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第5話 変わってしまった私

ひよりと麗歌は私を見て、微笑んだ後他の話を始めた。

 私は頭の中にある疑問を消化できずにいる。

 恋することが嫌になったわけではない。

 ただ、うまく思いと考えが一致しないのだ。

 恋じゃないと思う考えと恋だと言う思い。

 自分の中の自分たちが揉めているように心の中がザワザワとする。


 どうすればいいのか分からないまま、私はパンケーキを口に放り込む。

 慣れない感覚。初めましての自分がいる。

 頭の中でまとまらない間に、話が私に回ってきた。


「雪の名前の由来ってなんですか?よくよく考えれば、噂の雪くんも雪って感じが入ってますよね…」


 そう言われればと思いながら、私は小学生の時の記憶を探る。

 自分の名前の由来を調べる授業を受けた時、両親に聞いた。

 確か…


「多分なんだけど…私が生まれた時、お母さんが私を見て、雪を思い浮かべたんだって。空から落ちてくる雪みたいに、私もお母さんの手に降ってきたから」


 私が生まれた日、雪が降っていったって言うのもあるのかもしれない。

 雪みたいにすぐ溶けてしまいそうだったとも言っていた。

 弱々しくて、手放したくないと思ったらしい…

 そう私が説明すると、ひよりが質問をしてきた。


「じゃあ、噂の雪くんってなんで雪って名前になったのかなぁ?男の子に雪って珍しーよね?」


 私はひよりのその質問を聞いて、同じ疑問が湧く。

 改めて考えてみれば、珍しい気がする…

 気になって、私は携帯を開く。

 雪くんとのトークルームを開いて、文字を刻む。

 気になったことをそのまま聞いた。


 私は携帯をポケットにしまって、話を続ける.

 時間は意外と経っていた。時計が示すのは七時前。

 私たちは話をとりあえず切り上げて、お店を出る。

 駅の方に三人で歩いていく。

 私は二人と別れる前に、今日の相談は一旦、三人の間での秘密にすることにした。


 帰り道を進んでいく。

 ワイヤレスイヤホンからは恋愛ソングが流れている。

 リズムに合わせて、一歩を踏み出しているとポケットが震えた。

 ポケットから携帯を取り出す。


 そこには雪くんからのメッセージ。

 雪くんは説明を言葉として文に落とすのが、苦手らしい。

 電話で説明しても大丈夫ですか?と来ていた。

 私は大丈夫とだけ伝えて、着信を待つ。

 変にドキドキしてしまう。顔が暑い。

 着信音が鳴る。


「もしもし…」


 私は震えた声でそう、言葉を落とす。

 なんて言えばいいのか分からなくて、なんとなく待ってみる。

 そんな私の心を分かったかのように、雪くんは言葉を紡いだ。


「先輩、急にどうしたんですか?確か、名前の由来の話でしたよね?」


 いつもとは違う落ち着いた声。

 その声に脳が追いつかなくて、そわそわしてしまう…

 きっとそんなに考え込まなくてもいい内容なのに、私は考え込んでしまう。

 なんで、答えるのがいいのかな…

 とりあえず、私は肯定の返事をする。

 そんな私の弱々しい返答に雪くんは、返答をしてくれた。


「俺の名前の由来ですよね…確か、母が雪が積もってて、そこに日光が当たったら反射するのを見たらしくて…その時の雪が明るかったから、周りの人を明るく照らすことができる人になって欲しい。みたいな話だったと思いますよ。先輩はなんで雪って名前なんですか?」


 私はそう聞かれてすぐ、麗歌たちに話した内容と同じ話をした。

 雪くんにぴったりの由来を聞いたあと、私の由来を話すのはとても緊張する。

 この名前に私は見合っているのか、自信がないから…


 お母さんが私につけてくれたこの名前。

 私は私で、この名前に見合う人間がどんな人間かって考えることがある。

 綺麗で儚い、麗歌みたいな女の子がこの名前に見合っているはずだ。

 私じゃ見合わない…

 そんなことを考えてしまって、反応が遅れている私に雪くんは首を傾げる。


 やってしまった…

 雪くんが何かを喋っていたのは分かる。

 ただ、何を話していたのか分からない…

 どうしよう…

 そうオドオドと悩んでいる私に雪くんは助け舟を出してくれる。


「先輩の名前って、先輩にとても合ってますよねー雪みたいに綺麗で、儚い…高嶺の花ですもんね、先輩」


 きっと、雪くんはこれを言うのは二度目だろう。

 なのに、決して嫌そうな顔をせず、優しい顔でそう言った。

 私は雪くんのこの言葉で、心の何かがほぐれた気がする。

 少しほっとして、電話の先の雪くんに向けて言葉を落とす。


「雪くんも名は体を表すの代表だよね。キラキラ明るくて、いつも眩しい…」


 心からの気持ちを言葉に込める。

 伝わったよね?

 そう不安になる程、雪くんの声がしない。

 何が起きているのだろう…

 今度は私が首を傾げていると、雪くんが柔らかくため息をつく。


「先輩…そう言うこと、他の人に言っちゃいけないですからね?勘違いさせますよ…」


 そう、雪くんは悲しそうに言う。

 私は雪くんの言ってる意味が理解できず、とりあえず頷いていた。

 そんな私の反応に雪くんは満足したかのように、会話を続けていく。

 今日はなんだか変なことばかりが起きる…

 いつもと違いすぎる一日に私はドキドキとしていた。

 何かが変わってきている。






























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