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第4話

「まあ!お前達!」


華蓮が、腹心三人組を叱咤した。仮にも、一国の王に向かって行うことかと、息を荒げた所、丹厳たんげんの、興奮した声が追ってきた。


「素晴らしい!華蓮様!素晴らしいです!」


池の中に座り込んだまま、丹厳は、にっこり笑うと、これですよ、と、言った。


池に落ちた丹厳は、そこから見える中庭の瀟洒な造りが、まるで、華蓮のように洗礼されている、と、言い放った。


何が言いだしたのかと思いきや、表側の庭ではなく、この、小さな中庭で茶会を開いてはどうかと言い出したのだ。


もちろん、このままでは、やはり、地味過ぎる。そこで、元の造りを生かして、飾りすぎない造園を行えば良い。


そこは、心当たりがあると言い切って、丹厳は、衣から水を滴らせながら、御免!と、姿を消した。


「確かに……まあ……」


「悪くはないのですが……」


「庭を使って……って、ありきたりでしょ?」


そこを、どうするか、なのに──。と、三人組は、ため息をついた。


「しかも、丹厳様に、任せてしまう。と、いうことですわよね」


「……大丈夫でしょうか?」


「危険な賭けだと思います」


あーー!勝算は遠退いたーーー!


三人組が、同時に叫ぶ。


「確かに、あれこれ飾りたてるよりよいと思う」


華蓮は、どこか、ぼんやりとしていた。


「ねえ、不味くないですか?」


「ええ、かなり不味いですわよ」


「惚れ込んでしまった、って、顔つき。しかも、すべて、言いなり」


あーー!と、三人組はまたもや叫ぶと、ため息をつく。


「まあ!勝負は、もう始まっているのよ!皆、しっかりして!」


居る中庭を見回しながら、華蓮が言う。


「そうね、この庭に手を入れるのも悪くないわ。ただし、少し、ひねりは必要だけど」


華蓮なりに何か閃いたのか、ふふふと、楽しそうに笑っている。


「では、主な造園は、丹厳様におまかせして、その間、お道具を選びましょう」


「華蓮様!」


マヤが、慌てた。


「仔細は了解いたしました。しかし、どのような、場、に、なるのか見えない状態で、茶器等の道具を選ぶのは……」


「選んだ道具に、合わせて、設えた庭を飾り付けるの。安心して、丹厳様にすべては、おまかせしないから。最後に、何か、物足りなさが、現れるはずよ」


言って、部屋へ向かう華蓮の姿に、いつものあるじに戻ったと、三人組は、ほっとした。


そんな、一行を、見送るように、幾ばくか離れた回廊の支柱の影から、女が視線を送っている。


辺りを見回し、人気が無いことを確認すると、女は、小走りに、去った。


向かう先には、王太子妃、耀我ようがの城、後宮がある──。

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