それから何故か、シリアが本宅に呼ばれる様になりました。
マンダリンの様に。
私は訳が判りませんでした。
ですがそれでも、気をつけていれば、やがてそれがマンダリンにさせていたことの繰り返しということは気付けました。
そしてそれが毒に関わることだということも。
エリア様はシリアに対して冷ややかでした。
仕方がありません。
エリア様は公爵家の血を引く方。最初から私達を見る視線から、私達のことを家族だとは考えていないのは、判っておりましたし。
それは私にとってもマンダリンとシリアも同じはずでした。
だから、貴女があの二人に懐いていたとしても、そこは見逃すべきだったのです。
私は、母方はともかく男爵の娘ということで侯爵夫人となるべく呼ばれたのだから、と毅然としていれば良かったのです。
ですがその頃、私は本当に気持ちが切羽詰まっていたのです。
旦那様は本宅に呼んだから、とか食事を共にするから、と、普段の毎日を忙しくし、私の様子を見にくることもあまりありませんでした。
もう少しゆっくり、と言いたかったのです。
あの妊娠した時の様に、いきなり初めての出来事が毎日怒濤の様に頭に詰め込まれて行く、あの感覚。
お願い少しは休ませて、という気持ちで、頭の中がぐるぐるとしていました。
そこで楽しそうな貴女方を見てしまったのは…… 不運だったとしか言い様がありません。
イルド達と遊んでいる貴女を見ても何も思わなかったのに、マンダリンだけはどうしても腹が立ったのです。
時にはシリアと一緒に叱られていたここともありましたね。
たぶんあれが一番私にとって衝撃だったのです。
私は貴女を叱るということができない。
叱り方を知らない。
だけどマンダリンはそれを知っていて、貴女がそれに対し、ちゃんと泣きながらであっても納得してうなづいている。
旦那様に信頼されている部分があるというより、そこが一番大きかったのです。
貴女が取られてしまう、という気持ちが。
旦那様の用事はシリアに受け継がれました。
そしてそれに対し、シリアの表情が曇ることも気付いてはいました。
それでも、私自身には平穏が戻ってきました。
教育も終わり、侯爵夫人としての立場も慣れてきたし、貴女と過ごす時間も増えて。
シリアが食事やお茶の時間、家族の中に入り込んできたのも、私にはどうでもいいことでした。
貴女がシリアと仲がいいのも、それはそれで構わなかったのです。姉妹ですから。
矛盾しているとは思います。
たぶんシリアがマンダリンのしていた何か、毒に関わることを継がなくてはならなかったことに対し、私は少しばかり負い目があったのでしょう。