私は、役に立つことを学びたいんだ!
小学校中学年程度の勉強なんて、今さら時間かけてやっている場合じゃないんだ。農高だったらなあ、実生活に役立つあれやこれやを学んでいられたんだ。
私がやりたいのはなぁ、実習と実験なんだよ! テストでいい点とることじゃないんだ!
おまけに、ド素人の勇者一行の
というような話を、学園長に話してみた。もちろん、取り
「勇者一行の訓練か、基礎学の授業時間自由な研究させてもらうか、どちらか選んでいただけませんでしょうか? せっかく学園に入りましたのに、これでは時間の浪費。勇者の育成などわたくしの責任ではないと思うのですが」
「リリア・ミスリル嬢。そうはいってもだな」
「わたくしのギルドカード。壊したのはここの教員ですよね。責任は上司である学園長にもかかってこないとも言えませんよね」
「「ふふふ」」」
あ~、学園長誤魔化そうとしているよ。どうしよっかな。と思ったら提案されたよ。
「試験をしようか」
「は?」
試験ですか?
「卒業試験で八割解けたら、確かに学ぶ必要などないだろう。その時は自由な学びをすることを認めよう。だが、勇者グループの育成は、責任をもって行ってもらう。いいな」
いきなり五年分だと⁉ 無茶じゃね? じゃあ育成やめさせよう。
「なぜ、新入生の女子学生が神の使徒様を育成出来ましょうか。学園には優秀な教師が、騎士団には立派な騎士たちがおられますのに」
「その教師をボコボコにしたのはお前だろ、リリア。性格はアレだが、優秀な教師だったんだぞ」
「優秀な教師がギルドカードを壊されたのでしょうか? 常識というものがわたくし分からなくなりましたわ」
「貴族と平民、特に冒険者の常識は違うからなあ」
それにしたって非常識だよ! まあ、ミスリルカードなんて発行されたことないからな。見た目が分からなかったか。いや、それにしてもあんまりだろう!
「育成は王命でもある。文句があるなら王にでも言いなさい」
「分かりました。学園長が許可したということを伝え、義理ではありますが兄妹として王に進言いたしますわ。学園長が直訴しろと仰いましたものね」
ぜ~んぶ、お前のせいにしてやろう!
「え? あっ」
動揺したってもう遅い! 私は立場上、王宮に入ることぐらいはできるのだよ。うはははははは。
「あ、あのリリア……様」
「ええ。お忘れかもしれませんが、わたくし先王の義理の娘ですから。王に会おうと思えばいつでも会えますのよ。とは言え、いつもでしたら王命になど逆らえぬ身。ですが、学園長が『文句があるなら王に言いなさい』と進言してくださいました。その言葉をそのまま王に伝え、学園長が王命を拒否しても良いとのお墨付きをわたくしに示されたとお伝えさせて頂きます。さすが教育者の鏡。生徒への愛を感じさせる素敵なご助言、ありがとうございました」
さ、さっさと言いに行こう! 出てっていいよね。
「ま、待て! いえ、お待ちください、リリア様」
はい? 今さらなんだ?
「学業に関しましては最大限、リリア様の意に添うように手配させて頂きます。ですから勇者育成は。勇者育成に関しては、ご助言とご助力ご鞭撻をなにとぞ、なにとぞお願いいたします」
ふむ。そこまで頭を下げられては致し方がないな。私だって
「基礎教育はわたくしは上級生にも引けを取らないと思っておりますわ。ですから専用の研究室を一つご用意して頂けるかしら。魔法防御がかかっているお部屋を望みますわ。私の研究は魔法を伴う危険なものですから。ですが、成功いたしましたら、この学園の名声を上げること間違いございませんわ」
「あ、ああ。用意しよう」
「それから、育成に関しましては効率を重視させて頂きます。とっとと育成して指導者辞めたいんだこっちは! あら、はしたなかったですわね。おほほほほ」
「な、なにをするつもりでしょうか?」
「どうってことはございませんわ。噂では神のご加護を頂けなかったとのこと」
「どこでそれを!」
「あら、仲が良い友のいないわたくしが知っておりますのよ。ほぼ全生徒が知っているのではないでしょうか」
青ざめてるよ、学園長。
「まあ、魔族どころかウサギ一匹狩れないでしょうから、悠長に構えているわけにはいけませんわ。勇者育成の失敗は学園長、あなたの失敗として末代まで語られるのでしょう? もちろん一族に汚名がかかりますよね。どうですか? わたくしに賭けるのは。協力しましょうよ。私は一刻も早くガキのお守りを辞めてーんだよ。グダグダ言わず私に全権移譲しやがれ! 悪いようにはしないさ。まあ、人格変わるかもしれんけどな」
ふふふふふとわざとらしく笑ってやったよ。
「な、なにをする気だ?」
「この学園の設備、全部調べさせてもらう。特に闘技場だな。あそこで何がどこまで出来るかで育成方法が変わる。使い物にならなければ、大怪我上等で実践だよ。上手く使えられたら怪我無く育成できるだろう。調べさせてもらえなければ実践一択! 無理やり前線にぶち込んで体で覚えてもらうしかないな。お綺麗な顔が傷だらけになろうと私には関係ないさ。私に協力しろというのはそういう事だ! そうやって強くなったんだからな、7歳の頃から。頼るものもなく使い物にならないメイド一人鍛えながらな」
「が……学園の設備については、教師立会いのもとであれば調べることを許そう」
当たり前だ! 使えるものは使い果たすぞ!
「私一人では手が足りない。私のメイドを補助に付けてもいいか」
「あ、ああ。その程度なら問題ない」
やったね、雑用はメイリに押し付けよう!
「わたくしも、王国の、ひいては世界の平安を願っていますのですよ。ぜひ勇者たちには魔族を滅ぼし、世界に平和をもたらして頂きたいと願っていますの。そのためには、信頼と協力は大切ですよね、学園長せ・ん・せ・い」
コクコクと首を縦に振り、同意を示してくれたよ。よかったね。お互い合意が出来たよ! よくやった私! ほら、学園長も納得したし、早速試してみましょうか。闘技場の鍵くれよ。ほれほれ。あと実験台どうしようか? 騎士の二三人借りれないかな。