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第14話 新入生代表なんてなるもんじゃないよね!

 私が新入生代表? なんで? 主席合格だから?

 それに家柄もいいし、ってさ、いいじゃん王子にやらせておけば。


 えっ、キール王子が5位で、カール王子が12位?

 2位が平民、あああああああちゃん⁈ 平民が代表はさすがに無理か。それに、


「新入生代表、あああああああさん、挨拶」


って、紹介されたら笑いが起きそうね。


 いやいや、人の名前を笑ってはいけません。なにか深い意味が込められているかもしれないよね。

 試験の時は、ついあんなこと言っちゃたけど、よくよく考えたら失礼ではあったわね。

 これがゲームの補正ってやつかな? カール王子は気に入ったみたいだったし、フラグ回収されたのか? 


 はいはい、挨拶すればいいんですね。新入生挨拶。

 ゲームでは、公爵令嬢のイリーナ様が挨拶してたわよね。私とあああああああちゃんが抜いちゃったてこと?  ごめん、見せ場奪った! ん、見せ場?


 そうだ、見せ場! 思い出した!


 新入生挨拶が行われている最中さなかに、魔物が現れイリーナが奪い去られるのよ。


 混乱する会場に、神の声が聞こえてくるの。


「この中に勇者になる者たちがいる、勇者たちよ、魔物をて。そのために我が力の一端を分け与える。行け」


 そうして神様は、メインキャラクターたちに力を与えたの。


 勇者として目覚めたメインキャラクターたちは、神の力で覚醒し、最初のバトルが行われるのよ。


 まあ神に選ばれた八人は、魔族を逃がしてしまうのだけど、そこから、短いけど歌が入って、RPG要素のシナリオを盛り上げるのよね。乙女ゲームとRPGの要素を兼ね備えていて、敵のレベルも選べるのよ。やり込むと難しさの選択肢が増えるから、私は鬼畜越して魔王レベルでやっていたわ。


 ストーリー的には、リリアは最初、イリーナの代わりにメインキャラクターに混ぜられるの。


 でも、救い出されたイリーナが神の力を受け取っていたせいで、彼女がメインキャラクターになったの。リリアはパーティから追い出されたんだけど、本当に強かったから、予備っぽい形でチームに混ぜさせられるのよね。勇者パーティは八人と決まったから。大人の都合ってやつに巻き込まれたの。


 そのせいで、勇者とも仲間とも呼ばれないことになるリリア。これが後のストーリーに影を落とすことになって、悪役令嬢と言われるようになるのよ。


 だから、今回は私が生徒代表だけど、ゲーム補正があるだろうから、イリーナ様が捕まることでしょう。私は原稿読み上げ係に徹しましょう。


 学園長室で挨拶の原稿を貰って、私は帰った。



 入園式。様々な挨拶が行われ、最後に新入生の挨拶を行う時間が来た。


「新入生代表、リリア・ミスリル」


 名前を呼ばれ、ステージ袖から演台まで歩くと、ざわざわと嫌な会話が始まった。


「黒髪」

「不吉」

「テストでドレス着て舐めきってたのに?」

「知ってる? あのこ平民泣かしていたのよ」

「あ~、王子に喧嘩売ってた」

「さ い て い」

「何であんな子が?」


 だから嫌だったんだよ。どうせ義姉がいらん事吹き込んだんだろうよ。

 いいや、さっさと原稿読もう。


「え~、本日はわたくしたち新入生に対して、このような式を開催して頂き誠にありがとうございます。私達新入生一同、学園の歴史と伝統に……」


 ガシャーンと天井近くの窓ガラスが割れた。ベルゼブブというハエの魔物が耳障りな音を立てて旋回していた。


 10歳児くらいのサイズ? うわ~、生徒の皆さんパニックになって走り出した! 危ないったらありゃしない!


 ハエ男はイリーナ様に向かって……、行くかと思ったらこっちに来たよ。真正面から私にむかってくるハエ男。気持ち悪いから右のこぶしで顔面を横殴りした。


 ドッゴ~ン!


 ステージの上手かみてに叩き落されるハエ男。背中を踏みつけ羽を引きちぎってやった。


 ギャャャァァァァァ―――――!


 転がりまわるハエ男。いくら手袋をしているとはいえ、これ以上触りたくない。そうだ!


 私はステージに飾られている学園旗を取ると、竿の先に着いた槍先でハエ男を何度となく突き刺した。


 グサッ! グサッ! グサッ! グサッ! グサッ!

 ウギャ! グエッ! ギャー! ………… …………


 静かになったか。


 私は確実に仕留めたことを確認すると、やり先に突き刺さったハエ男を高く掲げ、安心させるため皆に見せた。


「「「ヒ―――――」」」


 恐怖なのか悲鳴みたいな声があちらこちらで漏れている。大丈夫だよ。倒したから。良く見えないのかな?


 仕方がないので、学園旗を『ブンッ』と大きく振って、死体を生徒の近くに放った。


「「「ギャャャァァァァァ」」」


 感動の声が聞こえる。じゃあ挨拶を続けるか。


「新入生一同、これからは学問を学び、友情を育み、一人ひとりがすばらしい生徒として成長していくことを誓います。新入生代表、リリア・ミスリル」


 あれ? 途中かなり飛ばしたみたい。まあ、しょうがないよね。アクシデントもあったし、誰も聞いていないからいいや。お仕事終了! この場を去ろう!


 騎士団が来てハエ男を確認してる。先生方が生徒たちに落ち着くように言っている。


 ハエ男は運ばれ、騎士団と先生方が話し合っている。あれ? 来賓にいた義父様と王様が話をしている。まあ、あそこは本物の親子だからね。


 王様と学園長がステージに上がった。学園長が生徒たちに向かって話し始めた。


「みなさん。静粛に‼ 大丈夫、危機は去りました。思わぬアクシデントに見舞われましたが、ここから先の予定は滞りなく行えそうです。ここで、国王陛下より大切なお話があります。姿勢を正して傾聴しなさい」


 学園長~。傾聴けいちょうとか言っても伝わってないよ~。ぽかんとしているじゃん。


 でもまあ、大人しくなったからいいっか。あれ? 国王挨拶? そんな予定なかったよね。

 ああ、演台に国王がついたよ。私って、義父が前王だから、立場的に王と義兄妹になるのよね。王子達は甥っ子。……まあ、義理だからね!


「入学おめでとう。このような非常事態が起きたが、ここにいるリリアのおかげで魔物は退治された。けが人も無く、魔物も無事に退治できたのは幸いだった。諸君はこの経験を活かし、何事が起きてもあわてることなく適切に対処できるよう、学園で学ぶように。リリア・ミスリル、来なさい」


 え? 私指名? 怒られないよね。仕方がないから出ていったよ。


「リリア・ミスリル。よくやった! お前の働きで魔物の危機は去った。感謝する」


 王が感謝の言葉を発したよ! ほら、珍しすぎてみんな固まってるよ。


「後ほど報償を取らそう。未来ある貴族子女と学園を救ったんだ。当然であろう。もちろんパーティも開いてやる」

「はっ。ありがたき幸せです」


 面倒だからそんなことしなくていいのに。


「それから、ここに我が息子カール・ダイヤルビーとリリア・ミスリルとの婚約を結ぶこととする。王命である。カール、それとリリア。謹んで受けるように」


 は? え? なんで? よりにもよってカール王子!?


「嫌です~!」

「王命だ! お前みたいな者王家で取り込んでおかなければ危うい。何が何でも受けてもらうぞ」


 報償じゃなくて罰ゲームじゃん! 会場からお嬢様方の悲鳴が上がっているよ! 王子断って! 国外追放にして~!


「お前のような者、国外に追放して敵に回せるか!」


 私にだけ聞こえるように言いきったよ。学園長が閉会の言葉を言って式を無理やり終わらせた。生徒たちが誘導されて出ていったよ。


 あれ? そういえば神様の声って下りてこなかったよね。……まあ、イリーナ様連れていかれなかったからね。

 私のせい? フラグは折れたの? やった~! じゃないや、もっと悪い方に行っちゃったよ! どうなるんだこれから!

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