目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
孔融2  孔融の息子たち

孔融こうゆうには二人の息子がいた。

ひとりが六歳、ひとりが五歳。


ある昼の日、孔融が昼間に

うたた寝をしていた時のこと。


小さいほうの子が書斎に忍び込み、

孔融の酒を盗み飲んだ。


この様子を見咎めた兄は言う。


「お前、飲んでみたいって

 言うのは仕方ない。

 けど、酒は拝してから

 飲むべきだろう。

 どうして拝しなかった?」


すると弟は言う。


「盗み飲みですから、そもそもにして

 礼に適っておりませんでしょう!」



そして、その、三年後。

孔融が曹操そうそうに捕まった。

この事態を受け、

孔融に連なる人々は畏れ、怯えた。


が、二人の子供たちは平然としたもの。

二人して釘打ち遊びに興じていた。


孔融は、使者に言っていた。


「どうか、罪は我が身のみに

 して頂きたい。

 我が子らには累の及ばぬよう」


使者から父親の言葉を聞いた兄は、

進み出て、言う。


「分かる者ならば、分かるはずです。

 鳥の巣がひっくり返って

 地面に落ちた時、そこにある卵が

 無事でなどあり得るでしょうか?」


やがて二人の子供も引っ立てられ、

孔融と共に殺された。




孔文舉有二子,大者六歲,小者五歲。晝日父眠,小者床頭盜酒飲之。大兒謂曰:「何以不拜?」答曰:「偷,那得行禮!」

孔文舉に二子有り、大なる者は六歲、小なる者は五歲なり。晝の日に父の眠れるに、小さき者は床頭にて酒を盗みて之を飲む。大兒は謂いて曰く:「何をか以て拜さざるか?」と。答えて曰く:「偷みたらば、那んぞ禮を行いたるを得んか!」と。

(言語4)


孔融被收,中外惶怖。時融兒大者九歲,小者八歲。二兒故琢釘戲,了無遽容。融謂使者曰:「冀罪止於身,二兒可得全不?」兒徐進曰:「大人豈見覆巢之下,復有完卵乎?」尋亦收至。

孔融の收を被るに、中外は惶怖す。時に融が兒の大なる者は九歲、小なる者は八歲なり。二兒は故より琢釘にて戲び、了には遽る容無し。融は使者に謂いて曰く:「冀くは罪を身にて止めんことを、二兒は全きを得べきや不や?」と。兒は徐ろに進みて曰く:「大人、豈に覆巢の下に復た完卵有りたると見んや?」と。尋いで亦た收むるに至る。

(言語5)




前半のエピソード、後に鐘会のところでも似た感じで出てきます。たぶん「鍾会さんならやりそう」的な感じで、鍾会さんのほうに子供時代のエピソードが盛られてったんだろうけど。何せ鍾会さん、曹丕との面会だってあり得ない話だものね。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?