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半人前霊能者シリーズ ② 紡がれる力 第2章:導きの乞え

 重い気分のまま、学祭当日を迎えた。


 華やかな校舎の外装とは一転、反比例したままの暗い気持ちを抱えながら教室に入ると、クラスメイトの女子たちにぶわっと取り囲まれる。


「おっはよ、三神! アンタにかかってるんだからね、ヨロシク!」


 他にも様々な声をかけてくれたのだが、頷く以外なにもできない。マジで無力そのものだった。


「制服のままじゃ迫力ないし、見た目ももったいないから、三神の格好よさが出るように、演劇部から衣装を借りてきた。さっそく羽織ってみてよ」


 手渡されたものは、くるぶしまである真っ黒なマント。ドラキュラ役にでも使っていたのだろうか。しかしこれを羽織ってみても、エセ霊能者感が2割り増しになっただけのような気がする。


(正直なところ気落ちしたままだったけど、学祭のためにこうしていろいろ手を尽くしてくれたことに、ちゃんと感謝しないとな――)


 メガネを外して振り返り、にっこりと微笑んでみた。


「ちょっ、三神ってば……その目どうしたの?」


「コンタクト入れてみた。どうかな?」


 本当はメガネを外すと霊能者の証である黒目が、赤くなっているだけなんだけど。


「うっわー。その格好でオバケ屋敷に立たれたら、超恐怖モンだわ」


「だけどそれなりの感じ、なんとなくだけど出てるんじゃないかな?」


 きゃーきゃー盛り上がっているところに、クラスの男子も登校して来て、更に盛り上がっていった。みんながこうして一体となり、なにかをするって、結構楽しいことなのかもしれない。


 今までは遠巻きで参加していただけだから、直接体験してみて分かることもあるんだな。


「神さま仏さま、三神様! 今日と明日はたくさんお客さんが来るように、よろしくお願いします!」


 ふざけた岡田がはは~と言いながら平伏すと、隣にいた鈴木も同じように真似をする。そんな俺たちの姿を面白がって、スマホをかざしてくるヤツなど、既に学祭が始まった感じだった。


(願わくば母親が悪霊を大量に引き連れて、学校にやって来ませんようにということと、変な霊を連れたお客さんが来ないようにだな)


 そして大きな花火が打ち上げられ、午前10時から開催された祭り。


 流れ込むようなことはなかったけど、それなりにお客さんが来た。主に女子が中心になって来てくれた。他にも興味にそそられた男子も顔を出してくれたお蔭で、それなりに大盛況だった2日間。


 背後に霊がいるか視るだけじゃなく、心霊写真の鑑定依頼をちゃっかり受けたり、呪われているかもしれない思い出の品を視たり。自分が対処のできないものはきちんと持ち帰って、母親の指導の下で処理をすることにした。


 半人前ながら完璧とはいかないけれども、最初に感じていた不安が途中からなくなった関係で、きちんと仕事を全うできたと思う。


 しかも嬉しいのはそれだけじゃなく、他のクラスがやっていないという企画で、めでたく最優秀企画賞を戴き、学年末に行われるお楽しみ会を、理事長に全額負担してもらえることになった。

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