曲がりなりにも、陸の覇者と呼ばれているこの大国が、名も知られていないような小国と、縁続きになりそうなのだから──。
「巫女よ、一体どうすれば?」
「恐れながら、神の告知は、既に出ております。
王の前にいる女は、淡々と、己の役目を述べた。
確かに、言う通りではある。しかし、授けられた神託は、
しかし、巫女あってのこの国。と、言って良い程、悠久の昔より、
それだけに、巫女の発する言葉は、絶対であり、また、巫女の存在は、王とその跡を継ぐ者だけの秘密でもあった。
「……すまぬ、巫女よ。しばし、時を貰えまいか」
王は、気持ちの整理をしたいと、巫女に告げ、部屋を出て行った。
「本当に、子煩悩な方だこと」
巫女は、消沈した王の背中を見送りながら呟いた。
──その頃、宮殿の奥深く、王の側室達が居を構える後宮の手前。
広がる蓮池を望む様に建てられた離宮では、何やら、
「わかりましたわ。その様に仰せになられますのなら、こちらにも考え方が、ございます」
「あら、あら、ナスラ様ったら、これは、やっちゃいますわね!」
ナスラと呼ばれた、
「早速、国元へ、文を送りましょう。今後、一切、玄国へ、
「なっ、なっ、なんですって!お前、誰に向かって!」
耀我は、わなわなと震えている。
「いやー、これは、大変な事になりましたぞ。
戸口で、男が王太子、斉令を引き連れ、わかったような口を利いている。
「まあ!相変わらず、空気の読めないお方だこと!」
「と、いうより、なんで、ここにいるのでしょう?あの方は。しかも、斉令様を引き連れて。妙に馴染んでませんか?マヤ様?」
「ほんとですね、でも、一応は、来賓ですわよ。インドク様、口をお慎みなされませ」
──我が妃よ。と、王太子、斉令が口重に妻である王太子妃、耀我へ声をかけた。
とたんに、耀我は、ひっと、小さく声を上げる。
夫の癖を知らぬはずがない。と、いうより、顔を会わせれば、結局、のの知り合いに終わる仲。その始まりは、常に、斉令の重い口振りからなのだ。
これから何が起こるのか、耀我が、一番分かっていた。