陳寔、
炊き出しを命じる。
父の命に従い、炊事を開始する二人。
だが、父と客人の会話。
気になる。めっちゃ気になる。
かまどに火を起こしたまではいいが、
二人とも、かまどをほっぽらかし、
父たちの会話を盗み聞きした。
そんな感じだから、調理もずさん。
蒸し米を出すはずだったのに、
鍋の上に網も敷かず、
ダイレクトにぶち込んでしまった。
完成!
とっても薄いおかゆです。
出てきた料理を見て、理解不能。
陳寔さん、やや混乱する。
「蒸し飯が
出てくるはずではなかったのかね?」
陳紀と陳諶、土下座して言う。
「お二方の会話が気になり過ぎて、
盗み聞きしてしまいました!
そうしたら網を敷くのを
忘れてしまったのでございます!」
うーん、これはなんとも。
陳寔さん、気を取り直し、聞く。
「ならば、我らの会話にて、
何か得たものはあったのか?」
すると二人は言う。
「大まかに、申し上げます」
そうして二人かわるがわるに語る。
それはまさしく、陳寔が
客人と為した内容そのもの。
あぁ、なるほど。これならば。
陳寔は言う。
「グッドだ、二人とも。
そうであるならば、蒸し飯が
粥になった甲斐も
あろうというものよ」
賓客詣陳太丘宿,太丘使元方、季方炊。客與太丘論議,二人進火,俱委而竊聽。炊忘箸箄,飯落釜中。太丘問:「炊何不餾?」元方、季方長跪曰:「大人與客語,乃俱竊聽,炊忘箸箄,飯今成糜。」太丘曰:「爾頗有所識不?」對曰:「仿佛志之。」二子俱說,更相易奪,言無遺失。太丘曰:「如此,但糜自可,何必飯也?」
賓客の陳太丘に詣で宿れるに、太丘は元方、季方をして炊かしむ。客と太丘の論議せるに、二人は火を進め、俱に委ね竊かに聽く。炊くに箄を箸くを忘れ飯は釜中に落つ。太丘は問うらく:「炊うに何ぞ餾せざる?」と。元方、季方は長跪して曰く:「大人と客の語れるに、乃ち俱に竊かに聽かば、炊くに箸箄を忘れ、飯は今、糜と成る」と。太丘は曰く:「爾ら、頗る識れる所有りや不や?」と。對えて曰く:「仿佛し之を志す」と。二子の俱に說けるに、更に相い易奪し、言に遺失無し。太丘は曰く:「此くの如くせば、但だ糜なるも自ら可なり、何ぞ必ずしも飯ならんや?」と。
(夙惠1)
陳寔の教育方針がヤバい。これまるまる現代にも通じるよね。「子の成長にとって最もキーになる部分に評価の焦点を当てる」。いやそれってすっげえ難しいんだけど。どうしても周辺の些末な疵に声を荒げたくなってしまう。先に打ち立てるべきはぶっとい柱であって、その周辺の粗雑さはむしろ笑いとばすべき。べきなんだけど!
あー、やだやだ。職場でのあれこれ思い出しちまう。