締められないでなんで魔物倒せると思っているんだ?


「では、ウオーミングアップにミニコカ締めてみようか。カールとケールは経験者だ。見本見せてもらおう。ほら、首落としな」


 懐かしいな~。農高で一年生集めさせてニワトリ締めるの恒例行事なんだよね。大丈夫大丈夫。そのうち慣れるから。さ、やってもらおうか。


 私は、仕込んでおいたミニコカを渡した。とまどう二人。


「おいおいどうした? ミニコカなんぞ農家のガキでも絞められるぞ。ほらとっととやれ。それともお前たちが私から締められたいか?」


「「うわあぁぁぁぁぁぁ―――――――――」」


 私の声にビビったのか、ミニコカの首を掻き切ろうと切ろうとした。ケールはきちんと落とせたが、カール王子はミスった。ケールのミニコカの首から血が噴き出す。思わず手を離すと、反射反応で女子生徒たちの方にミニコカは駆け出していった。


「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」」」


尻もちをつき動けなくなる女生徒たち。首なしのミニコカが駆け去る。

王子の持っていたミニコカは、走り回って逃げる。捕まえろよ!


「男子ども、逃げるミニコカトリスを取り押さえろ。やらない奴は私と一騎打ちだ!」


 男どもに発破をかけ、ミニコカを追い回させる。そろそろいいか。私にむかってきたミニコカの首を、シャベルで両断した。


 またしても女子生徒の方に走っていったよ。首なしのミニコカ。あ~、女の子の服血だらけだね。髪とか大丈夫かな。

 っていうか、この話大丈夫かな。ほとんど離脱するんじゃね。

 こんなシーン書いていて、賞なんて取れるわけないよね。あれ? おかしいな。


 戻そう! とりあえず2羽分の肉はできた。


「よ~し。やり方は分かったかな。じゃあ、これから全員一羽ずつ締めてもらおう。女生徒の分もあるから、8羽用意している。一人一締め。カール王子とケールの分も新たに用意しているぞ。おまえら仲良く締めな。一人一締めだ! 終わった後は、羽のむしり方や、ツボ抜き、だからな、ケツから手を入れてだな、内臓を取る作業だ。そんなのが目白押しで待っているからな。時間かけるなよ。では……ヤレ!」


 最後だけドス利かせて言ってみたよ。闘技場の中に押し込んで、締めることが出来ないと出られないようにしたよ。あ~あ。泣いたって無駄なのに。お、さすが経験者、王子が出てきた。って馬鹿か! ケールを見習え! 他のやつにに教えているじゃないか! 経験者は下のものを導け。


 あ、イリーナ様が出てきた。それを見てウーリも。こういう時は女性の方が肝が据わっているわね。エリーヌはまだ泣いているけど、時間の問題ね。


 クールもなんとかできたか。お、やっとエリーヌ覚悟決めたね。三白眼で無感情になってる? 迷いがないなぁ。肝座ったみたいだね。

 クールもあきらめたか。雄たけびを上げてミニコカをヤッたね。


 キール王子とあああああああちゃんが最後に残ったよ。あ、ケールもさじを投げたか。出てきたね。


 あ~あ、ミニコカと言ってるミニコカトリス。それなりに攻撃力もあるのよ。つついてるつついてる。あ~あ、あああああああちゃん頭蹴られているよ。


「頑張るんだ『あああああああ』」


 王子が叫んだ。


「ほら、みんなも声を出して応援しろ!」


 熱血って嫌ね。でもまあ、好きにさせよう。面倒くさいから。


「頑張れ、キール王子」

「キール様、頑張って」

「キール王子、勢いです! グサッと行ってください」

「キール王子」

「キール王子」


 みんな、あああああああちゃんの名前を呼ぶのに躊躇したのか、キール王子の応援をしている。


「どうした! 誰か『あああああああ』の応援をするものはいないのか! 『あああああああ』が不憫だと思わないのか。もういい! 俺が一人でも応援してやる。待ってろ『あああああああ』。頑張れ『あああああああ』。思いっきりヤレ『あああああああ』。ほら、みんなも声をかけろ!」

 そこまで言われては声をかけない訳にはいかない。


「やれ、『あああああああ』」

「頑張りますのよ、『あああああああ』さん」

「頑張って! 『あああああああ』ちゃん」

「行くんだ。『あああああああ』!」


 あああああああちゃんの中で王子への憎しみの沸点が変わったのだろうか。水から岩石を溶かすマグマへと変わった沸点。熱量が跳ね上がる。そして、沸点に達した。そんな感じがした。


 あああああああちゃんは、ミニコカの首を一気に跳ね飛ばすと、もう一羽、キール王子のためのミニコカの首をつかみ上げ、何度も地面に叩きつけて撲殺した。


 空気が凍っているよ。あああああああちゃんの熱量は上がりまくっているのは、周りの熱を奪っているからなのか? あ、こっち来たよ。


「リリア様」

「はい」

「アンリと呼んでください」

「……は、はい。アンリ」


 こっわ~! 熱が奪われるよ~!


「ま、待て。お前はそれでいいのか『あああああああ』よ」


 やめろキール王子! なぜそこまでこだわるんだ!


「名は、名前は初めてのプレゼン……うぐっ!」


 『あああああああ』ちゃん、目だけで殺せそうよ!


「私はアンリ。いいですよね」


 撲殺されたミニコカを、にっこり笑いながら王子の目の前に突き出したよ。


「「「……はい」」」


 みんな、頷くしかなかったね。


 あ、キール王子、闘技場から出られなくなったよ。もう一羽放り込まないと、って気絶してるよ。どうしろっていうんだよ。このカオスな状況。いいや、終わろう。


「では、もっといろいろやりたかったが、最初の授業はこんなものでしょう。だが整理整頓までが授業だ。みんな仲良く、きっちりと片付けたまえ! 使用人の手は借りるんじゃねえぞ! 勇者なんてな、冒険者のまねごとが出来なけりゃいけないんだ! 自分の事は自分でこなす! 終わったら食堂にランチを用意させてもらった。全員食べきるように!」


 あああああああちゃん、じゃないや、アンリだけだね、片付けできるの。さすが平民ヒロインちゃん。でもなあ、所持品管理は基本中の基本だからな。


 それと今日のランチはミニコカ肉スペシャルよ。農高でも最初にニワトリ締めた時は昼食が鶏肉なのよ。そこ乗り越えないと食べられなくなるからね。おいしく食べられなくてもお残し禁止だからね。


 ポンコツなヤツらを見ながら、どう育てようかと真面目に考えてしまったよ。

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