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鄭玄3  鄭玄と春秋

春秋しゅんじゅうへの注と言えば杜預どよが有名だが、

実は鄭玄ていげんも手掛けていた。

の、だが、これが終わらない。


日々春秋の諸伝と格闘する毎日。

そんな中、鄭玄、旅行先で

服虔ふくけんという人と出会う。


とは言え二人、面識があったわけではない。

宿の中にいた鄭玄のところに、

車に乗って誰かと話していた

服虔の言葉が聞こえてきたのだ。


服虔が語っていたのは、

自身がなぜ春秋に注を加えているのか、

その、意義。


そしてその内容は、ほぼ鄭玄が

考えているものと合致した。


そこで鄭玄、宿から飛び出し、

服虔の車にすがりつく。


そして、言うのだ。


「私も春秋に注を入れようと

 取り組んでまいったのですが、

 どうにも完成しません。


 貴方様のお話を

 聞いてしまったのですが、

 伺うに、志はほぼ

 同じでいらっしゃるご様子。


 ならば、どうか、

 わたくしの注をあなた様の注として

 用いては下さるまいか」


そうして鄭玄が途中まで書いた注は、

すべて服虔の注となった。


もっとも、それは

散逸してしまったそうだが。




鄭玄欲注春秋傳,尚未成時,行與服子慎遇宿客舍,先未相識,服在外車上與人說己注傳意。玄聽之良久,多與己同。玄就車與語曰:「吾久欲注,尚未了。聽君向言,多與吾同。今當盡以所注與君。」遂為服氏注。


鄭玄は春秋傳を注せんと欲す。尚お未だ成らざる時、行くに服子慎と宿客舍にて遇す。先に未だ相い識らざれば、服は外に在りて車上にて人に己が傳に注せるの意を說く。玄は之を聽くこと良や久しうし、多きを己と同じうす。玄は車に就きて與に語りて曰く:「吾れ久しく注せんと欲せど、尚お未だ了わらず。君が向の言を聽くに、多きを吾と同じうす。今、當に以て注せる所の盡くを君に與えん」と。遂に服氏が注と為る。


(文學2)




えっこのひと「じょうげん」って読むの? まぁいいや。ぼくは音読みを貫くのです。


服虔

後漢末に多くの古典に注釈を残した、とされている。とは言え董卓死後まわりの騒動に巻き込まれる中、病死。後漢書儒林伝に伝が残る。次話にも登場します。

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