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陳寔7  盗み聞きの功罪

陳寔ちんしょくのもとに客人が来た。

陳寔、陳紀ちんき陳諶ちんしんの二人に

炊き出しを命じる。


父の命に従い、炊事を開始する二人。

だが、父と客人の会話。

気になる。めっちゃ気になる。


かまどに火を起こしたまではいいが、

二人とも、かまどをほっぽらかし、

父たちの会話を盗み聞きした。


そんな感じだから、調理もずさん。

蒸し米を出すはずだったのに、

鍋の上に網も敷かず、

ダイレクトにぶち込んでしまった。


完成!

とっても薄いおかゆです。


出てきた料理を見て、理解不能。

陳寔さん、やや混乱する。


「蒸し飯が

 出てくるはずではなかったのかね?」


陳紀と陳諶、土下座して言う。


「お二方の会話が気になり過ぎて、

 盗み聞きしてしまいました!

 そうしたら網を敷くのを

 忘れてしまったのでございます!」


うーん、これはなんとも。

陳寔さん、気を取り直し、聞く。


「ならば、我らの会話にて、

 何か得たものはあったのか?」


すると二人は言う。


「大まかに、申し上げます」


そうして二人かわるがわるに語る。

それはまさしく、陳寔が

客人と為した内容そのもの。


あぁ、なるほど。これならば。

陳寔は言う。


「グッドだ、二人とも。

 そうであるならば、蒸し飯が

 粥になった甲斐も

 あろうというものよ」




賓客詣陳太丘宿,太丘使元方、季方炊。客與太丘論議,二人進火,俱委而竊聽。炊忘箸箄,飯落釜中。太丘問:「炊何不餾?」元方、季方長跪曰:「大人與客語,乃俱竊聽,炊忘箸箄,飯今成糜。」太丘曰:「爾頗有所識不?」對曰:「仿佛志之。」二子俱說,更相易奪,言無遺失。太丘曰:「如此,但糜自可,何必飯也?」


賓客の陳太丘に詣で宿れるに、太丘は元方、季方をして炊かしむ。客と太丘の論議せるに、二人は火を進め、俱に委ね竊かに聽く。炊くに箄を箸くを忘れ飯は釜中に落つ。太丘は問うらく:「炊うに何ぞ餾せざる?」と。元方、季方は長跪して曰く:「大人と客の語れるに、乃ち俱に竊かに聽かば、炊くに箸箄を忘れ、飯は今、糜と成る」と。太丘は曰く:「爾ら、頗る識れる所有りや不や?」と。對えて曰く:「仿佛し之を志す」と。二子の俱に說けるに、更に相い易奪し、言に遺失無し。太丘は曰く:「此くの如くせば、但だ糜なるも自ら可なり、何ぞ必ずしも飯ならんや?」と。


(夙惠1)




陳寔の教育方針がヤバい。これまるまる現代にも通じるよね。「子の成長にとって最もキーになる部分に評価の焦点を当てる」。いやそれってすっげえ難しいんだけど。どうしても周辺の些末な疵に声を荒げたくなってしまう。先に打ち立てるべきはぶっとい柱であって、その周辺の粗雑さはむしろ笑いとばすべき。べきなんだけど!


あー、やだやだ。職場でのあれこれ思い出しちまう。

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