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服虔   春秋が結ぶ仲

鄭玄ていげんから春秋の注を託された、

とされている人、服虔ふくけん

かれは注を書き上げるにあたり、

貪欲に他の知見を求めた。


崔烈さいれつという人が門下生に

春秋伝の講義をしていると聞けば、

自分の名を伏せ、調理人として、

門下に潜り込んだ。


そして講義の時間となれば、

こっそりと入り口付近から、

それを聞く。


そして、自分以上の

ものではないな、と悟った。


やがて服虔、食堂で門人たちと

講義についてのあれこれを語る。


それを聞きビビるのが崔烈である。

何じゃあの飯炊き!?

も、もしかして、

あの服虔なんじゃなかろうな!?


そこで崔烈さん、一計を案じる。


夜、誰もが

寝静まっていた時のことである。


こっそりと崔烈さん、

飯炊き人の部屋に行き、叫ぶ。


子慎ししん! 子慎!」


んぁ!? なに!?


寝ぼけまなこの服虔さん、

つい飛び起き、返事してしまった。


そう、子慎。

それは服虔さんのあざなだったのです。


この一件以降、服虔と崔烈は

交友を結ぶようになったそうである。




服虔既善春秋,將為注,欲參考同異;聞崔烈集門生講傳,遂匿姓名,為烈門人賃作食。每當至講時,輒竊聽戶壁間。既知不能踰己,稍共諸生敘其短長。烈聞,不測何人,然素聞虔名,意疑之。明蚤往,及未寤,便呼:「子慎!子慎!」虔不覺驚應,遂相與友善。


服虔は既にして春秋を善くし、將に注を為さんとせるに、同異を參考せんと欲す。崔烈の門生を集め傳を講ぜんことを聞き、遂には姓名を匿し、烈が門人の為に食を作したるに賃わる。當に講が時に至らんとせる每、輒ち竊かに戶壁の間にて聽く。既に己を踰ゆる能わざるを知り、稍さか諸生と共に其の短長を敘す。烈は聞き、何ぞの人かを測りえず、然し素より虔が名を聞きたれば、之に疑しきを意ゆ。明くるに蚤きに往き、未だ寤ざるに及び、便ち呼ぶらく:「子慎! 子慎!」と。虔は覺えずして驚き應え、遂には相い與に友善す。


(文學4)




崔烈

博陵崔氏という、どちゃくそ名門のひと。ここではクッソイケメンに描かれているが、三国志に出てくる彼は買官で批判されたり、董卓死亡直後の騒動に巻き込まれて殺されたりしており、なかなかにぱっとしない。これは同一人物ってことで良いんでしょうかね。あるいは同姓同名の赤の他人?

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