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番外編5

 黒塗りの車で我が社に乗りつけた四菱商事の専務を、会社の前で丁寧にお出迎えし、打ち合わせに使う書類を急いでデスクに取りに行ったところ、見慣れない紙片がパソコンの傍に置かれていた。


 2つ折りにされたそれをなんだろうと思いながら手に取り、開いて読んでみる。某企業名のプリントされたメモ紙の送り主は松尾で、きっと今朝渡したものの返事らしい。


『佐々木先輩、昨日は私の話を

いろいろ聞いてくださり、

ありがとうございました。

抱えていたモヤモヤがすっきりしました。

今度は私がオススメするお店に

是非とも案内したいです。

お仕事頑張ってくださいね!  松尾』


「俺の書いた『また行こうな』に反応して、こうして書いてくれたんだな」


 最後の文面を指先で素早くなぞって、松尾から勝手に元気をチャージした。こんなことで、どんな厄介な仕事でもこなせそうな気分になるから不思議だ。


 メモ紙を元の形に戻し、胸ポケットに忍ばせる。LINEでは味わえないアナログなやり取りに満足して、颯爽とフロアをあとにした。

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