しかし、それを考えに入れれば。
エリアお姉様は中立的立場で、ある意味私を助けてくれているとも言える。
できれば外に――この家から出た方がいい。
そういう意味のことを言うならば。
まず、エリアお姉様は基本的に私というものに興味は無い。
ただ見ていれば面白い。
その程度の存在だ。
一方で、お父様に関してはおそらく憎んでいる。
先の奥様を毒殺したのではないか、とも考えているのだろう。
その真偽はどうあれ、お姉様はそう考えている。
と、なれば私達は立場はどうあれ、同じ敵を持つという点でお互いに不都合なことは起こさない、と言えるのではないだろうか。
問題はお母様だ。
私に対しては味方だろう。
だがお父様に対してはどうなんだろう。
これが今一つわからない。
私が子供だからというのが一番大きい。
何だかんだ行って夫婦なのだ。
その辺りの感情は、シリアお姉様と子爵に関係があったなどということすら寝耳に水な私には全くもって想像ができない。
その辺りで頭の中がぐだぐだになってしまったのか、いつの間にか眠ってしまった。
*
翌日、子爵がやってきた。
「何とか、一般的な処刑に使われる毒を入手することができました」
よかった、と私は手袋をはめた手でそれが入った瓶を受け取りほっとする。
「マリア様、さっそく」
メルダは待ち構えていたのか、瓶の蓋を開け、軽くにおいを嗅ぐとうなづき、行きましょう、と私をうながした。
私は子爵にまっすぐ向き合うと。
「ありがとうございます。ともかく早く分析と、毒消しを作りますが、いつまでにできないと……」
言葉を濁した。
シリアお姉様に渡す隙ができないことには。
「前日。前日の夜には案件が案件だけに、司法省が集い用意となります。彼女に毒消しを渡すなら、その前でないと」
「今日明日…… ですね」
「はい」
私達は真剣な顔でうなづきあった。
では、と子爵はまた職務に戻って行った。
私はメルダと共に、例の引き出しの部屋に籠もった。
メルダはやはり凄い。
いくら名札を貼り付けてあるからとはいえ、壁一杯、天井近くまである引き出しの細かい一つ一つの素材や薬の名を記憶、把握しているのだから。
そして少しずつの量を使い、私達は毒が何を使って作り出されたものなのか、調べることにした。
ただその時にこの短期間に集められたであろう、小さな動物が実験で次々に死んでいったのには…… 相当堪えたが。