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優しさに溺れる夜6

***


(――恥ずかしい。すっごく恥ずかしいけど嬉しい……)


 よく言えば優しくて丁寧、言葉を変えれば、ねちっこいというか執拗にというか。とにかく俊哉さんの愛撫がすごすぎて、恥ずかしいくらいに、たくさんイってしまった。


「笑美、疲れた?」


 夢見心地でほわんとしている私の隣から、心配そうに声をかける俊哉さん。快感で体が変になってるせいで、返事をするのがやっとだった。


「だ、大丈夫……です」


「声掠れてる。そんなによかった?」


「あ……えっとそのは、はい。こんなにイったのは、実ははじめてでして」


 鼻先まで布団を引っ張り、顔を覆い隠しながら言うと、まぶたにキスを落とされてしまった。


「なにが一番よかった?」


 耳の奥をくすぐるような低い声で聞かれること自体が、ものすごく恥ずかしくて答えづらい。


「なっ、なにがなんてそんなの――」


 羞恥心をまざまざと感じて口をつぐんだ私を、俊哉さんは起きあがって、わざわざ顔を覗き込む。メガネをかけていないから、私をよく見るために顔を近づけているのか。それとも普段見ることのない顔を、私に見せるためなのか。


(――結局、どっちの俊哉さんも素敵すぎて、ますます好きになっちゃう)


「これに感じた?」


 俊哉さんはなにか短い言葉を告げた唇で、私の唇に優しく重ねた。耳を塞いでいなければ聞けていたセリフはたぶん、『好き』か『笑美』のどちらかだと思うけれど、それに答えたくて解放された唇で迷うことなく口にする。


「俊哉さんが好き……」


 俊哉さんが今まで付き合って、別れていた経緯――相手の女性がのぼせればのぼせるほど、冷めてしまうという言葉を聞いていたので、告白めいたことを、あえて今まで告げていなかった。


 そして私自身も、ちょっとずつ距離を縮める感じでお付き合いをお願いしていたこともあり、気持ちにブレーキをかけていたところもある。


 そんな私の気持ちを引き出そうとしていたのか、行為の最中に俊哉さんの口から『好きだ』という言葉をたくさん聞いていた。


「綾瀬川よりも?」


 私に注がれる視線から慈愛が満ち溢れていて、目を逸らさずにはいられない。


「俊哉さんが好きです」


「笑美に好きと言ってもらえてるのに、どうしてだろうな」


 そう言って、両腕で私の体を強く抱きしめた。頬を触れ合わせているから、吐息と一緒に俊哉さんの低くて艶っぽい声が耳の近くで響く。


「俊哉さん?」


「好きだと言わずにはいられないくらいに、笑美にもっともっと好きになってもらいたい」


 切なげに語られたセリフを聞いて、私は大きな背中に手をやり、優しく撫で擦った。


「俊哉さんを愛してます」


「俺も……。俺も笑美を愛してる」


 熱い想いが込められたキスが、私の唇や体に降り注ぐ。

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