それ以外よくわかっていない人、
かれはその振る舞いによって、
徳行編に燦然と名を残している。
遠方の地の友人が重病にかかり、
荀巨伯は見舞いに出た。
すると折り悪く、騎馬民族たちが
友人のいる町を攻めてくる。
友人氏、荀巨伯に言う。
「私はもう死ぬ身だ。
構うな、あなたは去れ!」
が、荀巨伯も反論する。
「遠くのあなたに会いに来たのに、
あなたは去れと言う。
馬鹿な!
あなたを見捨てなどして、
この荀巨伯、どうしておめおめと
生き延びておれようかよ!」
やがて騎馬民族の軍は、
二人のところにまでやってきた。
逃げも隠れもしない荀巨伯を前に、
将軍の一人が進み出る。
「わが軍に恐れをなし、
町の者は皆逃げ出したというに。
貴様、剛毅なる者よ、
何故ここに留まりおる?」
荀巨伯は答える。
「わが友が病に倒れている。
そなたらに委ねるわけにはゆかぬ。
我が身を以て、
友の命と替えるべし」
将軍、荀巨伯の発言に胸撃たれた。
「わしらを前に、それでもなお
貴様の仁義を語るか!
なるほど、この国の仁義も
捨てたものではない」
将軍はそう言うと、軍を引き上げる。
こうして町は全てが救われたのだった。
荀巨伯遠看友人疾,值胡賊攻郡,友人語巨伯曰:「吾今死矣,子可去!」巨伯曰:「遠來相視,子令吾去;敗義以求生,豈荀巨伯所行邪?」賊既至,謂巨伯曰:「大軍至,一郡盡空,汝何男子,而敢獨止?」巨伯曰:「友人有疾,不忍委之,寧以我身代友人命。」賊相謂曰:「我輩無義之人,而入有義之國!」遂班軍而還,一郡並獲全。
荀巨伯は遠きに友人が疾を看るに、胡賊の郡を攻むに值う。友人は巨伯に語りて曰く:「吾、今死さん。子は去るべし!」と。巨伯は曰く:「遠來し相視たらば、子は吾をして去らしめんとす。義に敗れるを以て生くるを求むは、豈に荀巨伯が行せる所ならんや?」と。賊の既に至らば、巨伯に謂いて曰く:「大軍至りて一郡は盡く空たるに、汝は何ぞの男子たりしに、敢えて獨り止まらんか?」と。巨伯は曰く:「友人に疾有らば、之を委ぬに忍びず、寧ろ我が身を以て友人が命に代えん」と。賊は相い謂いて曰く:「我らが輩、無義の人なれど、而して有義の國に入りたり!」と。遂にして軍を班じ還り、一郡は並べて全きを獲る。
(德行9)
いい話だとは思うんだけど、胡族の将軍のセリフがクソ&クソ&クソなのでどうよと言う気持ちにはなる。荀巨伯の心意気に撃たれるだけの心意気がある人が、どうして自分を「無義の人」だなんて言うんだ。いくらなんでも南側の恣意的な曲筆すぎだろ。
繰り返しますが、エピソードそのものは好き。男前だね荀巨伯、男前だね胡族の将軍殿!