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◯もやき氏のチャンネルで再生数の多かった動画1

――タイトル心霊スポットにある地蔵を蹴ってみた 


――動画の内容 もやき氏と思われる青年がカメラに映っている。茶色の髪。背は低く、丸い目が特徴的。時刻は夜。動画投稿日ともやき氏の服装から、季節は10〜11月ごろだと思われる。


 もやき氏の背後にはトンネル。入り口は苔むしのコンクリート壁に囲まれ、ひび割れがいたるところに走っている。上部にはかつてのトンネル名を示す看板があったようだが、文字は消えかかり、読み取ることはできない。現在は使われていないらしい。


 周囲は山奥のようだが近くの街灯の灯りは強く、もやき氏の表情がはっかりと分かる。 


もやき氏「はい、どうも。もやきチャンネルです」 


 もやき氏、胸の前で両手を合わせ大文字のMの字を作る。


もやき氏「今日はですね、千葉県のとある有名な心霊スポットにやってきました。ここマジで出るらしいです」


 もやき氏、トンネルの中へと目をやる。映像で確認する限り、トンネルの内部は真っ暗であり、奥は見えないほど濃い闇が広がっている。


もやき氏「さっそく行ってみましょう」


 もやき氏、興奮と緊張が入り混じった表情を浮かべ、懐中電灯をトンネル内部へ向ける。暗闇の中に一筋の光が伸びていく。


カメラマン「あれ?」


もやき氏「え?」


 もやき氏、カメラマンの方を見る。


カメラマン「いま何かいなかった?」


 もやき氏、懐中電灯をトンネル内部のあちこちに向ける。


カメラマン「いねえよ」


 映像を確認する限り、何も映っていない。 


 それから約3分。トンネルを歩くもやき氏の背中が映り続ける。トンネルの壁や天井は濡れているようで、時折、ピタピタと水滴が滴る音がトンネル内に響く。 


もやき氏「けっこう寒いなぁ」


 パキンと何かが割れたような音が鳴る。


カメラマン「え?」


 もやき氏、立ち止まる。


もやき氏「ん?」カメラマン「なんか聞こえなかった?」もやき氏「風でしょ」カメラマン「風、かなぁ」もやき氏「あれ?」


 もやき氏、カメラマンの背後に目をやり、訝しげな表情をする。


もやき氏「うそ」


 もやき氏、だんだんと青ざめていく。


もやき氏「やばいやばいやばいやばい」カメラマン「え、え、え、え」


  カメラ、慌ただしく動いてカメラマンの背後が映し出される。遠くにトンネルの入り口が映っているだけで特に異変はない。 


もやき氏「うっそー!」カメラマン「マジでやめろよー」 


 もやき氏、再び歩き始める。


 5分後、もやき氏たちはトンネルから脱出する。 画面はトンネルの出口。車道が近いらしく、車の音が遠くから聞こえる。


もやき氏「ちょっと変な音とかしましたが、結局なにもなかったです! まあ強いて言うなら寒かったですね」 


 カメラマンの笑い声が入る。


もやき氏「断言します。幽霊なんてこの世にいません! あ」 


 もやき氏、トンネル入り口の脇に小さな地蔵が立っていることに気づく。かなり劣化しており、顔の一部が欠けている。 


もやき氏「こういうのもね、全然僕は大丈夫なんで」


 もやき氏、地蔵の頭を蹴る。


 カメラマン「お前、マジか!」


 もやき氏、さらに地蔵の頭を蹴る。何度目かの蹴りの後、地蔵の首が崩れ、頭部が地面に転がる。 


カメラマン「ちょ、壊してんじゃん」もやき氏「やっべえ!」 


 もやき氏、地蔵の頭を首の上に乗せる。が、うまく乗らず地蔵の頭は再び地面に落ちる。


 カメラマンの笑い声が入り込む。 もやき氏、カメラに向き直る。 


もやき氏「ということで僕らに行って欲しい場所があればぜひコメントしてください! では、次回の動画でお会いしましょう」

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