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3 ピンク頭に興味の無かった私

 そう、当時私の父、グリンスティーン侯爵は副宰相、官僚実務の長だった。

 その上の宰相閣下は、その結果を国王陛下と相談する役割だと父から聞いていた。

 そして王太子妃教育の中でも散々王を頂点とした政府機構のことは学んできた。

 現在は王の権力が絶対ということではなく、むしろ王も一つの機関である、という考えが大勢を占めている。

 ただその中でこの学校自体の存在が変わらない。

 何故か。


 ――と、思いつつ三年間を過ごした卒業パーティ。


 いや、判っていたけど割と私は目を背けていたかもしれない。

 当時の王太子ラルモカナーン様はそこまで馬鹿ではない、と思いたかったのかもしれない。

 そしてピンクにも見える髪の少女に関しては、見ないふりをしていたのかもしれない。

 だからこう言ったのだ。


「私はそもそもその男爵令嬢と個人的に会ったことさえないですし、記憶にもございません」

「だがお前に罵声を浴びせられたと言ってたぞ」

「彼女かどうか判りませんが、男女の無闇な接触はマナーに反する、とはそれら当てはまる方には注意致しました」

「そうか、お前は下々の者に関しては区別ができない程自分が偉いと思っているんだな」

「私にはまだまだ知りたいことが沢山あります。成績はともかく私は別に全知全能ではございません。むしろその様にマナーを逸した接近が多いことの方が注意すべきことでは?」

「うるさい黙れ! そもそもお前は俺のことを常に見下していたろう!」

「そんなことは」

「お前の冷たい視線に比べ、このサフィンの優しさときたら! なあそうだろう?」


 そう言って彼は側近達に同意を求めた。

 サフィン嬢は王太子にすりより、腕と胸を押しつけている様に見えた。


「そう全く。現在のマナーというものはあまりにその辺りにゆとりが無いというか」

「サフィン嬢はそんな隔たりが我々のためにならない、と目を覚まさせてくれたんだ」

「そもそもこの国の上位貴族の女達は冷たすぎる」


 さてどうしたものか、と思ったので私はこう言った。


「婚約破棄は謹んでお受け致します。それでは失礼致します」


 だがそれだけで帰してくれなかった。


「待て! 出て行くならサフィンに謝罪をしろ!」

「謝罪?」

「嫌がらせの数々に対する謝罪だ」

「だから私はしておりません」

「言葉だけなら何とでもなる。それにサフィンがそう言っている」

「そちらこそ言葉だけで証拠はございませんでしょう? ともかく私は失礼致します」


 そしてパーティの途中でも、私はさっさと家に戻った。

 翌日、王宮からざっくり婚約破棄の通達が来て、家内は大騒ぎ。

 だけど両親は私のことをちゃんと判っていてくれたので、王太子の理不尽さにきちんと怒ってくれた。

 実際、王太子の行動は国王王妃両陛下からしてもおかしいと判断され、結果廃太子となり、すぐ下の弟君が少し時間を置いて立太子した。


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