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心霊ファイル2:紡がれる力 第1章:半人前ゆえに……

 俺の名前は、三神優斗(みかみ ゆうと)私立高に通う高校2年生。つい最近になって、霊能力に目覚めたばかりの半人前でもある。


 こういう能力を持っていると、周りのヤツラが面白がったり、奇異な目で見たりすると想像ついたので、一部のヤツを除き、それを隠していたのだが――。


(やっぱり、見せるべきではなかったということなんだな。今さら言っても、既に遅いのだけれど……)


 俺の思惑とは裏腹な状態に、今まさに追い込まれてしまった。


 うわぁと思いながら体を小さくしても、振り返って俺の顔を見るクラスメイトの視線が、これでもかとぐさぐさ刺さってくる。


 ことのはじまりは2週間後に行われる学祭について、クラスの出し物をみんなで決めていたときだった。


「なぁなぁ、他のクラスがやらないことを企画してみないか?」


 誰かの提案に、一番前にいた岡田が颯爽と手を上げるのを、ぼんやりと眺めていた。


「だったら、ちょーっとばかり季節はずれだけど、本物の霊能者を使って、なにかするのはどうだ?」


 その言葉に、クラス中がざわめく。俺は顔を引きつらせるしかない。岡田、まさか――。


「実はさ、三神は俺を助けれくれた、すっげぇ霊能者なんだ!」


 ああ、言っちゃった。一番後ろの席にいる俺は、話題という名の餌食となってしまった。


 岡田は困惑した俺の視線を無視して、斜め後ろにいる同じ写真部の鈴木に目配せしたのをきっかけに、颯爽と立ち上がるなり話し出す。


「俺ら写真部でコンテストに出す作品を、校内で撮影していたんだ。その中の一枚に、幽霊が写った写真が撮れちゃってさ。三神の家、霊障相談とかしてるから、なんとかしてもらおうと、三神に話をしたワケ」


 鈴木のセリフを引き継ぐように、岡田がこれまでの経緯を説明すべく口を開いた。


「そしたら、三神本人に霊能力があるって聞いてさ。俺たちの目の前で華麗に除霊をしてくれたんだよ。すっげぇカッコよかった!」


 言っておくが、お前たちの前でなんて、除霊なんかしてないし――。


「三神、そんな力があるのか!?」


「ねぇ私になにか憑いてない?」


 ほかにもたくさん話かけられたけど、大量の幽霊に対処ができない今の俺では当然、目の前の人間に対しても同じだった。ズリ下がったメガネを元に戻し、口をぱくぱくするのが精一杯な状態……。


「はいはい、静かに! 今はクラスの出し物を決めなきゃ。岡田の提案に賛成な人は、挙手してください」


 俺以外のクラスメイトのほとんどが、手を上げた。


 無理もない――学年で一番人気の高い出し物を投票で決めていくのだが、一番になったクラスには理事長から学年末に行われる、お楽しみ会という名のパーティを全額負担してもらえるゆえに、全校生徒がそろって真剣になる。


 他のクラスがやりそうなことをしても、当然お客は集まらない。だからこそ、目の惹くものをやらなければならないのだが。


「俺、まだ浄霊しかできない、半人前なんですが――」


 そんな俺の声を無視して、話がどんどん進められていく。


『イケメン霊能者、ここに降臨っていうコンセプトでいい感じ?』


 それって、やって来た人に、アーメンって拝んでしまうかも。


『もしも、本物の幽霊が来たら大騒ぎになるね』


 自分で対処ができないようだったら、迷わずに一番先に逃げますけど。つぅか母さんを学祭に連れてきたほうが、対応が早いかも……。


『すべては三神にかかっている、全力で頑張ってくれ!』


 熱い視線と言葉を浴びせられた結果、断れなくなった俺。泣き出しそうになりながら、うな垂れるしかなかった。

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