シャツの前を開けたまま、下着姿を露にしていることに恥ずかしさを感じて、動きを止める。私の首筋に唇を寄せた俊哉さんは、なぜか体をビクつかせた。
「俊哉さ……えっ、ンンっ?」
いきなり左首の付け根に、歯をたてられてしまった。甘噛みよりも少しだけ強く噛まれることと一緒に、思いっきり肌を吸われている現状は、優しい俊哉さんらしくないと思うもので、頭の中に疑問符が浮かぶ。
「俊哉さん、俊哉さんどうしたんですか?」
問いかけた私を無視した俊哉さんは、私の背中に両腕を回し、ブラのホックを外したと思ったら、私が着ているシャツを器用に脱がしはじめた。それに抗う気はなかったので、素直に脱いでみせたけど、噛みついている俊哉さんの顔が窺えないせいで、どうにも不安が拭えない。
「ひゃっ…あ、あぁっ」
俊哉さんは首の付け根にむしゃぶりつきながら、容赦なく私の体を両腕で抱きしめる。骨が軋むぐらいの抱擁に、大きな背中を叩いて声をかけた。
「俊哉さん苦しい、痛いですよ!」
「ごめんっ、我を忘れてやってしまった……」
あたふたした俊哉さんが腕の力を慌てて緩めて、私の首の付け根を眺める。
「笑美、ほかに痛むところはないか?」
心配そうに眉根を寄せて言いながら、怖々と私の首を擦る俊哉さんに、「大丈夫です」と答えた。
「本当にごめん。アイツがつけた痕がここにあって、昨日のことが頭の中に蘇ったんだ」
それは聞いたことのない、哀しげに震える声だった。澄司さんに襲われた私以上に俊哉さんがナーバスになっていることを知り、なんとかしなくてはと言葉を探す。
「そんなところにつけられているとは、全然わからなかったです。最初のうちは、一生懸命抵抗していたので」
「俺の歯型は残っていないが、大きな痕をつけてしまった……」
「俊哉さんには最初から、痕をつけられていますからね」
そう言って、手首につけられたキスマークを見せる。最初よりも薄くなってしまったけれど、よく見ればわかる痕跡に指を差して笑ってみせた。
「私も俊哉さんにつけていいですか?」
返事を聞く前に胸の真ん中に唇を押しつけて、ちゅっと吸ってあげた。
「それとここにも!」
戸惑いまくりの俊哉さんの手首を掴んで、内側に痕を残す。
「俊哉さんとのお揃い作っちゃった」
「笑美……。そんな格好でこんなことされたら、容赦なく手を出してしまうが、それでもいいのか?」
俊哉さんのセリフでブラを外されたことを思い出し、慌てて胸を隠してもすでに遅し――。
「俺に見える形で愛を示してくれた笑美に、同じように返さないといけないな。場所を移そう」
膝裏に腕を差し込み、軽々と私を持ち上げた俊哉さんと一緒に、隣にある寝室に移動する。暗闇の中を迷いなく歩いて、柔らかいベッドの上に私を横たえさせた。
パチッとすぐ傍にあるライトをつけてから、私の顔を覗き込んだ俊哉さんの表情はいつもの見慣れたもので、安心しながらその身を任せたのだった。