出会ったことがあった。
王敦、粗暴で知られた男であったが、
周顗さんだけはどうにも苦手である。
出会うと顔がかっかぽっぽしてしまい、
まともに顔を向かい合わせられない。
だから自分の顔を扇子で隠し、
まともに顔が合わないようにしていた。
やがて
そんなこともしなくなった。
王敦は嘆息する。
「わしが進歩したのか、
それとも周顗殿が衰えられたのかな」
王大將軍在西朝時,見周侯輒扇障面不得住。後度江左,不能復爾。王歎曰:「不知我進,伯仁退?」
王大將軍の西朝に在りし時、周侯に見ゆるに、輒ち扇にて面を障し、住みたるを得ず。後に江左に度らば、復た爾る能わず。王は歎じて曰く:「知らず、我の進みたるかを、伯仁の退りたるかを」と。
(品藻12)
周顗さんは重んじられるか殺されるかのどちらかしかなかった、という感じですね。