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名士伝  冗談から名士伝

曹操そうそうのところで桓温かんおんに凄まれた袁宏えんこう

東晋とうしんで意外と重要な文人である。

と言うのも彼は、『名士伝めいしでん』を著している。

これは魏晋ぎしん時代の名士を著した書だ。


第一期「正始せいし名士」には

夏侯玄かこうげん何晏かあん王弼おうひつ


第二期「竹林名士」には

阮籍げんせき嵆康けいこう山涛さんとう尚秀しょうしゅう

劉伶りゅうれい阮咸げんかん王戎おうじゅう


第三期「中朝名士」には

裴楷はいかい楽広がくこう王衍おうえん庾敳ゆがい

王応おうおう阮瞻げんせん衛玠えいかい謝鯤しゃこん


をリストアップし、語っている。

そしてこの人物たちは世説新語でも、

かなり重要な存在感を放っている。



さて、この本には元ネタがあった。

元々袁宏、謝安しゃあんさまのお話を

まとめあげたのだ。


そこで謝安さまに見てもらいたいと思い、

本を持って謝安さまの元を訪問した。


本を見た謝安さま、楽しそうに笑う。


「確かに以前、この国が

 まだ中原にあった頃のことは語った。

 が、あれはほんの

 ジョークのようなものだったのだが。

 まさか袁宏君が、

 こうして本にしてくれるとはな!」




袁伯彥作名士傳成,見謝公。公笑曰:「我嘗與諸人道江北事,特作狡獪耳!彥伯遂以箸書。」


袁伯彥が作す名士傳の成れるに、謝公に見ゆ。公は笑いて曰く:「我れ、嘗て諸人と江北の事を道えど、特に狡獪を作せるのみ! 彥伯は遂に以て書を箸したるか」と。


(文學94)




正始名士、竹林名士、中朝名士。いやこのエピソードには全然出てこないんですが、後漢ごかんのところで党錮とうこの禁まわりの名士グループ、曹丕そうひの所で建安七子けんあんしちしが出てきたように、後の時代にも結構な名士グループがあったりします。そうしたグループを把握できていると、また見通しも取りやすくなってくるので、先んじてここで紹介します。


また、上掲の名士グループの他、



金谷会きんこくかい参加人物(賈謐かいつ二十四友+α)

 石崇せきすう歐陽建おうようけん潘岳はんがく陸機りくき陸雲りくうん繆征びゅうせい

 杜斌とひん摯虞しぐ諸葛詮しょかつせん王粹おうすい杜育といく鄒捷すうしょう

 左思さし崔基さいき劉瑰りゅうかい和郁わいく周恢しゅうかい牽秀けんしゅう

 陳眕ちんしん郭彰かくしょう許猛きょもう劉訥りゅうとつ劉輿りゅうよ劉琨りゅうこん

 蘇紹そしょう


兗州八伯えんしゅうはっぱく

 阮放げんほう郗鑒ちかん胡毋輔之こむほし卞壼べんこ

 蔡謨さいも阮孚げんふ劉綏りゅうすい羊曼ようまん


撫軍八哲ぶぐんはってつ(品藻36より)+2

 劉惔りゅうたん王濛おうもう桓温かんおん謝尚しゃしょう

 阮裕げんゆう袁喬えんきょう殷融いんゆう孫綽そんしゃく

 +支遁しとん許詢きょじゅん


桓温幕佐かんおんばくさ(文学80箋疏より)

 習鑿齒しゅうさくし・袁宏・謝安・王坦之おうたんし

 孫盛そんせい孟嘉もうか王珣おうしゅん羅友らゆう

 郗超ちちょう伏滔ふくとう謝奕しゃえき顧愷之こがいし

 王徽之おうきし謝玄しゃげん羅含らごん范汪はんおう

 郝隆かくりゅう車胤しゃいん韓康かんこう


蘭亭会らんていかい参加人物 四十三名

・二首以上書けた人物

 王羲之おうぎし謝安しゃあん謝萬しゃまん孫綽そんしゃく徐豐之じょほうし

 孫統そんとう王彬之おうりんし王凝之おうぎょうし王肅之おうしゅくし王徽之おうきし

 袁嶠之えんきょうし

・一首のみ書けた人物

 郄曇ちどん王豐之おうほうし華茂かも庾友ゆゆう虞説ぐせつ魏滂ぎぼう

 謝繹しゃしゃく庾藴ゆうん曹茂之そうもし曹華そうか柏偉はくい

 王元之おうげんし王藴おううん王渙之おうかんし孫嗣そんし

・一首も書けずに酒飲まされた人たち

 謝瑰しゃかい卞迪べんちゅう丘旄きゅうし王獻之おうけんし楊模ようも孔熾こうし

 劉密りゅうみつ虞谷ぐや勞夷ろうい后綿こうめん華耆かき任凝じんぎょう

 謝藤しゃとう呂系りょけい呂本りょほん曹諲そういん


みたいな集団がいます。こうした人物も、ある程度塊で紹介できると良さそうですね。

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