夏侯玄、
仲が良かった。
陳本の自宅、その母を交えて、
夏侯玄が酒を飲んで楽しんでいたところ。
陳本の弟、
ろくに挨拶もせずにズカズカと
部屋の入り口に立った。
すると夏侯玄、顔色を変え、
やおら立ち上がる。
「同席は構わんがな、
礼無きものと交わるのは
まっぴらごめんだ」
夏侯泰初與廣陵陳本善。本與玄在本母前宴飲,本弟騫行還,徑入,至堂戶。泰初因起曰:「可得同,不可得而雜。」
夏侯泰初と廣陵の陳本は善し。本と玄は本が母の前に在りて宴飲す。本が弟の騫の行より還ぜるに、徑ちに入り、堂戶に至る。泰初は因りて起ちて曰く:「同ぜるは得るべかれど、雜えたるは得べからず」と。
(方正7)
夏侯玄
正始名士、その二。
陳本
異本では
陳騫
兄貴よりも大物で、のちに大司馬にまで上り詰めた。ここでもアニキとその友人とか言う、明らかに礼を尽くすべき相手に泰然としていて、異聞ではそれゆえに夏侯玄に気に入られた、と書かれている。こうした史実とのブレの中に、東晋末~劉宋初期の時代のひとたちが「彼らをどう扱いたいと思っていたか」のヒントがあると言えるのだろう。もちろん答えはない。遊べ。