「ライルッ! そっちにいったぞ!」
「任せて下さい!
指鉄砲の形を作り、獲物に人差し指を向ける。
指先から生成された疾風の弾丸は、追い詰められた獲物の側頭部に直撃し意識を刈り取る。
「おぉ! さすがだなぁ〜。
やっぱり魔術使いがいるのといないのとじゃ、狩りの効率が違うよ」
「これくらいお安い御用ですよ。
手が空いてる時でしたらいつでも手を貸しますよ、カートさん」
「ハハハ! グウェスんとこの息子はしっかりしてるな!
今年でもう十歳か? ったく、うちのバカ息子にも見習ってほしいもんさ」
「ブラウは頑張ってますよ。
この前だって、父と僕と三人で組手をしましたし、魔術も火性五級を習得できてましたよ」
「そうは言われても、お前さんを見てるとなぁ。
いやまあ、息子が頑張ってんのは百も承知だがよ」
他愛無い会話をしながら、仕留めた獲物を持ち帰りやすいように処理していく。
こういった作業も既に慣れたものだった。
俺は今年で十歳になった。
母親譲りの綺麗な黒髪のところどころに、父からの遺伝である茶色が混じりクセ毛のようにうねった髪。
パーツは我ながら美少年と言える程度には整った中性的な顔立ち。
額の角は五歳の時に起こした魔力切れの際に伸びてしまったので、なるべく目立たないように大きめの帽子で隠している。
闘魔族の遺伝のおかげか、体は十歳の割には発育が良く、既に身長は150cm代半ばだ。
村での日々はあっと言う間に過ぎ去っていく。
変化の少ない毎日ではあるが、父との修行に村での仕事、日々は充実していた。
同時に、焦りも抱えていた。
いつまで村の中で暮らしているんだ?
俺は冒険に出て、世界を旅して、モンスターと戦って、運命のヒロインと出会って恋をして。
やりたいことは山積みだ。
一度両親に村から出たいと数年前に告げたことがある。
『ダメだ。せめて成人するまでは父さんたちと一緒にいろ。それまでに必要な事は教えてやるから』
一蹴だった。
ダメ元ではあったが。
「成人するまでって、あと五年もあるじゃねーかよ……」
この世界での成人年齢は男女ともに十五歳らしい。
恐らく平均寿命などの違いと、前世とは危険との距離感が違いすぎるためだろう。
魔術や魔獣などが身近に存在するこの世界では、いつ死んでもおかしくはない。
事実、三十年前までは戦争だってしてたんだ。
成人年齢を浅くして、子孫を残していくというやり方は間違っていないだろう。
だが、あと五年もこの村で過ごすのか?
正直もう、ここで得られることは無い気がしている。
グウェスはそこまで魔術が得意というわけでは無い。
なんなら、すでに魔術の腕前は俺のほうが上ではなかろうか。
ただし、体術は格が違う。
何度やっても、何年経っても勝てる気がしない。
俺自身、せっかく異世界に来たのだから体術はほどほどで魔術に専念したいのだが、
『フッ……早く俺に本気を出させてくれよ』
なんて言いドヤる父の顔を見ると、もう少し付き合ってやるかという気持ちになってしまう。
いやいや、ダメだ、そういうとこが甘いんだよ。
よし、帰ってもう一度話してみよう。
俺も大きくなって、実力もついた。
ダメ元で再アタックだ!
----
「そのことなんだが、アトラ王国にある王都魔術学校へ通わせようかと思っている」
「はい?」
聞いてないが。
そりゃそうだ、初耳だ。
「ど、どういうこと!?」
「サラと相談してたんだ。
おまえも村から出たがっているし、村の仕事は任せれるようになったから、父さんも出稼ぎでもっと割の良い仕事ができてる。
学費も貯めれたし、次に出稼ぎで街に行ったときにでも、ギルドに依頼しておまえの同伴者と王都までの護衛を頼むつもりだ」
あまりに予想外の返答に思考が絡まる。
落ち着け、落ち着くんだライル。
「じゃ、じゃあ! 村から出て、学校に行けるの!?」
「あぁ、そうだ。成人までは、なんて考えていたんだがおまえにはこの村は狭すぎるようだしな」
優しくも、寂しい笑顔を浮かべるグウェス。
隣にいるサラも同様だ。
少し申し訳無さも感じる。
二人は成人までは待てと言っていた。
それを、こちらの気持ちを汲んで五年も早めてくれたのだ。
一瞬、「やっぱり大丈夫だよ、もう五年待つよ!」なんて言ってしまおうかと考えていると
「いいんだ、ライル。
おまえはおまえの人生を生きろ」
頭を撫でられる。
大きく、硬く、不器用で、温かく、優しい手のひら。
「ありがとう父さん、母さん。俺、頑張るから」
ニッコリと笑いかける二人の顔からは、先程までの寂しさは消えていた。
----
「えぇ~!? ライル村を出るのか!?」
「いいなぁ〜アタシも一緒にいきたーーい!」
「二人ももっと大きくなったら追いかけておいでよ。それまでは村で頑張って、両親に相談してさ」
後日、近々村から出ていくことを友達のブラウとミリーに話した。
ブラウは俺が時々狩りを手伝うカートさんの一人息子。
考えることが苦手な感覚派だが、幼さゆえの行動力に長ける。
遊びに出ては傷を作って帰ることはしょっちゅうで、カートさんも頭を抱えている。
ミリーは都会に憧れるおしゃまさん。
どこから仕入れた知識か、行ったこともない王都や街の事を声高に教えてくる。
それにしても、こんな幼い子達が友達か……
俺自身転生して幼くなっているので身の丈に合っているっちゃ合っているのだが。
複雑な気分だ。
精神年齢は前世から数えると既にアラフォーなのだが、時折肉体に精神が引っ張られている気がする。
「なあなあ、いつ行くんだ? 明日か? 明後日か!?」
「そんなすぐには行かないよ。
次に父さんが出稼ぎに出た時に依頼するって言ってたから、一ヶ月は先じゃないかな?」
「そっか〜。じゃあ、それまでにライルのいってらっしゃい会しないとね!」
「なんだよそれ」
ま、これはこれで楽しいから良しとするか。
――――――――
その島には龍が住む。
龍のみが住む。
ヴァダル大陸から海を超え、世界の北端に位置する小さな島々からなる領域。
龍とは、魔物や魔獣といった規格からは外れた、全ての生物の祖となったとされる種族。
大陸にも極少数ではあるが龍は生息する。
それらは皆何らかの理由で龍域から追われた、あるいは帰ることが出来ない者たち。
この日、一匹の龍が島から飛び去る。
理由はなんてことはない、古参の龍を怒らせてしまったためだ。
だが、そんな些細な事で、この若き龍は二度と島に戻ることは叶わない。
目指すは新天地。
住みやすく、餌のある場所を求めて。
―――――――
「それじゃあ行ってくる。サラの事は頼んだぞ」
「うん、任せて。いってらっしゃい」
「気をつけてね、あなた」
出稼ぎに行くグウェスを見送る。
グウェスは、俺が村での仕事を引き受けるようになってから不定期に約一ヶ月、村から歩いて三日ほどの街にて魔獣や魔物相手の傭兵として働きに行く。
今回の出稼ぎで、ギルドへ俺の護衛兼旅の同伴者を依頼するとのことだ。
魔術学校があるのは大陸のほぼ中央に位置するアトラ王国の王都アトランティア。
ナーロ村は東側を統治するロデナス王国領の中でも、北東の沿岸付近に位置する。
そこから王都アトランティアまで徒歩、あるいは馬などで移動することを考えると年単位での時間を要するだろう。
魔術学校はロデナス王国領やアトラ王国の中にもいくつか存在する。
なぜわざわざ最も遠いアトランティアへと思ったが、これも両親なりの優しさであった。
アトランティアは大陸の中央に位置する。
すなわち、国境に面している。
アトランティアの魔術学校は他とは異なり、人族と魔族とが隔てなく学べる唯一の場なのだ。
もちろん半魔は例外だが。
そして最大の規模と最高の環境を誇る、正に世界最高の魔術学校と言える。
学ぶならば最高の環境で、道中の旅は無二の経験を、とは両親からの餞別だ。
グウェスとは先程の挨拶で当面の別れとなる。
交わす言葉は少なく、時間もかけない。
手紙はお互いに出し合おうと約束はしているが、次に会えるのは何年先か。
寂しさはもちろんある。
今世での父親、不器用だが確かな愛情と師というもう一面の顔で接してくれた人物との長期の別れ。
サラも同様だ、二人には本当に感謝しているし、しきっても足りないくらいだ。
「さ、父さんが依頼を出して冒険者さんが来るまで、最低でも一週間はあるんだから。
それまでに荷造りと、挨拶回りなんか終わらせときなさいよ?」
「わかってるよ。母さんはホントに過保護だね」
「もう、この子ったら」
挨拶回りは既に終わらせている。
あとは依頼を受けた冒険者が来るまでの一週間か、はたまたそれ以上か。
もしかすると、依頼を受けてくれる人など出てこないままグウェスが帰ってくるかもしれないが。
それまではサラを守って、残された時間を村でいつも通り過ごすだけだ。
一週間が経過したが、いまだに冒険者は来ない。
やっぱり王都までの護衛なんて超長期の依頼は誰も受けてくれないんじゃないか?
ていうか、いったいどれだけの依頼料を積んだんだ?
王都に行くだけでも莫大な労力と時間と費用がかかるものを、子どもの護衛兼保護者だと?
冷静に考えるだけでバカらしくなってくる。
「ボケっとしてんなよっ!!」
おっと、そういえばブラウとの体術修行中だったな。
もう少しで鼻に渾身の正拳をぶち込まれるところだった。
ミリーは何が楽しいんだかといった様子で、木陰で本を読んでいる。
いつもの日常、代わり映えのない日々。
ようやく旅に出られると思ったのに、現実は何も変わらなかった。
「ハァ〜〜疲れたぁぁぁ!! もう無理! 動けないぞ〜!」
「はいはい、お疲れ様。
日も暮れてきたし早く帰らないと、カートさんにまたどやされるぞ」
「早く立ってよね! 置いてっちゃうわよ!」
夕暮れまで修行して、時々遊んで、帰路につく。
しょうもない事を話しながらまた変わらない明日が来るのかな、なんて感傷にふける。
ふと、沈んでいく太陽を背にして大きな鳥が村へと飛んでくるのが見える。
「おい見ろよ! デッケぇ鳥だぞ!」
「あれ、ホントに鳥?」
二人も気づいたようだ。
いや、ミリーの言うとおりだ。
大きすぎる。
離れたこの場から見えるシルエットは、既に鳥とは呼べぬ程に大きさを増している。
「なんだ、あれ……魔獣か?」
遠目に、次第に露わになるその威容。
頭部からは黒く染まる二本の大角。
赤褐色に染まる爬虫類のような
大きな瞳はまるで黄玉のようにギラギラと輝きを放っている。
5mはあろうかという先が尖った尻尾まで含めると、その全長は15mにも達する。
時折口元から溢れているのは、炎か?
その姿は、誰しも思い浮かべるファンタジーの生物。
「ドラ、ゴン?」
「ドラゴンって、龍? え、うそ、うそ!?
あれ龍なの!?」
「おい! 村に降りるぞ!」
丘から見下ろすこと200m先の、村のちょうど中心部に位置する家を、まるで積み木を崩すがごとく簡単に踏み砕く。
村から悲鳴が聞こえる。
人々が次々と家から飛び出て逃げ出すのが見える。
サラの、母親の顔が脳をよぎる。
「ッ!」
気づいた時には駆け出していた。
急げ、急げ。
焦る気持ちは無意識のうちに、体に魔力での強化を施す。
火の手と共に黒煙が上がるのが見える、龍が炎を吐いたのか。
村に近づくにつれ、悲鳴が大きくなる。
ノイズであったそれらは、鮮明さを増して耳に響く。
「いやぁぁぁぁ!! あなた、あなたぁぁぁ!!!!」
「助けてくれぇ!! 足が、足がぁぁぁぁ!」
「アァァァァァ!! 痛えぇぇぇぇ!!」
「なんでぇぇぇ……どうしてぇ……」
「ッ! クソォ!!」
どうすることも出来ない。
下級の水魔術と、かすり傷を癒す程度の治癒魔術なら会得している。
だがそんなものではどうすることも出来ない。
そんな時間もない。
一秒でも早く、母を見つけなくては。
どこにいる?家か?
視界を振った先で家屋が倒壊する。
火炎と熱が行く手を阻む。
これでは進めない、会得している水魔術では消化することも叶わない。
後ろを振り返ると
「ハァッ……ハァッハァッ……やっと、追い、着いたぁ……」
「なんだよこれ……どうなってんだよ……」
しまった、二人には来るなと伝えるべきだった。
どうする、来てしまった以上一緒に行動するべきか?
龍にはまだきづかれていないが、時間の問題だ。
なにより、ここは危険だ。
「二人共! 二人の親は俺が探すから、だから二人はさっきの丘で」
「ママぁ!」
母親を遠くに見つけたミリーが駆け出す。
遠くに見える母親は、壁にうなだれて寄りかかっているように見える。
背後の壁は、大量の鮮血で染まっている。
ダメだ、あれは、もう。
「行くなミリーー!!」
駆け出すミリーに手を伸ばす。
ズンッッと地が揺れる。
先程までミリーがいた場所に、大木のような柱が降り立つ。
赤褐色の鱗、尖った爪、黄玉の様に輝く瞳はジッとこちらを見つめる。
大きな牙を覗かせる口元からは白く高温の息が漏れ、目前に置かれた足の隙間からはジワジワと赤が滲み出す。
ガチガチと歯が音を立てる。
冷や汗が噴き出て震えが止まらない。
(ミリーは? 死んだ? ウソだ。
さっきまでそこを走っていたのにでも足元から血が出て……)
思考がまとまらない。
どうすればいい?何をすればいい?
逃げろ、逃げるんだ。
体が、言うことを聞かない。
「ブラウか!? それにライル!?
二人共逃げるんだ! 行けぇ!!」
龍の背後、瓦礫の奥から猟銃を持ったカートが飛び出る。
一発、二発、三発と龍の背中へと弾丸を撃ち込むが、結果は火を見るより明らかだ。
なんの意味も成さない。
龍はゆっくりと首を動かし、音の発生源へと灼熱を吹きかける。
悲鳴すら許さぬ豪火。
先程まで人だったものは、数秒のたうち回ったあとに真っ黒な消し炭となり動きを止める。
あっさりと、知っている人が死ぬ。
こんなに、簡単に?
何でこんなことになった。
俺が非日常を望んだからか?
「あぁァァァァァ!! とうさーーーーん!!!!」
ブラウが前方へと駆け出す。
先程のミリーと、重なる。
ダメだ、止めるんだ、止めろ。
「
ブラウの手から小さな閃光が走り、龍の顔面へと直撃する。
龍は何事も無かったかのようにブラウを見据え、蚊を払うように軽く右足を振るう。
視界からブラウの姿が消える。
何かが叩きつけられると同時に潰れる音がする。
見たくない。
見てはならない。
見てしまったら、きっと、俺はもう動けない。
龍と目が合う。
ゆっくりと開いた口の奥で、煌々と灼熱が光を放つ。
(動け動け動け動け動け動け動け動け!!!!)
震える体は言うことを聞かず、足は地から離れない。
ダメだ、もう
「ライルッ!!」
強く腕を引かれ横合いの路地へ連れ込まれる。
先程まで自身が立っていた場所は、紅蓮の豪火で埋め尽くされた。
顔を上げると、息を切らした母がいた。
「よかった、よかった……無事だったのね、よかった……」
「かあ、さん……? なんでここに?」
「いいからっ! 今は逃げるのっ!!」
腕を引かれ駆け出す。
足が動く。
よかった、サラは無事だった。
落ち着け、今は一刻も早くこの場から逃げるんだ。
(よし、動く!)
「母さん、俺が背負うから乗って!!」
「こんな時に何言っ」
「いいから!!!早く!!」
思わず語気が強くなる。
だが、一刻を争うのだ。
魔力で身体強化を施し、サラを背負って逃げる。
これが今出来る最善の方法だ。
サラもこちらの考えを汲み取ったのか、唇を噛み締め背に回る。
「ごめんね、ごめんね……役立たずで、ごめんね……」
「役立たずだなんて言わないでよ。
父さんにも言われたし、俺も誓ったんだ。
母さんは、俺が守る」
サラを背負い、全身に魔力を巡らせる。
軽い、いける!
グッと力を込め、地を蹴る。
突然、背中から強く真横に弾き飛ばされる。
背負っていたサラが涙を流し、笑顔で俺を突き飛ばしていた。
視界がスローになる。
音は聞こえなかった。
サラの口の動きだけがゆっくりと目に映る。
『愛してる』
背後から迫った炎がサラを包む。
数秒と経たず、黒炭は地に落ちる。
わからない。
わかりたくもない。
なんでなんだ、どうしてこうなった。
望んだのは、願ったのは、こんな世界ではない。
龍が迫る。
ゆっくりと、泰然と、獲物に迫る。
「……ッァァアアアアアア!!
突き出た槍は鱗に弾かれる。
「ッ!!
鉄すら刻む水の刃も鱗に当たって霧散する。
「それならぁぁァァ!!」
ありったけの魔力を込める。
魔力切れなど知ったことではない。
狙うは顔。
使う魔術は最も殺傷力の強いものを。
全てを込めた一撃で、失ったものへの報いを。
「
適正は火でも土でも水でもなく、風だった。
最も鋭利で、シンプルなもの。
父からは、誰かがそばにいる時には使うなと言われていた。
もう、誰もいない。
全身全霊の魔力を注いで作られた荒れ狂う不可視の刃。
龍の顔を横二つに裂かんと襲いかかる。
「ッ!!」
龍が反応する。
今までのゆったりした動作からは想像できない速度で首を動かし、刃を回避する。
狙いを外した刃は龍の左角を切り落とす。
2mを超える巨大な角を切り落とされた龍の顔は、みるみるうちに怒りに燃える。
咆哮。
耳が割れんばかりの大音量に心臓が止まりかける。
だが、もう。
(もう……どうでもいい…………)
意識が揺れる。
視界に黒が差し、輪郭がボヤけ始める。
このまま意識を失えば、楽になるのだろうか。
きっと、そうだ。
悪い夢だったのかもしれない。
目を覚ませば、きっと。
「
静かに、力強い声が聞こえた。
詠唱により生まれた巨大な氷柱は、龍の左翼を上下に挟むようにして閉じられる。
再度の咆哮。
しかし今回は怒りによるものではなく、痛みによるものであった。
龍の左翼は氷柱が上下から突き刺さり鮮血を撒き散らしている。
誰だ? 誰がやった?
グウェスか?
あぁくそ、ダメだ。
もう……意識が……
五年越しの魔力切れによるブラックアウト。
少年の悪夢は、ここに閉じられる。