笑美との初夜については、多くを語らない。本編を読めば、俺の取り乱した様子が詳細に書かれているし、濃厚濃密な行為についても同様だと言いつつ。
イキやすい笑美の快感部分を俺の手で探っていく行為に、思いっきり熱が入る。
「ふぁ…あ、あぁっ…しゅ、俊哉さ……」
酷く掠れた声で俺を呼んだので、慌てて顔を寄せる。
「どうした笑美?」
「どどが…の、喉が、乾いて……休憩っ、しない、と無理……」
乾ききった唇や荒い息遣いで、脱水症状になってることにやっと気づいた。
「しっかりしろ、今すぐ水を持ってきてやるからな!」
笑美の一大事に、前を隠すなんて余裕すらなく、全裸でベッドを飛び出してキッチンまで走り、冷蔵庫を開けてペットボトルの冷たい水を手にして、すぐに戻った。
そのまま口移しで、水を与えたのだが――。
「俊哉さん、もっと……」
「わかった。ゆっくり飲んで」
「ンンっ、美味しい。まだ足りない」
「そうか。遠慮せずに飲むといい」
この時点で笑美にペットボトルを渡せばいいのに、飲ませることに必死になっていたせいで、いちいち口移ししたのである。
「んっ、んっ、俊哉さん欲しい」
色っぽい視線を投げかけられながら、名前呼びしてねだられたことにより、思わず動きが止まった。しかもそれまでにかわされた会話を、思い起こす始末。
「俊哉さん、早くちょうだい?」
俺の首に両腕をかけて誘う笑美に(実際は水を要求されているのだが)俊哉さんの俊哉さんが痛いくらいに反応した。
「俊哉さん?」
「わっ、ごめん。今すぐに――」
笑美に見えないように、前を隠しながら口移しをしようと思って、腰を少しだけ引きかけた瞬間、手に持っていたペットボトルから水がだばだば零れた。しかも俺の大事な部分を冷やすかのように。
「つめたっ!」
「大丈夫ですか? って、え?」
完勃ちしたモノを笑美に直視されてしまい、ぶわっと頬が熱くなる。
「これは! えーその…笑美が水を欲しがってる様子がとても色っぽく見えて、頭が錯乱したというか、股間が間違って反応したというか」
しどろもどろにいいわけする俺を、指を差して爆笑する笑美。ひとしきり俺のことを笑い倒してから。
「俊哉さん、ちょっとだけ休憩したあとで、私から俊哉さんに手を出してもいいですか?」
思いがけないアプローチに、俊哉さんの俊哉さんがふたたび元気になる。
「それとも、えっちな私は嫌いですか?」
無意識に上目遣いで見つめられながら掠れた声で訊ねられた言葉に、ドキドキしない男はいないと思う。
俺の告白を誘導する笑美の問いかけに『好きだ』と言って答えたのは必然だった。その後、甘い夜を過ごすことができたのはいうまでもない。