アリエッタ嬢は尋ねた。
私は真剣な顔で彼女を見つめた。
「そう、そこが謎なのよ。そのまま居座って国の実権を握ろうとかそういうことが無いの。ただ掻き回して、王太子の位置にあたる者を排除して、関わった者も排除して、自身は罰せられることもなく消えていく」
「では一体どうやって消えたんでしょう」
「私の時は判らなかったわ。だから正直、今度現れたら、聞いてみたい、という気持ちでもあるの」
私はそう彼女に説明した。
アリエッタ嬢は少しの間目を閉じ、考え込んでいた。
だがやがて美しい瞳を開くと、覚悟した様に。
「判りましたユグレナ様。できる限り殿下の周囲にその男爵令嬢を近寄らせない様に致します。ですがおそらく、ユグレナ様のおっしゃるその『何か』だった場合は」
「その場合は、殿下の気持ちがどう変わるか、をしっかり見据えていただきたいの。もしも殿下が貴女に相応しくない方だったら、それこそ先手を打たないと貴女が不幸になってしまいますよ」
「そうですね。私自身殿下の見極めを致します。皆様もそうですわね」
側近候補四人の婚約者達も、同様なのだということを理解したらしい。
*
断罪劇は本当に舞台の様だ。
その真ん中で現在アリエッタ嬢がよく通る声で殿下を問い詰めている。
「先ほどおっしゃった、私がマフィット嬢を虐めているという内容についてですが、正直何故私がそんなことをしなくてはならないのか判りません」
「何だと?」
殿下は顔に青筋を立てて怒る。
私と友人達はそろそろと前の方へと移動していく。
ピンク頭の顔の確認をしたいのだ。
「……どう?」
待って、観劇用の双眼鏡を……」
シェレスは帽子の中からそれを取りだした。
便利なことだ。
「……まあ」
そう言って彼女は私に双眼鏡を渡す。
視界にはまず殿下の胸ポケットが飛び込んできた。
違う違う。
その後で腕を掴んで、身体の割に豊満な胸を押しつけているピンク頭の方だ。
!
私は慌てて目を双眼鏡から外した。
「どうしたのユグレナ?」
ラヴィリスが問いかける。
「……今、視線が合った……」
「嫌、何それ怖い」
貸して、と今度はラヴィリスが双眼鏡をのぞいた。
「……え、何? 私の記憶が間違っていなければ、そっくりよね?」
「髪の毛のふわふわ度も、やたら大きな垂れ目も、肩が薄いのに大きな胸も」
……シェレス良く見ているわね……
「そんな、平然としているけど貴女、あれ本当にそっくりじゃない」
「そっくり――そうね」
「そうね、じゃないわよ」
そしてもう一度双眼鏡を貸してもらう。
やはり目が合う。
そして、口元が上がった。