「呼ばれて嫌という程ではなかったけど、進んで貴女のことを妹だ何だという気持ちも無かった、と言ったらいいいかしら」
そしてそうね、と軽く首を傾げると。
「貴女とシリアは間違い無く姉妹だと思うわ。実際そうだったでしょう?
そして貴女は今、シリアのためにどうにかしたいと思っている」
びく、と私は肩を震わせた。
「けど私はシリアも貴女も、死んだとしても何とも思わない。
ああ可哀想だな、と遠く感じる程度ね。
むしろお母様の実家の公爵家側の従姉妹の方が、よっぽど親しみがあるわ」
どう? と彼女は問いかける。
ショックを受けたのか、という意味なのだろう。
受けなかったと言ったら嘘になる。
だから私はこう彼女に告げた。
「私は貴女と姉妹のお付き合いをしたいとは思ってきました。……でもそのために格別の努力をしてきた訳でもない…… 何処かできっと、エリアお姉様、貴女は私のことを妹と思いたくないと思っていたんです」
「半分は当たっているわ。
妹とは思っている。
でもそれは頭で、血が繋がっている、という意味の妹ということだけ。
気持ちという意味では貴女はただの、今の夫人の娘に過ぎないの。
だからと言って格別嫌とか憎いとか追い出したいとかそういう気持ちは無い。
ただ単に、関心が無かったのよ」
「でも、私達の様子は眺めていたのですよね」
「ええ。私にとっては珍しい光景だから。
私はまず絶対しないことだろうから、それを楽しそうにしているところを眺めること自体は興味深かったわ」
「私達の住む世界はまるで違うということなんですね」
「そう。そこは私が私である以上譲れないところ。
私は公爵家の血を継ぐこの家の跡取りで、それ以下には絶対ならない。
なりたくもない。
それは貴女の母君も知っているはず」
確かに。
お母様は常に、エリアお姉様のことはお嬢様と呼んでいた。
あくまで自分より格上の存在として。
「さて、それではまた私は出かけなくてはならないわ。
何かとこの先のこの家のことで、公爵家の方と話し合いがあるのよ」
「公爵家の」
「貴女もこの先どうするのか、考えている? 考えていない訳は無いわね。ここのところの動きとしては」
「ええ」
「そちらの計画が上手くいくことを願っているわ」
「それでいいんですか?」
「たぶん、この件については私達の利害は一致するのではないかしら。少なくとも、私と貴女は」
「そう――ですね」
その中にお母様は存在しない。
それ以上を望むのは無理だろう。お母様は何だかんだ言って、先の奥様の後釜に座った女、だ。
エリアお姉様はずっとお母様のことは必要な時以外は殆ど無視していた。
そしてお父様に関しては。
私はそこに関しては考えない方が良いのだろう。警戒はしても。
シリアお姉様の件だけで所詮私の歳と能力では皆の手を借りてもぎりぎりなのだから。