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華歆4  人を助けること

華歆かきん王朗おうろうは盗賊に襲われたので、

二人して船に乗り、逃げ出した。


すると船に乗ろうかというところで、

一緒に乗せてほしい、

と願ってくる者がいた。


華歆、その人を載せることに難色を示す。

だが王朗は言う。


「まだ船に余裕はある。

 どうして断る理由がある?」


だが、ひとりを載せることで、

船足は確実に遅くなってしまう。

なので、ついには盗賊たちに

追いつかれそうになった。


王朗、慌てて言う。


「やべえ! このまま彼を載せてたら

 追いつかれちまう!

 彼を下ろすしかねえ!」


華歆、首を振った。


「だから乗せるな、といったのだ。

 だが、我々はもう彼を受け入れた。

 ならば今更見捨てるなどといった

 選択肢はありえんだろう」


その後三人は力を合わせ、

なんとか盗賊から逃げ延びた。


そしてこの出来事から、

人々は華歆と王朗の優劣を

定めるのだった。




華歆、王朗俱乘船避難,有一人欲依附,歆輒難之。朗曰:「幸尚寬,何為不可?」後賊追至,王欲舍所攜人。歆曰:「本所以疑,正為此耳。既已納其自託,寧可以急相棄邪?」遂攜拯如初。世以此定華、王之優劣。


華歆と王朗の俱に船に乘りて難を避れんとせるに、一なる人の依附を欲せる有らば、歆は輒ち之を難ず。朗は曰く:「幸いにも尚お寬あり、何ぞ可せずと為さんか?」と。後に賊の追い至れるに、王は攜いたる所の人を舍てんと欲す。歆は曰く:「本より疑いたる所以は、正に此が為なるのみ。既に已に其を納れ自ら託たば、寧んぞ急なるを以て相い棄つるべけんや?」と。遂には攜いたるを拯せること初の如し。世は此を以て華と王との優劣を定む。


(德行13)



なんか前話に引き続きワンセットっぽく書かれてるが、史書にはこの二人が連れ合うようなシーンはない、と言う。となると張華さんの評が先にあって、そこから連れ合うエピソードが生まれた、という感じだろうか。

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