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4 ピンク頭の消失と私の結婚

 さて。

 そこでおかしなことが起こる。


 この厄介ごとの中心に居たサフィン嬢はこの事件の後、いきなり姿を消してしまったのだ。


 彼女の保護者である男爵家――そう、彼女はそもそも男爵の庶子だったという。

 唐突にやってきて、庶子を証明するものを持ってきて、学校に行かせてくれ、と懇願したらしい。

 男爵にも覚えはあったので希望を叶えてやったのだという。

 この家は資産も中堅程度の下位貴族で、サフィン嬢に基礎教育を施す程度のことはしてやれたらしい。

 そして本妻も彼女について「何故か」受け容れてしまったのだという。

 本妻の子は未だ学校に行くには幼かったし、男子だったので立ち位置的には問題は無かったと言える。

 男爵は何故あっさり自分の娘と認めてしまったのか首を傾げた。

 そしてあんなことをしでかす様な娘には思えなかったと言っていた。

 周囲の評判も悪くなかった。

 ただサフィン嬢がすっとそこに入り込み、学校を掻き乱し、資質の無い王太子をあぶり出してしまった、とも考えられる。


 だったら何のために?


 さてそこから私は更に歴史に興味を持ち出した。

 何はともあれ私は王太子から婚約破棄されたことで傷物と見なされ、結婚話は来なくなった。

 友人達は次々に結婚していくし、心配してくれたが、私は時間ができたことを喜んだ。

 そしてその歴史について調べているうちに、「唐突に出現して周囲を掻き回すピンク色にも見える髪の少女」の存在が、あちこちの国の歴史にも見られることに気付いた。

 卒業後も私はエンドロール教授と交流があった。

 女子の更なる上の教育機関は無かったので、教授の存在は大きかった。


「なるほど、その視点は面白い」

「大概その少女は掻き回した後、姿を消してしまう、とあるのです」

「もっとその辺りを詰めたら、面白い事実が見つかるかもしれないな」


 そして私は時間があるのをいいことに、フィールドワークに出かけることにした。

 両親も色々諦めていたのか、もう女歴史学者にでもなるのだろうか、と考えていたらしい。

 だがそこで、エンドロール教授に、フィールドワークの同行者を紹介された。

 それが現在の私の夫、サモス・ラグドウィッジ男爵だ。

 私はサモスと近場のフィールドワークを進めるうち、次第に惹かれ合っていった。

 彼は中堅男爵家の次男坊だったが、両親は私が結婚できる、ということに喜び、祝福してくれた。

 家督は弟が継ぐ。

 私は歴史学者に嫁ぐ。

 それだけのことだったのだが。

 突然彼の兄が急死して、私達は結局男爵家を継ぐことになった。

 そこでフィールドワークもしつつ、領地経営もしていくという形になった。


「ユグレナが居てくれて本当に助かったよ」


 王太子妃教育がそういうところで役立つとは思わなかった。

 国の統治と領地の経営は違う。

 それでも基本は同じだった。

 私は主に領地管理をしつつ、時々必要にかられて長旅をする時に、フィールドワークを兼ねる日々を送る様になった。

 子供は、息子が三人生まれた。

 おそらく私は娘を育てるには向かないので、ちょうど良かったと思う。


 そして長男が学校を卒業する時に、それがまた起こったのだ。

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