「笑美さんに痣があること、どうして知ってるのか教えてほしいですか? それはね、フフっ。寝ている笑美さんを――」
嬉しげに微笑んで顔を寄せた澄司さんは、そのことを耳元で囁いた。信じられない事実に、ゾワッとしたものが背筋を走る。
「安心してください。そのときの笑美さんは、ぐっすりおやすみになっていたので、手を出してません。それに寝てるところを襲うなんて、つまらないでしょう? 愛し合う行為は、ふたりでしなきゃ」
「いや…絶対にやだ……、澄司さんとこんなことしたくな――」
佐々木先輩以外となんて、絶対したくないと言いたかった。それなのにその言葉さえも、澄司さんの唇で塞がれてしまう。
「んぅっ、あ…ぁっ」
キスされた状態だったけど、あいた右手を澄司さんの顔に押しつけて、これ以上されないように抵抗を試みる。頬に貼られた絆創膏をグイグイ押しているため、間違いなく痛みがあると思うのに――。
「笑美さんの必死な抵抗、めちゃくちゃ可愛いです。そんなにされたら、すごく興奮してしまう」
絆創膏の上から圧迫したせいで、出血しているのが見てとれるのに、澄司さんはそれすらも喜んでしまった。
(しまった! この人はこういうことをされると、余計に嬉しがって興奮する変態だったじゃないの!)
「自分のおこなったことの過ちに、今頃気づいたみたいですね。もっと抵抗していいんですよ。全力でやって見せてください。さあさあ!」
「ひっ!」
澄司さんの下半身が私の下半身に擦りつけられた衝撃に、変な声が出てしまった。
「驚いたでしょ。このサイズは最初は苦しさしか与えないので、まずは笑美さんのナカをトロトロにして、たくさんイカせてから馴染ませます」
「むむむ無理っ、こんなの挿いらなぃ」
「大丈夫。僕の手にかかれば、気持ちよさしか感じなくなって、絶対にほしくなりますよ」
パジャマの前が開かれると、簡単にブラが外され、パジャマの下は下着と一緒に脱がされた。抵抗したかったのに、いろんなことが怖すぎて、力がまったく入らない。
「や……」
かろうじて手錠で繋がれてる左手首の痛みが、私の思考を必死に繋ぎ止める役目になった。
「やめて!」
私の言葉を無視して、澄司さんは左耳に舌を突っ込む。くちゅくちゅ音を立てるように出し入れされるだけで、ゾワゾワしたものを感じずにはいられなくて――。
「うぁ、ひゃっ! あぁっ」
澄司さんの頭を殴りながら頭をよじって逃げても、執拗に追いかけて続けられる。
「笑美さんの下の口も、こうしてぐちゃぐちゃにして、解してあげますからね」
あやしげに光るエメラルドグリーンの瞳がゆっくり移動して、私の下半身に注がれた。慌てて太ももを合わせて閉じたというのに、澄司さんがそこに腕を伸ばして、無理やり手を突っ込む。
「嫌がっても、少し濡れてるじゃないですか。僕の中指を飲み込んでいきますよ」
「いっ、痛い……」
「硬くなってるココ、どんな弄り方をしたら感じて濡れるんでしょうね」
「や、触らなぃでっ…ああっ!」
ビンカンな部分を執拗に弄られて、思わず腰が浮いてしまった。
「笑美さん、結構感度がいいから強く擦るよりも、こうしてじっくり優しくされるのが好きなんですね」
「違っ…やだっ、んぅっ」
「僕を受け挿れるための蜜が、少しずつ溢れてきてる。中指の動きがスムーズになったのがわかるでしょう?」
澄司さんの頭が首筋に移動し、肌をなぞるようにおりていく。あいた手は胸元の先端をこねるように摘ままれるせいで、感じたくないのに下半身がじんじんしはじめる。
「やめて澄司さんっ…いやっ!」
「笑美さんの胸の大きさ、バッチリ僕好みです。柔らかくて気持ちいい。こうして口に含んだだけで、どうにかなりそう」
唇や舌先を使って胸の先端を弄られたせいで、頭がぼーっとしていく。感じている声が出ないように、唇を噛みしめたそのときだった。
「綾瀬川あぁあ!」
心の中でずっと助けを求めていた人の声を耳にして、自然と涙が溢れてしまった。
「佐々木、せんぱ、ぃ」
澄司さんが私に跨るこんな恥ずかしい姿を見られたくないのに、片手しか使えないため隠すことができない。溢れる涙を拭うので精一杯だった。
「なんで佐々木さんがここに――」
小さな声で呟いた澄司さんは、私の胸元から頭を上げて、驚いた表情で真横を見つめる。そんな彼に佐々木先輩は小走りで近づき、走った勢いをそのままにパンチを繰り出した。
それを簡単に片手で受け止める澄司さんの振動で、佐々木先輩が放ったパンチの強さを感じることができた。
「僕にそういうの無駄だから」
「松尾から降りろ!」
「乗り心地がいいんで、離れたくないんですけどね」
「俺の松尾から、降りろと言ってる!」
佐々木先輩はめげずに反対の拳を澄司さんの顔に目がけて放ったのに、これも止められてしまった。